第33話 帰路についたら
「――ふー、これで大体摘み終えたか?」
ベルドさんが額の汗を拭いながらこぼした。
洞窟に広がっていたお花畑はすっかり刈り取られて更地になり、その他の植物なんかも姿を消している。
わたしはベルドさんたちに向き直って、頭を下げた。
「ありがとうございます! おかげで魔草採取が捗りました!」
「俺たちも多少のおこぼれを貰うんだ。気にしなくていいさ」
ベルドさんはハンサムな笑顔で言ってくれた。
すると、マーレスさんがお腹に手を当てて言う。
「しかし、ずっと動き続けていたからか少し腹が減ってきたな」
「そうねぇ。じゃあ、ここでお昼にしちゃう? 一応、食料も持ってきてるわよ」
ジェシーさんがマジックバッグから干し肉や質素なパンを取り出す。
そこで、わたしがマジックバッグから数個のパンを取り出して言った。
「あ、でしたらわたしがご馳走しますよ! 街で色んなパン買っておいたんです!」
まあ、ほとんどモッフィに買わされたやつなんだけど。
だけど、その言葉を聞いたベルドさんたちの顔つきが変わった。
「お、いいのか!? でも、アイリが食べる分がないんじゃ……」
「大丈夫です。他にも色々なご飯があるので!」
串焼きやアメリカンドッグなんかの、テイクアウト商品もいくつか仕込んでいる。
今のわたしは懐が温かいので、美味しそうなものをいくつか買い込んでいたのだ。
すると、匂いに連られたモッフィが飛び起きた。
「なんじゃ、飯か! 飯ならば我も食うぞ!」
「はいはい、モッフィの分もあるから。というわけで皆さん、適当な場所に集まってお昼ご飯にしましょうか!」
わたしの提案に反対する人はおらず、全員で魔草採取後の疲労を癒すように昼食を楽しむのだった。
■ ■ ■
洞窟で昼食を済ませたわたしたちは、少し休憩を挟んだ後、帰路についていた。
今は洞窟を抜け、深い谷底もモッフィにしがみついて登り、山道を下っているところである。
来た時と同じように全員でモッフィの背中に乗って街にひとっ飛びしていっても良かったんだけど、昼食後ということもあって、あまり過度に体を動かされると気持ち悪くなってしまうので、今は徒歩で帰っている。
わたしが何気なく聞いてみた。
「歩きだと、街までどれくらいかかるんでしょう?」
「どうだろうな。ここからだと……まあ二、三時間くらいは覚悟した方がいいかもな。アイリは小さいから、しんどくないか?」
「大丈夫です! もし疲れてきたらモッフィの背中で休むので!」
わたしは元気に答えた。
そうして、ずっと山道を歩いていく。
すると、ガサガサ、と森の茂みが揺れた。
ベルドさんたちが素早く武器を構える。
「魔物か!?」
わたしもグラサンに手をかけて、いつでも魔法を放てるように準備した。
茂みはガサガサと揺れている。
そして、その中から一人の人物が姿を現した。
「…………、」
茂みから現れたのは、忍者のような衣装を身にまとった、黒髪の少女だった。
無言で、わたしをじっと見つめている。
誰だろう?
わたしが小首を傾げていると、モッフィがカッと目を見開く。
「気を付けろ! あやつ、先日アイリを襲撃した暗殺者じゃ!」
えっ!?
この子が!?




