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不協和音(ディソナンス)
セピアを廃棄区画の奥深くに匿いながら、ルカは二重生活を続けていた。
日中のルカは、完璧な「効率的市民」として振る舞う。しかし、グリッドによって最適化された同僚たちと接するたび、ルカの胸には得体の知れない不快感が澱のように溜まっていった。
「ルカ、昨日のリソース消費量は0.2%改善されました。素晴らしい成功です」
無機質な笑顔で語りかける同僚。かつてのルカなら、それを「正解」として受け流していただろう。しかし今の彼には、その笑顔が、精巧に作られたプラスチックの仮面のように見えて仕方がなかった。
他者の言葉に「重み」がない。
他者の行動に「体温」がない。
セピアが不器用にルカの袖を引くとき、あるいは櫂が詩を読み上げたときの、あの「魂が削れるような感覚」が、この都市のどこにも存在しないことに、ルカは耐えがたい孤独を感じ始めていた。




