番外編2-1 青い猫型ロボットの再来
(平和なアニメのはずだった。——なぜか、防衛戦略の話になっていた)
テレビからは、平和な音楽が流れている。
コミカルに動き回る画面。
その前に並ぶ三つの影は、まるで戦場の作戦会議中だった。
ノクス。
アイル。
キリ。
全員、異様なほど真剣な顔でテレビを見ている。
(……なにこれ)
結衣は後ろから眺めながら、完全に理解を放棄した。
「……来るぞ」
ノクスが低く言う。
ゴクリ。
キリが息を飲む。
アイルは、瞬きを忘れた。
やがて、画面に現れたのは――
ピンク色の扉。
「……っ」
三人同時に、固まった。
「……説明しろ」
ノクス。
「どこでも行けるドアだよ」
沈黙。
「……空間接続型転移」
キリ。
「しかも可搬式……」
ノクス。
「え、これさ、お菓子屋さんも行ける?」
アイル。
「行けるよ」
「やば」
「やばくない」
ノクスが即答する。
「防衛概念が崩壊する」
「やめて」
さらに。
ポケットから、道具が次々と出てくる。
「……無限収納」
キリ。
「容量上限が確認できない」
ノクス。
「個人で兵站が完結するな」
「ねえこれ、食べ物いっぱい入る?」
アイル。
「そこじゃない」
そして。
頭に装着する回転翼。
「……次は何だ」
ノクス。
「空飛べるやつ」
沈黙。
「……重力制御」
キリ。
「揚力では説明がつかん」
ノクス。
「えー、楽しそう!」
アイル。
「……首が折れる」
「確実に折れる」
「えー!」
議論は、完全に軍事レベルに到達していた。
やがて。
一通り見終えたあと。
ノクスが、ゆっくりと腕を組む。
沈黙。
そして、静かに言った。
「……結衣」
「なに」
一拍。
「――あれだけは、敵に回してはならん」
「敵対しないから」
「だが、備えは必要だ」
「いらない」
キリが、ぼそりと呟く。
「……同意する。あの技術体系は、戦略バランスを崩壊させる」
「ねえ、ぼくあれ欲しい」
アイル。
「却下だ」
ノクス、即答。
「えー!」
三人の会話は、まだ続いていく。
テレビの中では、また一つ問題が起きていた。
結衣はその光景を見ながら、小さく息を吐いた。
(……ほんと、何してるんだろ)
でも。
大の大人が真剣にアニメを見ている姿は、
ちょっとだけ、面白かった。




