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屍を超えて行け 25-5 地図イラスト添付

大阪石山本願寺の地図を添付していますが当方も煮詰めておらず参考程度に参照ください。徳川家康と南光坊天海も参照程度にしてください。

挿絵(By みてみん)

 1576年の4月の半ば、顕如は石山本願寺の本堂でたくさん集まった門徒衆に説法を説いていた。

「みんなの阿弥陀如来様を守る熱き想いが5万の大戦力になりました。我々の勝利は目前です」

 顕如の爽やかで落ち着いた話し声は多くの門徒衆を魅了し安堵させるのである。

しかし顕如は5万もの兵を集めたと豪語していたが実は集まった兵の数は一桁少ないのはみんな知っていた。雑賀衆や大和衆、河内衆、旧越前衆や志願兵を入れてかろうじて1万程度である。そもそも物理的にも本願寺の門前町やその周囲の砦を入れても5万もの兵を収容できなかった。本願寺は籠城し毛利と上杉の援軍に掛けるしかなかったのである。


 織田信長だが石山本願寺が兵を集めているのと安芸の毛利輝元から支援物資を受け取っている件を口実に4月半ばになると動いたのである。

 まず若江城と本願寺の間に森河内砦を造り明智光秀を入れた。京街道の大阪と京の中間の守口にも砦を造り細川藤孝を配置。天王寺砦は佐久間信盛、信栄親子、塙直正に続き三好康長ら河内衆も入れたのである。信長自身も岐阜城から京に入った。


 石山本願寺も信長の動きを見てもはや戦は避けられないと判断し部隊の異動を始めた。


 お菊だがおいちら雑賀衆と一緒に難波砦に入った。小次郎も心眼の命で志願兵を率いて難波砦入りした。

「弥生さんとマリアさんがろくの居る三津寺砦に入ろうとしたらろくに兵は足りてるって断られたらしいわ」

「怪しいね」

 お菊はおいちに返した。

「弥生さんとマリアさんはとりあえず木津川砦に入った。木津川砦はかなりの戦力を入れたから三津寺砦で何かあったら連携して動けと本願寺の指示だ」

 小次郎が続いた。

「まえこら大和衆と弥吉ら河内衆をこちらに回してもらおうよ」

 お菊が小次郎に相談すると

「弥吉は三津寺砦に来てないらしい。まえこは物資の管理に必要だから回せないってろくが断ったらしい」

 小次郎が返すと

「弥吉の奴さ、逃げちゃったのか。まえこを置いてさ。まったく。あ!まえこは何としても取り返してよ!万が一の人質にされたくないでしょうが!」

「話し合いはやってるぜ!せかすなよ!」

 お菊と小次郎が再度口論を始めたが

「下間様に直に(まえこを戻すよう)命令書を発してもらいましょう。ろくがそれに従うか従わないかで分かる。従わなければ先手も仕方ない」

 岡吉正だがすぐに下間頼廉に使者を飛ばしたのである。

「あ~あ。織田との和睦もたった半年で破綻しちゃったよ」

 お菊がぼやくと

「信長公はただの時間稼ぎやったんやな」

「最初から信長公はその目論みだったんだよ」

「なんだかねぇ」

 おいちと小次郎にお菊はぼやいたが。


「え?なに?誰?」

 お菊は突然変な事を言い出すと

「誰かが見てる?来てる?違う?」

 周囲をきょろきょろと見渡した。

「なんだよ!急に」

「どうしたねん?」

 小次郎とおいちが驚いたが

「あ!ごめん。何でもない」

 お菊だがすぐに下がったのである。

(なんだろう?すごい 気配、いや、圧 を感じる?)

 しかしお菊は天王寺砦の方向を見たのである。


 明智光秀だが腹心の明智四天王の溝尾茂朝、三宅秀満、藤田伝五、そして最近家臣に迎え入れた斎藤利三と丹波攻略拠点の丹波丸岡城から兵士3千を率いて天王寺砦に急行していた。

「丹波丸岡城で留守をさせてる(明智)光忠と(伊勢)貞興は大丈夫かな?」

 光秀は馬上で心配そうに言った。

 明智光秀だが信長の命で丹波攻略を行っていた。戦だけでなく交渉や調略で光秀が最も警戒していた猛将、丹波の赤鬼、荻野(赤井)直正の黒井城を包囲するまで進軍したが八上城の波多野秀治の裏切りで背後を突かれる形になり光秀だが危険を察して渋々丹波攻略拠点の丹波丸岡城まで後退したのである。

「斎藤道三公が亡くなった時も逃げ延び守りと逃げが得意な光忠殿なら問題ないでしょう。むしろ血気盛んな貞興がなんで本願寺攻めに連れて行ってくれないんだと愚痴ってましたがな」

 利三が笑いながら言った。光秀も苦笑いしてしまったが。斎藤利三は兄の石谷頼辰が光秀の旧知の仲でそのつてで稲葉一鉄の家臣から光秀の家臣になり、丹波攻略で武功を上げ明智家中でのし上がったのである。光忠は光秀の縁戚で無口で静かな男だが主君だった斎藤道三が討ち死にした時も逃げ切って主君を転々とした後、光秀に仕えて目立たないが縁の下の力持ちだった。

「八上城の波多野秀治が余計な事をしてくれましたな。信長公は捕らえたら首を刎ねろって怒ってましたが」

 伝五が溜息をつくと再度光秀は信長の怒りの顔を思い出しなぜか苦笑いした。

「ただ赤鬼(荻野直正)も魔王(織田信長)には恐れ慄いたようで魔王に詫びの使者を送ったとか。殿(光秀)にも詫び状が坂本城にも届いたとか」

 溝尾茂朝が軽く言うと一同笑いが起きたが

「本願寺も丹波の赤鬼も同じなのだよ。潔さがないからこうなる。後から詫びるなら最初から素直に降伏してくれれば良いものを」

 光秀は今度は不満そうに言った。

「和睦するにしても戦って実績を見せて負けた後も取り立ててもらったり領土を保全してもらうためでしょうな」

 藤田伝五が言うと

「信長公の琴線に触れて響くかどうかは信長公しか分からないのに。だったら最初から詫びれば良いのさ」

 光秀が苦笑いしながら言うと

「十兵衛様の言う通り。信長公の琴線に触れなければコレですからな」

 藤田伝五が手で首を刎ねる素振りをすると一行苦笑いした。

 

 荻野直正も波多野秀治もそのような理由から光秀が撤収する時は追撃を仕掛けなかったのである。

「まぁ、信長公から丹波攻略を放り出しても本願寺攻めに加われとの命なら仕方ないかな。いずれにしろこうなったかな?ところで隋風殿は予定通り天王寺砦に(坂本城から)向かっているかな?」

「は、大丈夫です。坂本を出て既に到着してるかと」

 荒深小五郎が返すと

「なんで隋風殿を今回、前線にお連れするので?」

 溝尾茂朝が不思議そうに聞くと

「勘だよ。なんか嫌な予感がするのさ」

 光秀は素っ気なく返したが。


 明智光秀だが三宅秀満に千の兵を託し森河内砦に入れると自らは残りの2千を率いて溝尾茂朝、藤田伝五、斎藤利三、荒深小五郎と天王寺砦に入ったのである。

 隋風だがいつものようにぼろの法衣を羽織り頭に手拭いを巻いてちょっと酒を飲んでくつろいでいた。

「俺の法力じゃ今回は役に立たないかもしれないけど良いのかい?」

「そんな事ないですよ。僕とあなたの長い付き合いじゃないですか。美濃で出会ってからもう30年弱経つかな?比叡山延暦寺攻めの時以来の危機に今回はなると思ってね」

 光秀は隋風に冷静に返した。

「ちょっと感じるかな?向こうの方が感じてるかな?」

 隋風は酒を味わいながら返した。

「長島で日根野弘就と森長可公の部隊を襲った時に あの力 を出したらしい。10名ほどの足軽を ひとりで殺った そうだ。生き残った兵によると女どころか人間じゃなかったそうだよ」

 光秀が冷徹に言うと隋風は目を閉じ少し集中した。

 そして

「法力はいろはに及ばないね。でも突破力は桁違いだね。本当に人じゃないかもね。あはは」

 隋風が軽い素振りで言うと光秀は一瞬固まったが

「あの力を抑えられるかな?」

「難しいね」

「ならば頼みがある。あなたの法力を僕に貸して欲しい」

 光秀が真面目に言うと

「おたつ様が信長公にやったみたいに?そっか。だから俺を呼んだんだね」

 隋風が聞くと光秀はうなずいた。

 光秀は比叡山の戦いの時の目に焼き付いたいろはの最期を思い出していた。

 比叡山での戦いで延暦寺の兵のいろはは信長を待ち伏せ、奇襲したがあと一歩で信長の寵愛する側室のおたつの法力の予想外の妨害に遭って信長に返り討ちにあって倒れたのである。危うくいろはに地獄の門戸を開かれそうになったのを光秀の法力を感じる古ぼけた脇差が反応し不思議な力が起こって収まったのである。

「あれは信長公も運が良かったと思った方が良いよ。俺もそんなの出来る自信はない」

 隋風が真顔で言ったが

「承知してるけどそうでもしないと法力を発動したお菊を止められないのだよ?僕たちは天下泰平のため、ここで死ねないのだよ?もし、お菊にいろは以上の力を出されたら天下泰平よりこの世が地獄になるかもしれないよ?」 

 光秀が冷静に言うと隋風も光秀の気迫に押されて

「分かった。やるだけやるよ」

 隋風が返すと

「うん。さすが隋風殿。頼みます」

 光秀はいつもの軽い光秀に戻ったのである。


「十兵衛殿」

 隋風は小声で言った。

「信長公にも比叡山の時と同じようにおたつ様に来て頂いた方が良いと思う」

 隋風の真顔を見て

「そうだね。賛成だね。すぐに京に使者を送るよ」

 光秀は隋風に即答した。

「あれっ?もう脇差が反応してるかな?」

 法力に反応する光秀の古ぼけた脇差だが法力を感じられる者しか見れないがうっすらと反応していた。


 その日の夜だが光秀は早速、天王寺砦内の大将格の作戦会議に出たのである。

「ようこそ遠路、天王寺へ。助かる」

 塙直政は光秀に感謝したが

「あのぼろ坊主はなんじゃ?みんな引いておるぞ?丹波で負けたからお祓いにでも呼んだのかのう?」

 佐久間信盛は隋風を見て口を尖らせ光秀に嫌味も言った。

「そう。お祓いに呼んだのですよ。丹波での悪い流れを断ち切りたくね。家老様(佐久間信盛)には害は無いのでご安心を」

 光秀はさらっと返したが

「家老様。言動に注意、慎みを」

 塙直政だが佐久間信盛を厳しい顔で咎めたのである。信盛は黙ったが。

「私は法力とか言うよく分らない力は信じていないが信長公が気にしている以上は気に掛けねばならない。本願寺にそれを使える者が居ると聞いた。だから法力を使えると聞いた日向守(光秀)に来て頂いた次第で」

 塙直政が言うと

「良き計らいです。ただ、法力は使うと体力を使うのでしばらく動けなくなります。そこを利用するしかないですね」

「わざと発動させる?」

 光秀はうなずいた。

「しかし問題は相手がどこで発動するか読めない。怒りに関わると思うが発動している間は太刀打ちではとても抑えられません。鉄砲で対応するしかないでしょう」

「ふむ。鍵は鉄砲か」

 塙直政が言うと

「こちらも鉄砲は大量に揃えてるわい」

 佐久間信盛が入ったが

「問題は本願寺も大量に鉄炮を用意している」

「雑賀衆?噂の鈴木重秀殿ですか?」

 光秀が聞くと塙直政はうなずいた。

「聞けば本願寺に兵5千程を連れて各砦に入ったそうです」

 佐久間信盛の子の信栄も渋い顔で続いた。

「砦から狙い撃ちされるのは嫌だなぁ。鉄の盾は足りないのでこれは良くないですね」

 光秀はわざと軽く言ったが

「本題に入るが信長公から砦をひとつでも奪えと指示が来てる。木津川経由の本願寺への補充を止めるためですな」

 地図を見ながら塙直政が言った。

 木津川沿いには石山本願寺を起点に西回りに楼の岸砦、難波砦、穢多崎砦、三津寺砦、木津川砦が築かれ上町台地沿いの陸路が封鎖されても木津川経由で海路、石山本願寺に物資を搬入できる体制を整えていた。

「(こちらの)この戦力じゃ厳しいですね。弱そうな砦を集中攻撃しても背後から別の砦の部隊に襲われる可能性が高いですね」

 光秀は正直に言っておいた。本心である。

 推測だが本願寺の兵力は総合計だが1万強。織田方の天王寺砦、河内砦、守谷砦の戦力も合計しても同数程度である。

「1か所に集中攻撃して速攻で落とすしかないですが」

「奪ってもそこに兵糧弾薬が残されて無ければ意味が無いですね」

 信栄に対しても光秀は反対を貫いたが

「この砦から内通の話が来てる」

 塙直政が三津寺砦を指差した。

「根来衆がこちらの味方に付く。無傷で砦の中に入れる段取りです」

 塙直政は裏工作、調略を根来衆に行ったのである。

「さすが塙殿じゃ」

「なるほど!」

 佐久間信盛と信栄は感嘆したが

「しかしやはり戦力差を考えると信長公の主力を待った方が良いかと」

 光秀は罠かもしれないと思い、慎重に言ったのである。

「人質は取ってますか?」

 光秀は塙直政に小声で訊いたが直政は首を横に振った。

「ならば尚更(やめた方が良い)」

 と光秀は言おうとしたが

「若い信栄殿や最近家臣になった三好康長公に花を持たせたい。2人とも粘り強く交渉に対処してくれた。根来衆が味方になれば勝利は確実だ」

 塙直政は小声で言った。直政も薄々難しい作戦と感じて居たが信長の信頼を得るため決断したのである。

 光秀は本音ではそれでも反対だったが。各峠の距離が短いので罠だったり移動に手間取ると大打撃を受ける可能性が高いからである。

 それでも塙直政の心意気を買って

「お任せしましょう」

 と言ってしまったのである。


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