大義 ってなんなのさ 22-3
お菊、おいち、お凛、小次郎たちだが2月の半ばに越前の一向一揆の拠点の府中龍門寺城に入ったのである。たまと庄助が迎えてくれたが2人とも憔悴していた。
理由はすぐに分かったのである。御殿に入るとそこでは心眼が誰かと激しく口論していた。無口な心眼が口論していたのにお菊らは驚いたが。
「心眼さん激おこやな!どしたん?」
「相手の人、誰?」
おいちが驚いていたがお菊は相手が誰か聞いたのである。
「加賀の加州大将様よ」
「七里頼周様だよ」
たまと庄助は嫌そうな顔で返した。
「誰? 」
「分からん」
お菊、おいち、お凛は分からずぽかんとしたが。
「アンタらも何かあったんかいな?元気無いし」
「疲れてるみたいやけど大丈夫か?」
おいちとお凛がたまと庄助を気遣ったのである。
「あの人、逆らう人はすぐ処罰するの」
「処罰?」
たまの悲しそうな顔においちたちがぽかんとすると
「税を払わなかったり反抗するとすぐに斬るんだ」
庄助も続いた。
「俺も人を斬らされたのさ。道端の しゃれこうべ を見ろよ。たまは断ったら殴られて修行と称して独房に放り込まれたし」
庄助は恨めしそうに七里を睨んだ。
「とんでもない野郎やな」
お凛が怒りながら言うと
「ここの坊さんはあまり良い噂は聞いてなかったけどやれやれやね。ちょっと懲らしめたるか」
おいちも言うと
「心眼様や弥生さんにあたしたちも来たからもう大丈夫だよ」
お菊もたまと庄助を安心させようとしたのである。
七瀬の横には杉浦玄任がにやにやと笑い、横には別の坊官がおろおろしていた。
心眼の後ろには弥生やマリアが居り、2人とも心眼と同じように不愉快な顔をしていた。
「お菊!おいち!お凛!到着しました!」
お菊が大声を上げたのである。
心眼と七里はお菊らを見ると口論をとりあえず止めたのである。七里は隣の坊官と一緒に上座に座った。七里は心眼とのやり取りが不愉快だったのかふんぞり返って不愉快な態度を露にしていたが。
「おお!遠路、よくぞ参った!」
坊官は七里と違い、温厚にお菊らに対応した。
「本願寺から派遣されている下間頼照様よ。七里様の目付よ」
たまが小声でお菊らに言った。
「驚いた。援軍がこんなガキ共とはな」
七里が言うとお菊らはむっとしたが
「加州大将様!この子たちは長島願証寺から脱出した強者です」
弥生が言うと
「ふうん。そうか」
七里は興味無さそうにに 大あくび をしたのである。
「まぁ、雑賀の三羽烏と噂され本願寺でも名を知られています。が、所詮は戦バカですな」
杉浦が言うとお菊たちはたまと庄助の件での彼らへの苛立ちもあり、ずばり 言ったのである。
「戦バカですみませんね!あなたの 戦下手 よりマシですよ~だ!べぇ!」
お菊のおどけた返しにおいち、お凛、小次郎、マリアらは吹き出しそうになったが。
心眼と弥生は苦笑いし杉浦、たま、庄助、頼照は固まっていた。
「随分と威勢が良いな。お嬢さんよ」
七里がお菊を睨むと
「まぁまぁ。顕如様も彼女たちは高く評していますので。若さゆえと」
頼照が間に入ったのである。頼照が言うと七里は黙ってしまったが。
「無礼をお詫びします」
お菊も一応、七里に詫びたのである。七里も少し収まったが。
「で、心眼さんさっきの言い争いはどしたんです?」
おいちがさっきの七里と心眼の口論の件を聞くと
「杉津砦の住民が税を払わないから地元の村長の娘を牢にぶち込んだらこの坊主(心眼)が俺に盾突いたから口論になったのだ!強力な門徒軍を作るための課税が分からない野郎だな!」
七里は遠慮なく心眼を罵倒したのである。心眼は再度苛立っていたが。
「昨年約束した以上の税を払えなんて加州大将様のやり方がおかしいです!」
弥生が心眼に代わり七里に返したが
「それで貴様らは飯を食ってるの偉ぶるな!信長だが今年にはここに攻めて来ると言われてるのだぞ!守りを固めるのには軍と金が要るのだ!貴様らは甘い!」
七里も苛立ちながら返した。
「まぁまぁ、落ち着いて」
間に挟まれた頼照は困り果てていた。頼照はこの加賀から送り込まれた七里頼周の監視で顕如の命で送り込まれたがうまく行かなかったのである。七里の悪評は顕如だけでなく大阪にも届いており下間頼廉は七里の更迭を主張するほどであった。
ただ七里の人格はともかく越後の虎と恐れられていた上杉謙信との越中での実戦経験や今回の越前の一揆での武勇を評価され越前の代官としての地位に留まっていたのであるが。
「とんでもない野郎やな!」
「久々にこんなカス見たわ!」
おいちとお凛はかなり苛立っていたが。
「そうだ!このガキ共に良い仕事があった!」
七里は嬉しそうに言うと
「杉津砦に行って俺たちに従うように言って来い!」
七里が言うと
「そのう。杉津砦の城代の村長の娘を牢に入れたので杉津砦が怒って我々の派遣した城代を追い出してしまったのです」
頼照が気まずそうに言うと
「杉津砦の村長さんの娘さんを返すのが先やで」
「誠心誠意で謝罪して税も信長公との戦いで必要だから払ってください って頭を下げるのが筋やで!加州大将様」
おいちとお凛が ずばり と七里に返すと
「わはは!バカを言うな!」
七里はおいちとお凛の案を一蹴したのである。
「お前ら願証寺で 裸 になって敵の城兵を騙して城を奪い取ったんだろ?同じ事をしてくれよ!」
七里が笑いながら言うと
「アホか!」
「最低!」
おいちとお菊が遠慮なく即答したのである。
「頼照様!ここの代官を顕如様と頼廉様に再度お願いして変えてもらった方がええかなと!」
お凛が続くと
「ふん!生意気なガキ共め!」
七里はそう言うと立ち上がりお菊、おいち、お凛らに殴り掛かったのである。
しかし
「おっとっと」
「ひょいとな!」
お菊とおいちは七里の先制をかわすと
「ほれ」
お凛が足をさっと出すと七里はつまずいて転んだのである。
「お前ら!躾がなっておらん!上官に逆らうな!」
七里が切れたが
「申し訳ありません。ですが、お互い様ですよね」
弥生が上手く返したのである。
「この悪ガキめ!」
杉浦も七里を助けるべく参戦し殴り掛かって来たが
「下がれ!ヘボ軍師!」
おいちに足を払われた後
「寝てろ!」
小次郎に腹を殴られて杉浦は伸びたのである。
「俺を怒らせやがって!」
ただ七里は怒ってお菊に飛び掛かり襟袖を掴んでお菊を無理やり押し倒したが
「三人寄れば!」
「文殊の知恵や!」
おいちとお凛も七里に飛び掛かって逆に3人掛かりで七里を圧し潰したのである。
「このガキが!」
それでも七里も抵抗したがお菊とおいちとお凛の胸やお尻を触ってしまったのである。
「どこ触ってるのさ!このぉ!」
「出来の悪いスケベエロ親父!」
「変態クソ代官め!」
お菊とおいち、お凛は七里のつるつるの頭をタコ殴りしたのである。
「やめろ!こら!おい!助けてくれ!」
さすがの七里も悲鳴を上げたが
「いいぞ!もっとやれ!」
マリアらは喜び
「失礼」
心眼と弥生は見て見ぬ振りで立ち去ったのである。
「あはは!良い気味だぜ!」
「すっきりする!」
庄助とたまも喜んでた。
「このお!ろくでなしの三羽烏め!」
杉浦が慌てて七里を助けようとしたが
「杉浦さんの相手は俺だよ!」
「ひい!」
小次郎が杉浦を可愛がったのである。
この後、下間頼照が間に入ってようやく騒ぎは収まったのである。




