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武器は 女 なのさ 21-8

「千代目!一郎!なんであなたたちが織田に!」

 お菊が驚いて声を上げると

「あたしたちの主君は信長公だけさ!若様(森長可)!姫様!(池田せん)!こいつらは本願寺の六花仙のお菊と雑賀衆の鈴木孫一です!討てば大手柄です!」

 千代目が長可に冷静に言うと

「へぇ。とんだ大物だったとはな。まぁ大人しく信長様に従ってくれてれば俺の母上も苦しまずに済んだのによ!気に食わないな!極楽浄土に送ってやるが少し楽しませてもらうぜ!」

 長可が自慢の十文字槍を振り上げながらにやりと笑いながら言うと

「撃て!」

 せんが声を上げるとせんの率いる女子鉄砲隊はいきなり発砲したのである。

「うわあ!」

 慌ててお菊やおいちらは盾の後ろに隠れたが

「隠れても無駄だよ」

 馬をいつの間にか飛び降りた長可が目の前に配下衆とすごい勢いで迫りまずは願証寺の僧兵を刺し倒したのである。

「抑える!この!」

「戦慣れしてない連中は逃げろ!」

 それでも三井寺坊主と坂井弁慶ら僧兵衆、願証寺の足軽衆は盾で押されながらも必死に長可配下の部隊と激闘を始めたのである。


「お菊!手柄になれ!」

 千代目も薙刀を持って猛然とお菊に襲い掛かったのである。一郎も追って迫って来た。ただ一郎は小次郎がすぐに飛び出し相手をしたが。

「あなたと戦いたくない!」

 お菊は防御しながら躊躇したが

「すまないけど昨日の友は今日は敵さ!甘っちょろいんだよ!」

 千代目は素早くお菊に薙刀で足払いを仕掛けたがお菊はひらりと跳んで避けると一度後ろに下がったのである。

「相変わらず身軽だね!さすがだね!避けれるかい?」

 千代目はお菊を追い、突きを仕掛けてきたがお菊はこれもかわしたのである。

 ただ別の願証寺の足軽が千代目を狙ったが千代目はこれをかわすと

「なめんな!」

 一喝入れるとこの足軽を斬り倒したのである。

「腕を上げてる!けど!」

 お菊は千代目の腕よりも味方の足弱衆(女子や戦が苦手な者)が暗闇に紛れてうまく逃げられているかの方が気になっていたが。


 お菊が下がって体勢を整えようとした時、

「おい!六花仙のお菊とやら!俺と勝負しろや」

 長可が自ら突っ込んで来たのである。

「!」

 お菊は危険を察し、かわしたが

「俺は女子には優しい主義だ。安心しろ。苦しまずに一撃で極楽浄土に送ってやる」

 再度、突きを仕掛けて来たのである。

「ヤバい!」

 お菊は慌てて薙刀の太刀部で防いだが押されていた。

「お菊殿!助太刀する!」

 別の願証寺の足軽が槍でお菊の支援に慌てて入ったが

「頂き!」

 長可は叫ぶとこの足軽を一瞬で突き刺して倒したのである。

 そして血だらけの愛用の十文字槍を惚れ惚れと眺めながら

「う~ん。俺のかわいい槍 人間無骨 も手応えが無いってぼやいてるぜ。おい!雑兵!こいつの首は取っておけ!次はお菊とやら。俺の 人間無骨 を喜ばせてくれよ!」

「コイツぅ !」

 お菊は怒りを貯め始めたのである。


 小次郎は一郎と太刀打ちしていた。

「お前らと一度本気でやりたかったんだ!」

「そんなに友達(ダチ)と殺し合いしたいんか!馬鹿野郎!」

「く!」

 小次郎は一郎に怒ると力で押し返したのである。


 池田せんの配下の女子鉄砲隊だが後方から空いてる馬の背中に跨ると次々と鉄砲を撃ち出したのである。

「味方に当てずに!遠慮なく撃て!」

 せんは指示を飛ばしたが幸運にもこの女子鉄砲隊はそれほど戦慣れしていなかったのである。辺りが暗く松明の明かり頼みなのもあったが願証寺の兵に当たらなかったのである。


 少し後方に下がって鉄砲隊を指揮するおいちも味方の足弱衆の動きを気にしながら雑賀衆に後方から反撃させようとしていた。

「味方は上手く逃げてるようやね。雑賀衆!反撃やで!狙えるやろ!」

 おいちが命を出すと雑賀衆の鉄砲兵たちは馬上の女子鉄砲隊を狙ったのである。

「くそ!女子(おなご)かよ!」 

 雑賀衆の鉄砲兵は躊躇したが

「躊躇すんな!でも直撃させんなよ!」

 別の鉄砲兵が声を上げると一斉に発射したのである。


「きゃあ!」

「痛っ!」

 せんの横に居た女子鉄砲兵が肩や腕を撃たれて次々と落馬した。せんには当たらなかったがせんは逆上し

「おのれ!」

 目に入った女子目掛けて発砲したのである。


「ああ!」

 おいちは悲鳴を上げ、倒れたのである。せんの撃った弾はおいちの左腕を貫いたのである。

「うわあ!おいち様!」

 雑賀衆は動揺したが

「ウチに構うな!かすっただけや!反撃や!」

 おいちは倒れたまま左腕から血を流し痛みに顔を歪めながら言った。


「孫一が倒れた!よっしゃあ!手柄だぁ!」

 森長可はお菊と小競り合いをしていたがおいちが倒れたのに気付いて雄叫びを上げたのである。

「雑兵!コイツ(お菊)は任せた!俺が孫一の首をもらうぜ!」

 長可と直属の部隊は一気においちを狙って動き出したのである。


「敵は浮足立った!押せ!」

 池田恒興も雄叫びを上げると池田隊も動き出したのである。


「耐えろ!耐えろ!」

 三井寺坊主と坂井弁慶ら僧兵衆は持ち堪えたがついに願証寺の足軽衆の一角が長可に敵わず崩れたのである。そして鉄砲は得意でも実は太刀打ちが苦手な雑賀衆に迫ろうとしていた。

 太刀打ちが得意な七ッ童子の小雀と無二、下針が必死に応戦したが押されており下針が負傷するとここも崩れたのである。

「やべえ!おいち!逃げろ!」

 一郎の相手をして動けない小次郎も叫ぶと

「おいち!さよなら!楽しかったよ!もらった!」

 先に小雀と無二、願証寺足軽衆を突破した千代目の部隊が起き上がろうとしていたおいちに迫ったのである。


 お菊は 切れた のである。

 

 普通の人には見えないが目を赤く光らせ体からも赤い何かを発すると目の前で立ち塞がった長可の足軽2人をまとめて一気に叩き斬ると長可の部隊に背後から突っ込んだのである。

 お菊に気付かないまま長可の守備兵2人は刺し倒され、ようやく長可らも異変に気付いて反撃したが遅かったのである。もう1人の守備兵もお菊に突き刺されて絶命すると長可は間一髪でお菊の薙刀を避けたが

「生意気なんだよお!」

 長可はお菊の胴を目掛けて 人間無骨 を突き刺そうと反撃したがお菊はかすったがこれを寸手で避けると長可の懐に飛び込んで 肘鉄 を顔面に食らわせたのである。

「あいとわ!」

 長可は叫びながら吹っ飛んだのである。

「よくも鬼武蔵様を!」

 別の守備兵がお菊の前に立つと

「邪魔するなあ!」

 お菊は振り返り様に薙刀の 柄 をこの男の顔面に直撃させ吹っ飛ばしたのである。


 そしてお菊は猛然と千代目の部隊に突っ込んだのである。

「化け物だ!」

「ひい!」

 千代目の配下は鬼武蔵を突破して来たお菊に恐怖して逃げ出したのである。

「う!お菊!何の力?」

 千代目も怖気たが引かなかったのである。

「うわあ!」

 千代目も反転してお菊に突っ込んだが腕の差は明らかであった。

「なんで 友達 を殺すのさ!」

 お菊は泣き叫ぶと千代目の薙刀を避けると自分の薙刀を千代目に振り下ろしたのである。お菊の薙刀は千代目の右肩から右胸まで食い込んだが

「まだあ!」

 千代目は叫ぶと薙刀を捨て、脇差を抜いてお菊に突っ込もうとしたが

「なんで死に急ぐのさ!」

 お菊は泣きながら千代目に食い込んだ薙刀をそのまま横に斬ったのである。

 千代目は静かに倒れたのである。


「畜生!千代目をよくも!」

 一郎は千代目が倒されるのを見ると逆上しお菊に向おうとしたが隙を見せてしまったのである。

「許せ!一郎!」

 小次郎は叫ぶと隙の出来た一瞬、一郎の横腹に薙刀を突き刺して倒したのである。


 お菊は目を覚ましたのである。

「ここは?」

 お菊は弱い声で呟いた。

「目を覚ましたかいな?何も考えず気にせずに ねんね しとき」

 横からおいちがいつものように軽く言った。

 お菊だが誰かに背負われて進んでいたのである。

 いつものように あの力 法力 を使って気を失ったのである。


「あたし、千代目を殺ってしまった」

「喋らん方がええぞ。休め」

 お菊を背負っていた三井寺坊主がお菊に言った。

「一郎も」

「お菊。もういい。休めって」

 小次郎が険しい顔で言うとお菊は黙って再度目を閉じたのである。


 しばらくしてまたお菊は目を覚ましたのである。

「さて。長良川揖斐川を渡るぜ」

 三井寺坊主が言うと

「ここを渡って多度山まで行けば伊賀までは追って来ないだろう。もう少しだ!」

 船頭も嬉しそうに言ったが

「誰かいる!」

 小雀が川の繁みに人の気配を感じたのである。みんな構えたのである。


「あれ?お前さんは安兵衛じゃねえか?」

 繁みの人影は変な声を出したのである。

「おお!久々じゃねえか!生きてたぜ!」

 船頭の男、安兵衛は繫みから出て来た男と懐かしそうに抱き合ったのである。

「誰やねん?」

 おいちがきょとんとすると

「私の仲間だ!織田に船を没収されたくないからここに隠してたそうだ!」

 船頭の男が嬉しそうに言った。

「北伊勢衆は織田に渋々従ったが織田を恨んでる。あんたらに協力する。対岸まで渡してやるぜ」

 船頭の知り合いの男はそう言うと渡し船を用意してくれたのである。

「助かった!」

「やれやれ~」

 蛍と鶴首だけじゃなく全員安堵したのである。

「恨まれる事したらダメだよね。あたしはもう恨まれまくってるけどさ」

 お菊は三井寺坊主の背中で呟いた。


 お菊だがいつの間にか寝てたようで再度目を覚ました。

 日が昇ろうとして明かりは少し明るくなっていた。

 お菊を背負っていたのは今度は坂井弁慶に交代していた。

「ありがとう」

「はっはっは!気にするな!もうすぐ伊勢亀山だ。ここまでくれば伊賀までもうちょうだいな!ゆっくり寝てな!」

 坂井弁慶は豪快に言った。

「この辺りの人が我々に協力的で助かった。南無阿弥陀仏」

 三井寺坊主が言った。

「うう!嫌な気配がする。気持ち悪い!」

 お菊は突如、呻いたのである。

「気にせんで ねんね しなって」

 おいちが横から軽く言いお菊の頭を撫でたのである。

 しかしお菊は少し後方を目で振り返ったのである。


 長島願証寺のある方向から濛々と煙が上がっていたのである。

「地獄の炎か。地獄で焼かれる人の呻き声だったのか」

 お菊は呟くと目を閉じたのである。


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