武器は 女 なのさ 21-1 挿絵あり
「返せぇ!首を返せぇ!」
お菊はそう叫ぶと猛然と織田の鉄砲隊に薙刀を構えながら真正面から突っ込んだのある。
「わぁ!ダメです!お菊さん!やめて!」
「お菊殿!落ち着いて!下がって!」
小雀と岡が絶叫した。
「これが雑賀衆だって?」
「噂ほどでも無いわ!」
織田の鉄砲隊は突っ込んで来るお菊に的を絞って構えると
「死んだお仲間のとこに一緒に送ってやるわ。死ね。撃てぇ!」
織田の鉄砲隊の隊長が命を出すと10丁の鉄砲隊は火を吹いたのである。
「みんな頭下げろ!頭!」
「クソお!」
佐武義昌と的場昌長らが地べたに這いながら悲鳴に近い声を上げたが。
「まったく。呆気ないもんだぜ。な!」
鉄砲を撃ち終えるとその硝煙が辺りに充満し様子が分からなかったが織田の鉄砲隊の男はお菊を撃ち倒したと決め付け隣の足軽に声を掛けたのである。でも男は固まったのである。隣の足軽の頭が無くなっていたのである。首から血を吹きながら隣の足軽は鉄砲を持ったまま膝から崩れた。
「うわあ!ぶは!」
「おい!へげええ!」
この男も絶叫した次の瞬間、腹に薙刀を突き刺され別の男も腹を両断され倒されたのである。
「首を返せぇ!」
お菊は叫びながら目の前の足軽を片っ端から刺しては斬って捨てたのである。
「なんだ!こいつ!鬼か!ぐがあ!」
「反撃しろ!太刀で何とかしろ!どへ!」
「嘘だろ!がああ!」
織田の鉄砲隊は応戦するも狂ったように暴れるお菊を抑えられず一方的に殺戮され大混乱になっていた。
お菊だが織田の鉄砲隊を撃たれる直前に信じられない高さで飛び越えてそのまま織田の鉄砲隊の陣中に突入したのである。
「お菊を援護する!行くぞ!」
「うわああ!」
慌てて小次郎と小雀、佐武義昌と的場昌長もお菊を追って突撃したが。
その間も織田の鉄砲隊も太刀や槍でお菊に反撃を試みたが怒り狂うお菊の前ではなすすべも無く屍の山を築くだけであった。
「あわわ、あわわ」
菊之助は地獄絵に涙目で腰を抜かしていた。
「見るな!見ちゃアカン!酷すぎや!お菊……アンタ……なんなのさ!」
おいちは菊之助の目を手で隠すとこわばりながら呟いた。
「降参する!首は返す!やめろ!」
「助けてくれ!だあ!」
冬の首を取った隊長たちは降参したがお菊は何の感情も出さず躊躇なく無慈悲に斬ると
「はぁはぁはぁ」
お菊は息を荒げながら冬の首桶を取り返したのである。そして返り血で血だらけの顔のままにこりと笑ったのである。
織田の生き残った足軽衆は悲鳴を上げながら逃げて行ったのである。
おいちだがお菊に追いつくと声を掛けた。
「お菊?大丈夫か?」
しかしお菊は今度は恐ろしい形相になるとおいちを睨んだのである。そして血だらけの薙刀を持ったまま立ち上がろうとしたのである。
「う!嘘やね!お菊!ウチやで!ウチ!あんたの大好きなおいちやで!」
おいちは恐ろしくなり後ろずさりし、岡たちが慌てて守りに入ったがお菊はそのまま立ち上がらず意識を失って倒れたのである。
かなり時間が経ってからお菊は目を覚ました。
「大丈夫かいな?3日も寝てたで?」
おいちが声を掛けて来たのである。
「ここは?」
お菊はか弱い声でおいちに聞いた。
「大鳥居砦やで。アンタのおかげで無事に戻れたで」
おいちはにこりと笑って返した。
「そうか」
「お腹空いたやろ?」
粥が用意されおいちが匙でお菊の口に移してあげたのである。
「ありがと」
お菊は粥を含んだがまだ力が戻らないようでか弱い声で返した。
「静かだね」
「夜中やで。寝な」
「そうする」
お菊はそう言うとまた目を閉じたのである。
再度お菊は目を覚ました。
「おはようさん」
おいちはいつものように軽く言った。
お菊はかなり元気を取り戻していた。上半身を起こしたが寝床の雰囲気が違うのに気付いたのである。
「あれ?ここは?」
お菊はきょとんとすると
「願証寺ですよ!」
小雀が入って来たのである。
「願証寺?なんで?」
お菊がぽかんとすると
「ゆっくりしな。後で話すわ」
おいちが返した。お菊だがおいちとの付き合いは長い。おいちの悲しそうな目を見て何か嫌な事があったと悟ったのである。
「分かった」
お菊もそう言うとまた横になったのである。
「お腹すいたら言ってや。ご飯もらってくるわ」
「ありがとう」
お菊はそう言うとまた目を閉じたのである。
外から南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏と念仏を唱える声が時々聞こえて来た。
20分ほどして
「おいち、大鳥居砦、落ちたの?」
お菊は目を閉じたままおいちに聞いたのである。
「そうや」
おいちは無感情に返した。
「あたしを見捨てずここに連れて来てくれてありがとう」
「当たり前やで。アンタがおらんとウチ寂しいわ」
おいちは笑いながらお菊に返した。
「大鳥居砦の人はどうなったの?」
お菊が聞くとおいちは少し間を置いて
「降伏して外に出たらみんな殺されたわ」
おいちは再度無感情に返した。
「そうか」
お菊は予想通りだったので驚きはしなかった。
「殺されて川に捨てられた人の仏さんが目の前を通るから極楽浄土に行けるようにみんなで念仏唱えてあげるんや」
念仏を唱える声はそのためであった。
「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏」
おいちも唱えた。
「冬さんやけどアンタが休んでる間に荼毘にしたで。南無阿弥陀仏」
おいちが言うと
「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏」
お菊も上半身起こすと手を合わせ念仏を唱えたのである。
そして
「信長公め!」
お菊は口走ったのである。
「そうや!絶対に一泡吹かせたるわ!」
おいちも珍しく恨めしい顔で呟いたのである。
その頃、織田信長だが小木江城で願証寺を裏切った日根野弘就と高吉親子と面会していた。
信長だが終始不機嫌であった。日野根親子だが信長への手土産として偽ののろしや忍びまでをも用意して雑賀衆をおびき寄せた。途中までは上手く行き多芸山で待ち伏せし鉄砲で一網打尽にしようとしたが雑賀衆の思わぬ反撃を受けて逆に佐久間隊が予想外の被害を受けたが。
なお日根野親子だが雑賀衆の予想外の反撃に佐久間隊を支援せずに逃げてしまった事にも信長の不興を買ったが。
それでも大鳥居砦の部隊が壊滅、日根野親子も信長の義父の斎藤道三の元家臣で美濃出身で独特の鉄砲の弾の耐性のある兜を作る技術などを持っていたので信長も今回は家臣として取り立てる事を認めたのである。




