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女は柔よく剛を制すのさ 19-1 挿絵あり

挿絵(By みてみん)

 足利義昭だが織田信長に叛旗を翻すも信長に京を焼かれると怖気付いて信長に降伏したのである。お菊と小次郎だがその過程で明智光秀と小競り合いを起こすが信長の正室の帰蝶や後継者、奇妙の執り成しで事なきを得て無事に大阪の石山本願寺に戻れたのである。お菊や小次郎にとってはとんだ花見になったが。

 ただ信長の京の焼き討ちは京の民に衝撃を与えまた京を守れなかった室町幕府、足利義昭の評価もがた落ちになるが。


 義昭の蜂起に合わせて石山本願寺に入っていた篠原長房、三好三人衆の三好長免、長虎、岩成友通、そして三好義継、三好康長も義昭が信長に降伏したので手が出せなくなりいったん各々の本国に帰還したのである。

 また、信長の容赦なさも痛感したのである。


 5月になると石山本願寺は浄土真宗の祖を造った親鸞聖人の行事で巫女衆も多忙になるので事前にお菊、おいち、お凛は4月の終わりに休暇をもらったのである。

 3人は本願寺の門前町の茶屋でくつろいでいた。


「なんか京もせわしかったな。こういう静かなのって悪くないね」

 お菊はふうっとため息をついた。

「そやな。とんだ花見やったな。でも信長公ってホンマやばいな。来年はマジで大変になると思うわ」

「ウチもそう思うな」

 お菊に対しておいちとお凛は返した。


「なんでさ?」

「信玄公やけど朝倉義景殿にえらく怒ってるらしいで。三河で信長公を足止めしている間に(信長の)美濃に攻め入れたのに好機を逃したって。信玄公やけど病でいったん甲斐に戻るらしいで」

 信玄だが自分が三河で家康と信長を引き付けている間、朝倉義景に信長の美濃へ背後から攻め入るよう再三頼んだが雪を理由に義景は動かなかったのである。義昭も義景に蜂起するようせかしたが義景は結局動かなかったのである。

 信玄だが三河吉田城を包囲していたが体調不良のため4月の初めだが一度甲斐に戻る事にしたのである。

 信長だが信玄が動けないのと義景も引き籠っているのに掛けてまず義昭を処するため京に軍を送り込み今回京を焼いて義昭を黙らせたのである。

 この信長の決断は信長優位に戦局を進め、義景は動かず義昭が降伏し、信玄が甲斐に戻った事は篠原長房や三好三人衆に大打撃を与える事になるのである。


「信長公、鬼(信玄公)の居ない間に義景公と長政公を倒しに行くやろうな。その後は三好三人衆や長房殿、(松永)久秀苑、義継殿を倒しに来るやろうな」

 おいちははぁとため息をつきながら言った。

「本願寺はどうするんだろうね?三好三人衆や長房殿らから助けてと言われたら(信長との)和睦を破るのかな?」

「分からんね」

 おいちはあくびをしながらお菊に返した。

「でも本願寺にも言う事を聞けってくるやろうな。長島が攻められたら助けに行かなあかんやろ?また信長公と争う事になると思うけどな」

 お凛が小声で言ったが

「父ちゃん(鈴木重秀)に聞いたけど本願寺の中で意見が割れて顕如様やお偉いさんも困ってるらしいで」

 本願寺も苦慮していた。本願寺は信長と和睦していたが信長からは長島願証寺の放棄移転を迫られていたのである。

 長島願証寺はこれを拒否していた。また本願寺の中も信長と戦う戦わないで意思が統一できなかったのである。


「なんかなぁ。アレやな。色々事情はあるやろうけど。不甲斐ないな」

 お凛が小声で不満そうに言った。

「そやな。ピシッとしないゆうか。右往左往ゆうか」

 おいちも続いた。

「男らしくないかな」

 お菊が正直に言うと

「わ!厳しいな!」

「それだけは言うのはやめよと思った事を ズバリ 言うな!さすがお菊や!」

 お凛とおいちがお菊を冷やかしたのである。お菊はえへへと笑ってごまかしたが。


「あと篠原殿が主君の(三好)長治殿と喧嘩してもうたらしいで。今回も本願寺に長治殿、来てなかったやろ?」

「ウチをナンパしたあの兄ちゃん(長治)は思慮が浅いわ」

 おいちは長治を侮蔑するように言った。

 長房は若い長治を補佐していたが長治は成人すると長房を疎ましく思うようになり自分で政治をしたく長房を遠ざけるようなったのである。

「みんなそんな威張り散らしたいんだ。呆れるよ」

「ほんまや」

 お菊とお凛は呆れ気味に言った。

「そんな事情は単純ちゃうで~」

 おいちが小声で軽く言った。

「ほえ?」

 お菊とお凛が不思議な顔をすると


「小少将(こしょうしょう)さんって知ってる?」

おいちが嬉しそうな顔で身を乗り出して聞いてきた。

「誰?」

「知らん」

 お菊とお凛が返すと

「なんかすごい姫様らしいわ!ウチ興奮したわ!聞いてや!」

 おいちが嬉しそうに言ったが

「あんたが一番すごいって。人目を気にせず海や川で素っ裸で泳げるなんて」

「ウチはお断りやね」

 お菊とお凛が連れなく返すと

「あのな!着物を着たまま泳いだら水を吸うんで着物の重さで溺れるんや!脱がな仕方ないんやで!って話が違うわ!」

「小少将さんてどこの人なの?」

「今回長房殿を怒らせた人やで!調べたらすごいねん。14歳で52歳の細川何とかさん(氏之)て言う阿波の国主(守護)のおっちゃんと結婚して子を産んでるねん(子は細川真之)」

「仕方ないよ。殿様の姫ってみんな政略婚でしょ?あんたも雑賀の姫なんだから頑張りなさいよ」

「あかんやろ!自分の孫みたいな娘やんけ。きついわ」

 お菊にお凛が突っ込んだが。

「続きがあるねん。で、細川何とかさんやけど三好実休殿と揉めて討たれたんやって。でも今度は実休殿に好かれて嫁いでまた子を産んだんやって」

「お互い好きなら良いんじゃない?ふぁああ」

「正室を差し置いてならマズイと思うけどな!不義(不倫)やんけ!」

 お菊があくびをしながら返すと再度お凛が突っ込んだが。

「でも実休殿も戦死したら今度は(実休の重臣だった)長房殿に近付いたんやって!長房殿が家中を荒らすなって注意したら長房殿の縁戚の自頓殿に近付いて恋仲になったって!」

「ちょっとあんた何言ってるの?悪い女の人だよ。その人」

「長房殿は正しいがな」

 お菊とお凛はおいちに突っ込んだのである。

「そやな!小少将さんは悪い女の人やな!長房殿は正しいな!今回、長治殿やけど自分で政治をしたいのもあるかもしれんけど多分、母上の小少将さんにけしかけられたかもな!」

「最悪。国を亡ばす気?」

「悪女やん」

 お菊とお凛は侮蔑気味に言った。

「でもな、小少将さんは確かに悪い女の人かもしれんけどそこまで男にモテるってすごいと思わん?いや、男を手玉に取るってな。ちょっとウチも小少将さんに惹かれてもうたわ。ウチあんたらよりちょっとだけ美少女やけどこの小少将さんには敵わんかなと思うたりな」

「お家や世の趨勢も考えずに勝手に振る舞うなんておかしいよ。今まで長房殿あっての阿波だったのにさ。あと、あんたがあたしより美少女かどうかは知らないけど。男はあんたみたいにすぐにお肌の触れ合いまで近付く娘(こ)が好きなだけだと思うよ」

「待て!今のは聞き捨てならんわ!雑賀衆同志で親睦を深めるためにやってるんやで!」

 おいちもムキになったがお菊も下がらなかったのである。

「それでも男も女も関係なく川で素っ裸で触れ合いなんておかしいよ!破廉恥だよ!」

「子供の頃からそうしてるんや!そうすれば大人になったら自然と良い夫婦(めおと)になるんや!お菊と小次郎がいつまでもお堅いのとは違うんや!」

「あたしと小次郎は普通だよ!あんたらこそおかしいって!」

「おかしくない!昔からの雑賀の郷の習わしやねん!お菊こそ一通り全部やってるのに何でいつも うぶ な振りすんねん!ウチはお菊の事は大好きやけどそのスカしたとこはムカつくわ!」

「なにおぉ!あたしは清く正しく美しくいたいだけよ!」

「それがムカつくねん!男女に関してはもっと素直になれや!男にモテたい でもええやん!」

「あたしは今でちょうど良いの!」

「わ!なんやねん!その あたし、充分モテてます と言わんばかりの態度は!腹立つな!」

「こら!お菊!おいち!落ち着け!他のお客さんドン引きやで!」

 お凛が慌ててお菊とおいちの間に止めに入ったのである。他の客は唖然とおいちとお菊の口論を少し顔を赤くしながら聞いていたのである。

「あら!ごめん遊ばせ!」

「恥ずかし!失礼!」

 お菊とおいち、お凛だが顔を赤らめて詫びて茶店から逃げるように去って行ったのである。


 1573年5月になるとお菊らは石山本願寺の親鸞聖人の行事で巫女として大忙しである。

 その頃だが春に信長に屈した足利義昭だが再度、信長に対して挙兵を企んでいた。本願寺にも義昭に協力するよう密書が届いたのである。

 顕如は高僧たちを集めてどうするか密かに検討したのである。


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