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地獄からの巫女 26-4

 翌朝、お菊は目を覚ました。

「回復した!」

 お菊は身軽にひょいと布団から起き上がったのである。疲労が普段より早く取れたように感じたのである。

「何だろう?回復が早い?感じる。でも明智殿ではない。誰だろう?」

 ただその理由はよく分らなかったがお菊は何かを感じこの四天王寺の庚申堂の北にある天王寺砦の方向を無意識に見たが。


 庚申堂の縁側に出ると外では小次郎が配下の者と朝の武術の訓練をしていた。

「おはよう。朝から元気だね」

「大丈夫か?」

「大丈夫。お腹空いた」

「朝飯を持って来させるぜ。待ってな」

 お菊だが再度天王寺砦の方を見た。天王寺砦は小高い丘の上に前と同じように建っていた。

「どうしたんだよ?」

「いや、別に。朝ご飯待ってるね」

 お菊はそう言うと庚申堂の中に戻ったのである。


 お菊は朝食を終えると着替えて外に出ると転がっていたたんぽ槍を持つと

「あたしも久々にちょっとお手合わせ頼もうかな?」

 軽く言ったが 

「いや!お菊さんの相手はその!」

「あはっ。ちょっと今日は調子が」

 小次郎の配下がみんな慌てて遠慮したが。

「久々に小次郎に相手してもらおうかな?でも小次郎すぐにムキになるからなぁ」

「むかっ」

「言ってる矢先にムキになってるけど?」

 お菊がにやにやしながら冷やかすと

「う!まぁ、確かに今のは大人気ないな」

 小次郎だが急に冷静に振る舞ったのである。

「よし!じゃあ小次郎、頼むね」

「望むところだ!ぎゃふんと言わせてやるさ」

「遠慮しないね!」

 お菊も防具を着ると互いにたんぽ槍を構えたのである。


「小次郎と模擬戦なんてほんと久々だね」

「そうだな。まぁ俺の進化をたんと味わいな」

「楽しみ!」

「行くぜ!たあ!」

 小次郎だがたんぽ槍の連続突きを先に食らわせたが

「おっと」

 お菊は器用にたんぽ槍で防御しながら避けた。

「これで!」

 しかし小次郎は急に間を詰めると足払いをも仕掛けたが

「うわっ!危な!」

 お菊も跳んで間一髪避けたのある。


「おお!」

「さすが!」

 小次郎の配下も感心しながら見てたが。


「相変わらず はしこい な!」

 小次郎はにやけたが

「まぁね!じゃあお返ししちゃおうかな?」

 お菊もにやりと笑うと猛然と突っ込んだのである。

「ぐ!さすが!」

 小次郎だが防戦一方になったがさすが小隊長を率いるだけあって昔と違い後ろに下がらずたんぽ槍で防御しながら押し留まったのである。

「小次郎やるじゃん!」

「当たり前だ!お返しだ!」

 小次郎は再度足技を掛けてお菊を転ばせようとしたがお菊は再度跳ねて下がりながらかわしたが

「隙あり!」

 小次郎はたんぽ槍で真横から斬りをかけたが

「おわっと!」

 お菊はこれも素早く反応したんぽ槍で防いだのである。

「お前さすがだな!驚いたよ」

 小次郎が感心すると

「泰平の世を見るまで死にたくないからね」

「良いな!それな!なんか聞いた事あるけどまぁいいぜ。行くぜ!」

 今度は小次郎が反撃しお菊も防御し実剣であれば火花を散らすような距離まで近付いたのである。たんぽ槍なので火花は出ないが。

「小次郎?あなたの配下衆の手前もあるから手加減しようか?」

 お菊は小声で言うと

「なにぉ!手加減無用だ!」

 小次郎は少しいらっとしたが

「熱くなり過ぎだってさ」

 お菊は呆れたが。


「おお!小次郎さんマジだ!」

「お菊さんもすげえ!」

 小次郎の配下衆は2人の太刀打ちを興奮して見てたが。


「もう終わりにしようよ。決着付かないって」

 お菊だが疲れたのか飽きたのかやる気を失いながら言ったが。

「ふん。俺はお前の弱点を知ってるからケリは付くさ」

 小次郎がにやりと笑うと

「え?あなたなんであたしの弱点知ってるのさ?耳の裏に息を掛けられたら弱いって?」

 お菊は素で驚いたが

「そんなん知らんわ!」

 小次郎はがくっとすると力が抜けたのでお菊と離れて間を取ったのである。

「まったく。調子が狂うな。よし!本気出すぜ!これで決めるぜ!」

 小次郎だがそう言うとたんぽ槍を持ち直し構えると

「お菊。ところであれ、何だ?」

 突然小次郎は全然違う方を指差したのである。

「へ?」

 お菊だがそっちを見た瞬間だった。

「もらった!」

 小次郎はたんぽ槍を放り投げお菊に飛び付いたのである。

「い!」

 お菊も予想外でさすがに防御出来ずそのまま小次郎に抱き付かれて押し倒されたのである。

「はっはっは!俺の勝ちだな!おいちの戦法をパクったが上手く行ったぜ!」

 小次郎だがお菊に頬すりしながら勝ち誇ったように言った。

「むぎゅう」

 お菊は伸びていたが。


「なんと、せこい!」

「いや、小次郎さんの執念は感じる!けど……」

「ちょっと、女の子に抱き付いて頬すりなんて恥ずかしいかな?」

 お菊に抱き付いてる頬すりしてる小次郎を見て配下衆はみんな気まずく顔を赤らめていたが。


「ちょっと!小次郎!いつまで抱き付いてるのさ!恥ずかしいってさ!」

 お菊だが顔を赤らめながら怒ると小次郎も我に返り慌ててお菊から離れたが。

「なんであなたがおいちの真似をするのさ?おかしいでしょうが!」

 お菊が怒ったが

「お凛のやり方の方が良かったか?たんぽ槍を放り投げて油断だったけ?」

「そう言う問題じゃない!」

 お菊は再度怒ったが。

「でも俺の勝ちだぜ。ちょっと恥ずかしいけどな」

 小次郎は顔を赤らめながら言ったが。

「あなたね!これは女子同士だから良くて男子がこれをやったら意味が全然変わるでしょうが!」

「別に手合わせなら良いだろ?勝ったモン勝ちだろ?」

「違うってさ!もう鈍感!」

 お菊と小次郎がいがみ合ってるのを小次郎の配下衆はぽかんと見てたが。


「あはは!相変わらず元気だな!」

「うふふ」

 いつの間にかお菊と小次郎の手合わせをマリアと弥生が見てたのである。

 2人とも苦笑いしてたが。


「あ!弥生さん!もう小次郎、最低なんですよ!」

 お菊が口を尖らすと

「勝てば良いのさ」

 小次郎も何喰わぬ顔で返したが。

「おいちの真似をするなってさ!」

「お前の大好きなおいちの戦法を真似ただけだぜ」

「なにぉ!公衆の面前で男子が女子に抱き付くな!恥ずかしい!」

「悪気はない!勝つためだ!」

 お菊と小次郎はまた配下衆が唖然とする中でいがみ合いを始めたが。


「まぁ、実はお菊と小次郎も素知らぬ顔して喧嘩するほど何とやらだもんな!」

 マリアが大笑いしながら言うと

「むかぁ!」

 お菊と小次郎はちょっと顔を赤らめながらマリアを睨んだが。

「マリアさん、言い過ぎだって!」

「お菊さんも小次郎さんも怒らない怒らない!」

 マリア配下の金閣と銀閣もお菊と小次郎に詫びるように笑いながら言ったが。

 お菊と小次郎は膨れたままであったが。


「お菊。私がお口直しにお相手するわ」

「え?弥生さんが?」

 弥生の突然の振りにお菊は驚いた後

「え?良いんですか?」

 小次郎も思わず弥生に聞いたが

「大丈夫よ」

 弥生もそう言うと防具を着込んでたんぽ槍を準備したのである。


 お菊と弥生はお互いに構えると

「弥生さんとお手合わせなんて初めてかも」

 お菊が呟くと

「そうね。今日は良い機会かなと思ってね。遠慮なくどうぞ」

 弥生も返した。

(隙だらけで隙が無い?速さと腕力は気を付けないと)

 弥生だが突っ込みの速さより腕力が強いので太刀打ちで体勢を崩されると思ってお菊は警戒したのである。

「来ないならこちらか行くわね」

 弥生はお菊が動かなかったので向かって来たが

「重い!」

 予想通りだがたんぽ槍であっても太刀打ちすると重いのである。体勢に響いた。

「たあ!」

 お菊も連続突きを掛けたが弥生は軽く素早く跳ねるように下がって体勢を整え直した。

 弥生は素早く動くと太陽に背を向けたのである。

「その手は食わない!」

 ただお菊は近江で渡辺守綱と戦った時に太陽の光を背に攪乱されたので再度お菊も走って移動し場所を変えたのである。


「模擬戦だぜ!熱くなり過ぎ!」

 小次郎がお菊と弥生を心配したが

「ははっ。弥生も本気だね」

 マリアはなんか読んだように言ったが。


「お菊、さすがね」

「弥生さんも!」

「薙刀の角度で太陽の光を乱射すれば目くらましになるわ」

「目くらまし?薙刀の角度で?」

 お菊が油断して聞き返すと

「ごめんなさいね」

 弥生はたんぽ槍をわざと短く持つとお菊との間を詰めてお菊の懐に突っ込んだのである。お菊は慌ててたんぽ槍をかわしたが弥生はその隙の模擬脇差を片手で抜くとお菊に突き刺そうとしたのである。

「あ!」

 お菊だがたんぽ槍を瞬時に捨てると両手で弥生の模擬脇差を両手で抑えたまま逆に弥生の懐に飛び込んだのある。

「え!でも!」

 弥生は仰天したがたんぽ槍を持ち直してお菊に当てようとしたがお菊は弥生にそのまま体当りした。そして弥生の模擬脇差を両手を抑えながら片足で弥生に足技を掛けると弥生はお菊の体に押し倒されたのである。


「あいつ、弥生さんを」

「すげぇ」

 小次郎や配下衆は唖然としてたが。


「弥生さん!ごめんなさい!本気出しちゃった!」

 お菊は弥生に詫び、弥生の手を取って起こしたが

「良いのよ。こんな日が来ると思ってたしこれは自然なのよ。代替わりは必ず来るのよ」

 弥生もさばさばと言った。

「そ!これからは若者に頑張ってもらわねばなってね!お菊やるねぇ」

 マリアも軽い口調で言った。


「でも、あたし……」

「良いのよ。まだ深く考えなくても。今を生き延びればね」

 弥生はお菊の言いたい事を読んだようにその場は遮った。

「私もあなたと同じくらいの齢の時は悩んでばかりだったから」

 弥生はお菊に笑顔で返したのである。


 その時であった。


 天王寺砦の北の方から煙が上がったのである。

「なんだ?火事か?」

 配下衆が心配そうに言ったがしかししばらくして四天王寺からも煙が上がったのである。

「まさか!」

 お菊たちは予想外に驚愕するのである。






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