日記⑦ 33日目〜38日目
【33日目】
ついに例の衛星軌道兵器が、西の大陸(旧ハヴァ・フィールド)に向けて放たれた。人類の核攻撃と、“ハヴァ”方面軍壊滅に対する報復だ。我々の対空兵器を1万基かき集めたとしても敵わないほどの超高出力レーザーが、宇宙空間から敵の大地を焼き尽くした。
結果は、我々が他の惑星でも経験した通りだ。10余りの大都市が瞬時に霧散し、大地は赤黒く焼けただれた。そこに住まう人類は、老いも若きも逃げ惑う暇さえなく、文字通り「消滅」した。
日記なので、あえて個人的な意見を書く。
私はあの兵器の使用には反対である。そもそも我々は、この惑星のアニマを保護・活用するため、侵攻に及んでいる。それは“我らが母星”の意思でもあり、我々の崇高な使命でもあるからだ。
そもそも「アニマ」とは、我ら種族の生命器官であると同時に、惑星の生態系や、その星の意思、生存に関わる無二の概念。言わば“惑星の魂”だ。
そのアニマに満ちた生態系を、敵を打ち払うためとはいえ巨大なレーザーで焼き払うなどどうかしている。「レーザーなら放射能みたく後々まで影響が出ないから大丈夫でしょ」という楽観的な気持ちで使用しているのだろうが、どうにも腑に落ちない。
今日の勲章授与式でその報告を聞いたナバト軍団長が、「未開の猿どもよ!大量破壊兵器とはこう使うのだ!」と高らかに笑っていた。私に言わせれば、核だろうが軌道兵器だろうが大した違いはない。
戦争はスポーツではないのだ。閣下にはどうか、テラ侵攻とナジャンダを一緒にしないでもらいたい。
やはり圧倒的な火力は人を狂わせるということがよく分かった。まったくもって嘆かわしい。
【37日目】
レーザー砲火による制圧射撃の後、我が中隊は大山脈への進軍を開始した。敵の前衛部隊による抵抗をあっさり跳ね除けた中隊は、いよいよ敵陣地へと突き進む。体よく先鋒を押し付けられた我々には、新たに生体兵器20体が与えられた上、本部直轄の重レーザー兵器群が供与された。
これは既存の生体兵器を、遺伝子操作によってより大型に改造し、体内の生体エネルギーを数倍に増幅させたタイプで……。まぁ説明はいい。
要するに火力だ!圧倒的大火力!
こりゃあすごい。敵が面白いように溶けていく!これまでの苦戦が嘘のようだ。
フィールド本部のやつら、こんなものを温存してやがって。あぁ腹が立つ!
ユノからは「重レーザーは燃費が悪いので温存すべきです」と進言されたが、指揮官はこの私だ。こんな素晴らしい兵器を前にして使わない方がおかしいんだ。
敵陣地を発見次第、ナバトの紫顔に見立ててぶっ放せ!
【38日目】
やってしまった……。
レーザーを撃つのに夢中になっていたせいで、中隊が窮地にあることに気が付かなかった。
まず先陣を任せていたユノの第1小隊は、火力重視の生体兵器を集中運用することで敵戦線を突破。後続の我々はその突破口を拡大し、本隊の到着まで戦線を維持する。
はずだった。
ところが、敵に楔を打ち込んだユノは構わず前進を続け、戦果を拡大。我が中隊はその速度に追いつけず、あわや第1小隊が孤立する危機に陥った,
あの戦争狂め。突出しすぎるなとあれほど言ったのに!だが私も私で彼女の忠告を無視したのだから文句は言えまい。トゥランメは「突破口の維持はお任せください!」と言って、すでに第3小隊を戦闘体形に切り替えつつある。少しばかり不安だが仕方がない。
私は第3小隊に“出入り口”の確保を任せ、フラーの第2小隊とともに第1小隊を追った。とにかく、隊列に穴を開けてはならない。
ところがここで問題が生じる。最後尾の第4小隊を任せていたシシン——あの石橋叩きすぎ野郎のせいで、気づけば第4小隊だけが我々の行軍速度から大きく外れ、はるか後方にいたのである。これではまるで電撃戦の素人だ。
気づけば第3小隊はあっけなく敵に退けられ、敵の戦線は元通り。つまり、第1、第2小隊と第3、第4小隊が完全に分断されてしまったのだ。それどころか、第1と第2小隊、そして私の率いる中隊本部が、丸ごと敵の包囲網の中に入ってしまったのである。ここはいち早く敵の包囲を突破して後退しなければならない。その為には突破力のある高火力兵器が不可欠だろう。よし、重レーザーの出番だ!
そこで私の大失態。
なんと全ての重レーザーがエネルギー切れを起こしていた……
使いすぎだ!!バカ!!!
【次回】
人類軍に包囲されてしまった主人公とその中隊。
ふと空を見上げると、そこには味方の衛星軌道兵器が…!?待て、アイツはどこ狙ってるんだ?
レーザーを打ち尽くし、部下には怒られ、絶体絶命の中隊長。部隊の生き残りを賭け、彼はとんでもない軍規違反を決行する!
そして主人公を待ち受ける、核より恐ろしい「スタンプラリー」とは?




