二十五話
不快だ。
取るに足らない前妻の息子リオン。
奴を庇うためにクリスティナに似た人形がわざわざ会いに来たことで、余計な手間が生じた。
塵芥ごときにアンジェリナが分を弁えぬ口を利いてから、煩わしいことばかりだ。
幽閉で済まそうとしてやったのに。
だが、いい機会だ。
クリスティナに関してもアンジェリナに関しても、以前から矮小な国の人間が執拗に面会を嘆願していた。
黙殺していたが、敗戦を受け入れるならと預けてやった。ただそれだけだ。
『皇帝陛下、件の伯爵の婚約者ですが、アンジェリナ様と思われます』
その不快極まる報告に、小国ごと不浄な土地まで焼き払い駆除しようとすら考えた。
奴らが何度も口実を並べ、面会を求めてきたから与えてやったものを。反吐が出る。
賠償金すら払えぬ分際で。図々しい。
俺の所有物を、我が国の卑しい貴族に嫁がせ、金策の道具に貶めて私腹を肥やすとは虫唾が走る。
慈悲をかけてやったのに、卑賤な連中が思い上がるな。
「あれを即刻回収しろ」
「御意」
「一言でも否めば戦争だ」
「御意」
所有者を動かすとは。実に面倒な人形だ。
しかし、これですぐに戻ってくる。
そうすればまた、この城から一歩も出すことはしない。
次はこの部屋に置き、死ぬまで俺だけを仰がせる。
口元が愉悦に歪む。
あるべき場所に収まるのだ。
クリスティナの面影を持つ、器。
俺を満たすためだけの私財が。




