第八話
ケルベロスとの一方的な戦闘の途中、俺の絶体絶命の時にちっこいドラゴンがいきなり現れた。
ドラゴンなんていよいよファンタジーじみてきたな………
本当に異世界かもしれない。
あと、こんな自分の命が危ない時に何をのんきなことを考えてんだって思うが正直ちびドラは可愛いかった。
白銀色の鱗に包まれた細長い体、背中から生える二つの翼。ドラゴンといったがどちらかというと竜よりは龍だろう。
「ぐぁ」
小さくちびドラが鳴き声を上げるとケルベロスはとたんに筋肉を収束させ身構える。その姿はまるで強大な捕食者に立ち向かう矮小で滑稽な子犬のように見えたのは俺の気のせいだろうか。
「「「GAAAAAAOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOON!!!」」」
ケルベロスの三頭全てが吠え迎撃態勢をとる。空気がビリビリビリビリと振動する明らかに今までより大きい威圧感を放つ。
なぜケルベロスはあんな小さなドラゴンに全力をだす?
俺の中で疑問がめぐるが今はそんなことは関係ない。
「「「GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOUUUUUUUUN」」」
一際大きくケルベロスが叫び声をあげる。それと同時に奴の顔の前に三つの蒼い太陽が出来上がる。
俺に放ったのとは比べ物にならないほど大きな焔球。
「ぐぁ?」
それを見てちびドラは小さく小首をかしげるだけだった。
「「「GAYOOOOOOOOO!!!」」」
咆哮と共に三つの太陽はちびドラにまっすぐ飛ぶ。俺はそれを見ていることしかできない。
ちびドラへと焔球が迫る。ぐんぐんと距離を縮めて後少しというところで、掻き消えた。
「「「GYAOOOOOOOOO」」」
ケルベロスはそれがわかっていたかのように距離を縮めている。さっきまで俺の目の前にいたはずがもうドラゴンの前まで迫っている。
極太の黒い腕を振り上げてその腕が消えたと錯覚するほどの速さで振り下ろす。
ギャイン!
金属と金属がぶつかりあうような音が響きケルベロスの掻き消えた前足が出現する。
「「「GYAOOOOOOOOOOOOOOO!!!」」」
咆哮、ちびドラが現れてから明らかに吠える回数が増えたケルベロス。
もう一度ちびドラに向けて腕を振り下ろす。消えたと錯覚してしまうほどの速度。
ギャイン!
だがそれはまたしても何かによって阻まれる。
今俺の目の前で起こっている戦いに理解が追いつかない。逃げようにも膝は笑い、腰は抜けていて立ち上がることはできない。
目の前ではケルベロスがちびドラに前足を振り下ろし、それが見えない何かにはじかれるということが何回も起こっている。
「ぐぁあ」
数分その光景が続いた後、ちびドラは気だるげに啼いた。
ピタリ、その鳴き声に合わせてケルベロスの動きが止まる。
『××××× 極龍砲』
ゾワゾワゾワ、鳥肌が立つ。何かおかしな力の奔流がちびドラの周りを渦巻く。
刹那、俺の視線がちびドラに集中していたすぐ後、ケルベロスの首が一本宙を舞った。
「「GYAOO!!」」
残った二つの首が悲痛な悲鳴を上げる。
ちびドラはそれをつまらなそうな眼で見つめた。
『×××××× 剛龍牙』
ゾワゾワ、またしても鳥肌が立つ。
バッキィ。
鈍い音が響いた。
「………嘘だろ」
得体のしれない力を感じ取りちびドラに目を向けていた時、唐突にその事象はケルベロスを襲った。
三秒ほどの出来事だった。まず最初にいきなりケルベロスが膝をついた。そして次に完全に四肢全てを地面にべったりとつけて伏せのような姿勢になる。そして最後、ケルベロスがペッシャンとつぶれた。
ケルベロスだったものがある場所は半径五メートルほど血が飛び散っている。
ゾワリ。悪寒が俺を襲う。
「次の標的俺とかになんねぇよな………」
そんな俺の願いもむなしく。こちらを見るちびドラ。いや、あのケルベロスより威圧感のある龍にちびドラは失礼だろう。
「うわぁ、こっち向いたよ」
さっきの戦闘を見る限りではこちらから仕掛けなければ戦闘にはならないはず。
「ぐぁおぉ!!!」
咆哮。あの小さな体のどこに力があるのかわからないがケルベロスの数段は空気が震える。
吠えた後こちらに向かって突進をしてくる小さな龍。
「戦闘開始かよ! こんチクショウ!」




