第五話
洞窟は縦七メートルくらい横幅五メートルくらいめちゃくちゃ大きい穴だった。
「こういう洞窟は大体強い魔物がいるからあんまり入りたくは無いのよねぇ」
静の妄言が復活したのでこれはいいのか悪いのか判断できない。
「魔物、ねぇ」
正直言ってここが異世界でもどこでもどうでもいいが帰れないのはつらい。今やっているネットゲームがあとちょっとでレベルカンストするので最近やりこんでいたのでそれを無駄にしないためにも家に帰ってネットゲームにいそしみたいのだ。
「魔物はいないと思うけど熊とか出たら嫌だな」
佐藤が俺の言葉を拾って同意してきた。
「確かに熊とかでたら対処がめんどくさそうだな」
俺がそういうと前のほうでまた言葉を拾った弥生が。
「熊くらいなら大丈夫よ、倒せるし」
君はいったい何なんだ神無月さん。
「僕も熊くらいなら大丈夫かな」
君もいったい何なんだ京谷君。
「私も大丈夫よ」
「黙れキチガイ」
「また、キチガイっていったー!」
静の精神年齢低すぎだろ。
「ハハハ、みんな凄いね」
引きつった笑みを浮かべる佐藤。俺は違うからね佐藤君。
「さっさと行くぞ」
そういって紅がずんずんと洞窟の中に進んでいく。
不思議なことに洞窟の中はなぜか明るかった。
そのことが発覚したときに静が「ファンタジー万歳!」とか言っていた。
まあ、ファンタジーは置いといて不思議な洞窟もあるもんだなと思った。
「何にも無いね」
なぜか明るい洞窟内を興味深げに観察していた京谷がふとつぶやいた。
全員同じことを思っていたので誰も返事を返さなかったが。
洞窟の中に入ってから数分たったが何もなくただまっすぐに道が続いているだけだった。
洞窟の中は明るいと言うことだけはわかったのだがそれ以外は何も無いただただ奥へと穴だけが広がっていた。
「あ! 分かれ道」
何も無くてよほど暇だったのだろう弥生が珍しく声をうわずらせて前を指差す。
「いや、何も見えねえよ」
広がっているのはいまだ洞窟だけである。どんだけ視力いいんだよ。
それから十数分歩き続けてやっと弥生の言った分かれ道に着いた。
今まで一本道だった洞窟が三つに分かれている。
「みんな、どうする?」
京谷が通例どおり俺達に意見を求めてくる。
「今までどおりみんなで行動するよな?」
俺は安全性を考慮してみんなに問いを投げる。こんな不思議空間なのだ魔物はいなくても
「ええ、私はそのつもりだけどみんなはどうなの?」
静は賛成みたいだ。
「俺も賛成」
「僕も」
「私も」
「「あっしらは紅さんに賛成です」」
どうやら全員賛成のようなので俺の意見はとおった。
「で、問題はどこに行くんだ?」
「俺は右かな」
「僕は左がいいな」
「僕も左」
「私は真ん中ね」
「私は右」
「俺は真ん中」
「「あっしらは紅さんについていくっす」」
上から俺、京谷、佐藤、静香、弥生、紅、氷室、火神の順番だ。
「多数決で真ん中かな?」
京谷がおんびんにすませよとする。
「俺も真ん中でいいぞ」
ほかのやつらにも聞いたが別に意見が出たわけでもないので真ん中に行くことになった。
「なんにもないね」
数分後に京谷がつぶやいたのである。さっきも最初に言葉が出たのは京谷だったから意外に耐え性が無いのかもしれない。
「確かにな」
まあ、つぶやいたのは京谷だがそれは全員が思っていることである。真ん中の道に入ってから数分まったく持って何も無いのだ。あるのはどこまでも続く洞窟だけ。
「引き返すか?」
先頭を歩いていた紅が振り返り話しかけてくる。
「もうちょっと行きましょうよ」
「なんでだ静?」
「なんか、お宝がありそうなのよねえ」
「よし、みんな俺は引き返すに一票」
「なんでよ!」
珍しく静香が真剣な表情だったのでなんでかたずねてみたのだが正直残念だった。
「僕は、もうちょっと奥に行きたいな」
「僕はどっちでも良いよ」
「私は引き返すに一票」
「俺は奥に行くぞ」
「「あっしらは紅さんについていきます」」
紅の舎弟は正直意見を言う必要が無いと思うのだが。
「じゃあ、奥に進むで良いかな」
京谷がそういってみんなでおくに向かって歩き始める。
数分後。
「なにか扉みたいなものが置くにある」
弥生が何か見つけたみたいだ。正直全員何も見えていないだろうな。
でも、弥生が言ったらあるんだろう。
それから数分歩くと本当に扉みたいなものがあった。
縦五メートルで横二メートルくらいの大きな扉と言うより門という表現のほうがあっているだろうか。そんなものが今俺達の目の前に存在する。
「きったー!! なぞの扉きたぁー!!」
また静がハイテンションになってとてもウザイ。
「早速あけましょ!!」
ハイテンション静が場を取り仕切る。大きい扉なので全員でとりあえず押してみることに。
「じゃあ、いくよー」
京谷が掛け声をかける。
「「「「「「「「 せーの 」」」」」」」」
地味に八人もいることを今思い出した。
「うごかないね」
八人でどれだけ押してもびくともしない。
「じゃあ、引いてみましょう」
「「「「「「「「 せーの 」」」」」」」」
今度は八人で引いてみることにする。
ギ、ギギギギギギg
地面と扉がすれる音がして扉が動く。
ギギギギギギギギギギギ、ガチャ。
ガチャ? まだ扉が開き始めたばかりにガチャ?
嫌な予感がして耳を澄ます。
カチ、ガチャ、カチチ。
――――やばい
「おい、みんな! 扉を開くのをやめろ!」
ガチャリ。
遅かったぁ。
ガチン! 何かと何かが合わさる音がして俺が三パターン予想していた罠の一つが現実で起動されることになる。
「全員扉から離れろ!」
ガチャン!
俺が怒声を上げるのと扉の前方二mほどの地面がなくなるのはほぼ同時、いや俺のほうが少し早かった。
とっさに反応していた俺を含めた七人は安全圏にいる。だが
「静!!」
静香は舞い上がっていたためか垂直に落ちていきそうになっている。
「静ぅ!!」
俺は静に手を伸ばす。それを鈍っていても運動神経自体はいい静はつかむ。しかし鈍っている俺では彼女をこちらに引っ張りあげることはできない。だから、俺は、前に突っ込む力と腕の力を使い彼女を安全圏に引っ張り上げた。
「シュー!!」
入れ違いになっておちて行く俺を静は悲痛な表情でみる。罵り合っている俺達だが別に仲が悪いわけではない、正直言うと俺の一番の親友はあいつだ。
「がんばれよ」
そういって俺はそこの見えない奈落に落ちていった。




