第四話
草原を一通り見ても見たことも無い草や花が生えているだけなので俺達は待ちグループがいるところから一kmくらい離れたところにある森の中を探索することにした。
「紅さん、見てくださいこれ! 果物がなってますよ」
森の中に入って最初に声を上げたのは紅の舎弟A、名前を氷室 連次と言う。
森の中歩いて五分くらい木々が続いているだけだったのだが思わぬ男が最初の戦績をあげた。
「ほう、なんだあれ」
紅が連次の見つけた果物を遠巻きに見つめ声をだす、俺もその視線を追って視線を上げる。そこにあったのは林檎を大きくしたような果実だった。
「いやあれ大きくないか?」
明らかに遠近感がおかしい。ここから数十メートル離れているはずなのに普通サイズなのだ。
「ちょっと見に行ってみようか」
京谷の提案に全員が頷く。
木々の間を抜けて果物のなっている木に近づいてく。途中でガサガサという草木を掻き分ける音がしたので小動物などもいるんだろう、肉には困らないな。
「大きいねえ」
そう感想を漏らしたのは大人しそうな印象を受けた男子、名前を佐藤 元気と言う。
「これは採るの無理かなぁ」
難しい顔をして木を見る京谷。
「異世界の果物きたぁ!!!」
静のテンションがハイになっているが正直うるさい。
「静、静かにしろうるさいぞ」
「シューあんたねぇ! 異世界の果物よ! 初異世界の食べ物なのよ!」
「黙れキチガイ」
「まったキチガイっていったぁ!」
キーッと地団太を踏む静、昔は大人しめの子供だったのに今ではヒステリックキチガイだ。何を間違えた静香よ。
「キチガイにキチガイって言って何が悪いんだ?」
「悪いわ!」
「お、キチガイって認めるのか?」
「ち、違う。言葉のあやだよ!」
「焦るなキチガイ」
「もう、キチガイ言うなぁー」
最初は威勢がよかったがだんだんと涙目になり最後には涙を目にためて泣く寸前になっていた。
「はぁ、お前そんな泣き虫だったけ?」
しょうがなく静に歩み寄り学生服――黒色の学ラン――の胸ポケットからハンカチをだし涙を拭いてやる。
「だって、シューがキチガイキチガイ言うからぁ」
ぼろぼろと涙がこぼれる。
「あー、ごめんごめん。ほらお前いじるの楽しいからさぁ」
よしよしと頭をなでる。数分かけて慰めることに成功する。
「いちゃついてんじゃないわよ、馬鹿ップル。うらやましい」
弥生がなんか言っていたが聞こえなかった。
「で、どうするんだ。あの果実」
気を取り直して十数メートル先にある果実を見上げる。
「うーん。上るにしてもあの距離じゃなぁ」
そういって京谷は木の表面を軽くたたく。別段つるつるしているわけではないのだが十メートル先くらいまで枝が無いので上るのは難しいかもしれない。
あきらめるしかないかなと京谷がうすく笑う。
「あ、俺が上りましょうか紅さん」
その雰囲気をいい意味で壊してくれたのは紅の舎弟B、名前を火神 涼と言う。
「あ、火神くんのぼれるの?」
うれしそうにはにかみながら京谷が笑う。
「頼むぞ涼」
京谷を無視して紅が短く頼むと頷いて火神が木を上り始める。それに京谷だ少し笑顔を引きつらせるが幸い俺意外誰も気がついていなかった。別に気がつかなくてもよかったがクラスでボッチな俺には人間観察スキルがついているので気がついてしまった。後で京谷をフォローしとこう。
そんな京谷を無視して――気がついてないだけだと思うが――するすると木を登る火神。
「すごいな」
「まるでサルね」
「お猿さんだね」
なんだか泣いてから静が幼児退行している気がするが気のせいだろう。気のせいであって欲しい。
「お猿さんだー」
うん、気のせいじゃないな。なんでああなったんだ? 意味がわからん。だがあんな静は嫌だがんばって戻そう。変な決意をする俺だった。
そんなことを思っていると果実がなっているところあたりに火神がついたようだ。
「紅さーん。落としますよ」
果実をとって下に乱雑に放り投げてくる火神。それを危なげなく紅がキャッチする。
それにしても大きい果物だな。大体バスケットボールくらいあるんじゃないか?少なくとも直径三十センチはありそうな赤い果実だ。
「食べれそうか?」
俺がそう紅に聞くと紅はその果実に顔を近づけてにおいをかいだ。
「わからん」
だろうな。においかいだだけでわかるとかちょっとおかしい人だろ。
すると京谷が果実に顔を近づけてにおいをかいだ。
「これ食べれるよ」
「わかるのかよ!」
「ん? どうかしたの修也君?」
「なんでもない」
「シューのほうがうるさいじゃん!」
「黙れ静」
「私の扱いがひどーい!」
また泣き出しそうになるが慰めると幼児退行しそうなので今回は無視しよう。
すると弥生も果実に顔を近づけて鼻をスンスンと動かした。
「大丈夫そうね」
「お前ら本当にわかってんのかよ!」
こいつら何なんだ本当に………
「食べてみるか?」
紅の提案によりみんなで果実を食べることに。
「「「いただきまーす」」」
「………いただきます」
俺と京谷と静がいただきますと言うと紅が小さくいただきますと言う。ほかの人たちは無言で分けられた果実にかぶりついている。ちなみに連次がナイフを持っていたのでそれで切り分けた。
俺も少し遅れて赤い果実にかぶりつく。
瞬間、口の中に果汁が広がった。噛むとしゃりっと言う気持ちのいい感覚とともに甘い果汁が口の中に広がる。味的には触感がシャリッとした桃みたいな感じだ。
「うまいな」
しばし全員に無言の時間が流れて気がついたら自分の分の果実がなくなっていた。
「もう何個かとってもって帰るか」
京谷がもらしたつぶやきに全員が無言で肯定した。暫く果実採りにいそしみ二つの果実をとることができた。途中で黄色い野球ボールくらいの果実を見つけたが京谷と弥生いわく毒があるらしい。なんでわかるのあいつら………
気になって聞いてみたら。
「「においでわからない?」」
と二人に言われて俺のほうがおかしいのかと思ってしまった。
まあ、なんだかんだで果実を持ってもうちょっと奥へ進むことになった。
「食べ物は何とかなりそうだよな」
「長期滞在もできるよね」
「こんなよくわからないところに長くいたくないけどね」
俺と京谷が談笑しながら殿を勤めて真ん中に静と弥生、先頭に紅と氷室と火神の順番で奥へと進んで行く。
そこそこ進んでいるのだが相変わらず回りは巨木が囲んでいるだけで変化は無い。
「なにあれ?」
がここで変化が訪れる。
「どれ?」
弥生が指差した方向をみんなが見る。
「なんかあるか?」
「なにかあるかな?」
「なにかあるの?」
「「なんかあるんすか紅さん?」」
「いや、わからん」
弥生以外の全員が首をかしげる、なぜならそこにはあいも変わらず巨木があるだけだけだからだ。
「あそこに、洞窟があるの」
そういってふらふらと指差した方向に歩き出してしまう弥生。
「あ、ちょっと」
京谷が慌てて止めようとするがもう手が届かないところまで言ってしまった。
「しょうがない、みんなついて行くってことでいいかな?」
京谷が困ったようにため息をついて歩き出すので俺達もそれについていく。
十分ぐらいかけて歩いていくと弥生が言ったとおり洞窟が見えてきた。
「本当にあるし…」
半信半疑どころか弥生の妄言だと思っていたのでよくわからない敗北感が俺を襲う。
「ふふ、そういったでしょ」
勝ち誇ったように俺のほうを見てドヤ顔を見せてくるのでイラっとする。
「じゃあ、このなか見てみようか」




