第二話
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「どこなんだよ、ここ!」
誰かが言った。
俺、夏岬 修也は誰かのが言った怒声が頭に入ってこない程度には混乱していた。
教室で補習を受けていた、突然の発光、見たことも無い幻想的な草原にいた。
言葉に表すとたったこれだけのことだ。だがそれだけのことでも内容が十分におかしい。
「おい! いったい何なんだよ!」
「知らねえよ!」
「ここどこだよ!」
「俺が知るわけ無いだろ!」
幻想的な平原には怒声が飛び交っている。それをとめるものはここには誰もいない。ちらりと自分の前のほうに目を凝らしてみるとそこには気持ちよさそうに寝ている先生が。
「はぁ」
思わずため息が出てしまう。だがそのおかげで冷静になれた。
一度おおきく深呼吸。そして周りを見回す。
広大で幻想的な草原、言い合う生徒達、眠る先生。
うん、異常だね。
これからどうしようかと他人事のように考えていたところで
「きれいね」
リン、と隣で可憐な声が耳に響いた。
いきなり声をかけられて少し驚いたがすぐに冷静になったので隣に視線を向けた。
「えっと、波崎さんだっけ?」
そこにいたのは黒髪をぼっさぼさに伸ばしていている。確か同じクラスの波崎涼香がいた。確かと言ったのは決して修也の記憶力が悪いわけではない、むしろ良いほうだ。
ではなぜかと言うと修也はネットゲーム三昧の日々で現実のことなどあまり頭に残っていないし、そもそも波崎さんはあまり学校に来ていないし学校に来ていても「保健室登校」なるものを行っている生徒なので接点がまったく無いのだ。
「そうよ」
しどろもどろになりながらも問いを投げかけると鈴のような声で短く返事が返ってくる。
声は美しいのだだ彼女の容姿は不健康の一言である。
長い黒髪はつやが無く、伸びきった前髪は顔を覆い隠しているし、彼女が着ているセーラー服もへなへなとくたびれている。
まさに残念少女である。そんなことを考えていると前髪で顔を覆われているのになぜかにらまれているような感覚がしたので肩をすくめた。
「静かにしろ!」
怒声と混乱が入り乱れる、混沌と化していた幻想的な草原に大きな声が響いた。
全員の視線が声のした方向に向かう。
そこにいたのはめがねをかけた理知的な女だった。つやっつやな程よく伸びた黒髪、病弱なまでに白いすらりと伸びた手足、女子にしては長身で160cm後半くらいの背丈。スレンダー美人と言う形容がぴったりな黒いセーラー服に身を包んだ見知った女性である。
ある欠点が無ければとてもすばらしい女性である。
「魔物がよってきたらどうするんだ!」
ちなみに欠点は頭がわいていることである。
いきなり素っ頓狂なことを言い出した美女に怒声をあげているものたちがシーンと静まり返る。
彼女は俺にとっていわゆる幼馴染と言われるやつである、家が隣なのでよく昔は遊んだものだ。数年すると俺はネットゲームに彼女はネット小説にのめりこんで言ったのでまったく遊ばなくなったが。
「いきなり、何意味不明なこと言ってんだよ!」
頭の悪そうないかにも不良然とした茶髪の男が俺の幼馴染に食って掛かる。
「ふ、お前達上を見てみろ!」
不適に笑った後大仰な動作で上、空に向かって指を刺す彼女。その大仰な動作につられてみんなが上を見上げ。
そして絶句する。
「………太陽が、二つもある」
俺達が上を見上げ見ることができた空には赤い太陽と青い太陽が浮かんでいた。
隣にいる波崎さんも言葉を失っている。
「んな、馬鹿な」
本当に馬鹿らしいが太陽が二つ空に浮かんでいるのだ。
これには周りで馬鹿騒ぎしていたやつらも静まり返っている。
「お前ら確認したなら静かにしろ!」
そういって大声を張り上げる幼馴染の顔は俺の気のせいではなければうれしそうに笑っている。
「これでここがファンタジーな異世界と言うことがわかっただろ!」
ドヤ顔で宣言する幼馴染。普段なら一笑して相手にしない妄言だが、太陽が二つあるとなると。
「異世界なのかなぁ」
心底面倒くさいと言う気持ちをにじませながら俺はつぶやいた。
「ちょっとまて、異世界だなんて確証はあるのか!」
頭の悪そうな不良がもっともなことを言う。頭が割るそうなのに。
それに不本意ながら俺も冷静になる。確かに光の反射とかその辺の自然現象で太陽が二つ見えるのかもしれないし。
「ふ、確証だと?」
またもや不適に笑う幼馴染。
そんな幼馴染がとんでもないことを言いそうだなぁと思いつつ俺は傍観する。
「突然の発光といきなり知らない場所と二つの色違いの太陽と言ったら、異世界転移だろ!!!」
シーン。
再び沈黙が場を支配する。
俺は予想できていた発言だったので冷静を保っていた。そして冷静を保っていた俺が視界の端に捕らえたのはプルプルと震えている頭の悪そうな不良然とした男。
「――ッチ、まずいな」
駆け出す。ドヤ顔の幼馴染と周りの唖然としているやつらは気がついていないがおそらくあの男が次に行う行動は
「ふざけんな女ぁ!!」
暴力。
男は俺の幼馴染に対してこぶしを振り上げる。
俺はその無駄の多いテレフォンパンチが繰り出される前に男の腕をつかむみそのまま足払いをかけて転ばせる。これでも幼いころはいろいろとかじっていたのだよ。
「ふぎゃ」
無様な声を上げて転がる男。俺はその男を一瞥すると幼馴染のほうへ顔を向ける。
「大丈夫か、静」
「え、あ、えっと。シュー?」
いきなり殴られそうになったことと俺の登場により動揺している幼馴染、一条静香は普段、頭が沸いている残念で正直かかわりたくないほどのキチガイなのだが今だけ顔相応に普通の美女に見えなくも無い状態だ。
「おい、お前ら!」
幼馴染を暴漢から救うと言うかっこいいことをしてしまった俺は調子に乗って草原のやつらに声を向ける。
「この頭沸いてる女の言うことは聞かなくても良いが!」
「あんただってキチガイじゃない」
なにやら的確なツッコミが入ったが無視しておく。
「今が異常事態だということに変わりは無い!ここは一致団結してこれからのことを考えよう!」
調子に乗った俺は幻想的な草原で混乱している生徒15名とさっきから気持ちよさそうに寝ている先生と一緒にこれからのことを考えようとするのだった。




