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神救異世界転移魂 ~絶望に抗う意志がなければ目的を達することはできない~  作者: Riku
序編第三章 『想いを込めて贈って』
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序編第三章54 『今という時間を味わって』


 こうなったら、本人に聞くのが一番ね


 そう思って、ティアラはミファーの方へと振り向いて、


「ミファー、あんたリーファとどういう……」


「それでね! ティアラが大企画の」


「わぁわぁわぁわぁ! な、なんでもないわお母様!」


 いつの間にかアミリスとミファーが会話していた。


 危なかったぁ……


 危うくサプライズが頓挫するところだったと、ティアラは安堵に胸を撫で下ろす。いや、それはまだ早い。


「んん? ティアラ何か隠してるでしょ」


「へっ? な、何のことかしら」


「ふ~んわかった、聞かないでおく」


「ふぅ……」


 ティアラは今度こそ、安堵に胸を撫で下ろす。

 その様子にアミリスが「ふふっ」と笑ったのをみて、ティアラは少しだけ頬を赤らめた。それから視線をそらして、


「それでミファー聞きたいことが……」


「と、ティアラ、そろそろ冬祭り開催の時間じゃないか?」


「えっ? あっそうね。そろそろだわ」


 アドバンから言われて気づく。

 二人が来たのが七時十分くらいだったはずだ。となると、だいぶ七時半に近づいている。部屋に時計がないから今の時刻は厳密にはわからないが、


「移動時間も考えるとそろそろ出た方がいいと思う」


 そう言ってリーファがティアラの隣に来る。


「そ、そうね。じゃあみんな寮の外に出るわよ」


「ティアラちゃんしっかり者だねぇ」


「そ、そうですか?」


「そうだよぉ」


「うんうん」


 ミファーの母の肯定の後押しとして、アミリスのありえないほどの頷きが見えるが、それはこのまま見てると嬉しすぎてトリップしちゃうから目をそらす。


「よしじゃあ寮の外まで競争だ!」


「何言ってるのぉ? そんなことしたら危ないでしょぉ? だめぇ」


「ううぇ!? まぁ、それもそうだな。なら早歩きで競争だ!」


「地味じゃないそれぇ」


 年齢の割にテンションの高いミファー父に、ミファー母がツッコミを入れる様子はちょっと、というかだいぶ面白い。

 ティアラはちょっとばかし頬を緩めると、


「競争はしないで、この機会だから話しながら歩く方がいいと思うわ」


「ううぇ!? 競争しねぇのか?」「ううぇ!? 競争しないのぉ!?」


 この二人めっちゃ息ピッタリね……


 ミファーとミファー父の完全に息の合った驚愕の様子を前に、ティアラは意図せずジト目になる。


「よしじゃあ俺とミファーでやるかぁ!」


「うん!」


「歩幅考えてぇ?」


「じゃあ俺は逆立ちで」


「競争はしないぃ、わかったぁ?」


「はい……」


 ミファー母の言葉にシュンとする様子は、まるでミファーだ。

 恐らく、ミファーの性格の構成にはこの父親が関与している。


「それじゃあ行きましょうか」


 と、アドバンが言うと「よし、ミファー行くぞ」「うん!」とミファーとミファー父が会話を交わし、勢いよく部屋を飛び出す。

 それをみて「危ないよぉ」と言いながら追いかけるのはミファー母だ。その後ろを、落ち着いた面持ちのリーファがついていく。

 そして今度はティアラも部屋を出るのだが、その間際ティアラはチラリとベッドの方を見やるのだった。


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 寮の外へ出ると、寒い空気がティアラの体を震わせる。

 冬仕様の制服はしっかりと配慮されてはいるものの、スカートではあるため完璧に寒さを防ぐことはできないのだ。


「にしても雪、降ってないわね」


 今年、まだ雪が降っていない。いつもはもう少し早めに降り始めるのだが、


「このままだと……」


「このままだと?」


「わぁ! お母様、びっくりしたぁ」


「また隠し事?」


「ぇ、えぇ……」


 隠し事であることは、正直アミリスに隠すことは不可能に近いとティアラは思う。だからあくまで隠し事であることは認めた上で、その内容は明かさないスタイルで行こう。


「な、内緒よ」


「よし、ティアラ行くぞ!」


 と、ミファー父とミファー母との話を終え、ミファーたちと別れて来たアドバンがティアラに言う。


「えぇ」


「ティアラ待って!」


「ん、ミファー?」


「そ、そのね? ティアラ、四十五分後くらいに来て……行った方がいいよ!」


「それって、小企画の?」


「うん!」


「わかったわ。あたしもちょうどそのくらいに行こうと思ってたし」


「そ、そっかぁ」


 ちょっと安心したように胸を撫で下ろすミファーを前に、ティアラは思わず半目になる。

 こんな反応絶対何かサプライズがある。そうとしか思えない。


「それじゃあティアラ、またね!」


「えぇ」


 またねって言ってるし……いや、考えすぎかしら?


 そんなことを思いながら、ティアラはミファーと、その後ろにいるリーファに向けて手を振った。


「ふぅ、そろそろ大丈夫そうだね」


「あっミャミュ! なんで隠れたの?」


「それあたしも気になるわ」


「そ、そこは聞かないお約束……ね?」


 言いづらそうにするミャミュを前に、ティアラは一体ミファーたちに何をしたのだろうとジト目になる。


「まぁいいわ。それより冬祭りが始まったわ。行くわよみんな!」


「おっ、ティアラ楽しそうだな」


「だね」


「ちょっとティアラちゃん、走ったら危ないよ!」


 走り出すティアラをみて嬉しそうにするアミリスとアドバン、それに加えて焦った様子で追いかけてくるミャミュ。

 ティアラはその様子を眼の前に、あの手紙を書いてよかったと深くそう思った。


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


「みてみてお母様! これおいしそうよ!」


「ホントね、これ四つください」


「は、はい!」


 美味しそうな抹茶のアイスをみて食べたそうにするティアラを見ると、アミリスが即断即決で注文する。

 相手がアミリスということもあって、用意する側も緊張しているように思う。


「ぉ、お母様、あたし自分の分は払えるわ」


「こういう時くらいはいいの! ね?」


「……うぅ」


 やっぱりまだ、迷惑をかけることに対する抵抗感は拭えない。だが、ティアラはゆっくりと深呼吸して、


「じゃ、じゃあいっぱいわがまま言うわよ?」


「――! うん! いっぱい言って!」


「ァ、アドバン、ティアラちゃんがまたわがままを!」


「あぁ、これはマジですごいぞ」


「ぁ、あたしわがまま言ってるんだからね!?」


 これまであまりにもわがままを言わないで生きてきたからか、三人はあまりにも筋違いな反応を見せる。

 普通なら、子供のわがままに苦労するところなのだが、この三人はむしろわがままを聞いてあげたいという姿勢なのだ。


「な、ならあのお肉も食べたいわ」


「わかった。それならこれは後でにする?」


「と、溶けちゃうわよ」


 アイスを二人分受け取るアミリスとミャミュ、のアミリスの方がティアラの方を向いて提案してくる。


「大丈夫だ。ミャミュが二つ食べるから」


「そうそう、ミャミュが二つ食べるから」


「えぇ!? 私そんなに食べるの!?」


「ふふっ」


 アドバンがミャミュから受け取ったタイミングでとんでもないことを言い出し、それにアミリスが乗っかってミャミュが驚愕する。

 その様子に思わず頬を緩めるが、流石にそこまでのわがままはティアラの道理に反するというものだ。


「大丈夫よ。アイス先に食べるわ」


「ぃ、良いんだよティアラちゃん、わ、私がアイス二つ食べるから」


「声震えてるわよミャミュ」


 笑いながら言うと、ミャミュたちも笑う。

 この何気ない瞬間が、ティアラにはとても嬉しい。だってこれまでこんなことできなかったらから。何よりティアラ自身が、許せなかったから。

 ちょっとばかし、目に涙が滲んだ。


「ティアラ?」


「いや、その、嬉しくて」


「そう、なら来てよかった。ね? 二人」


「もちろん! ティアラちゃんが喜んでくれるならなんでもするよ? だって私専属メイドだもん」


「ミャミュ素が出てるぞ」


「えぇ!? ホ、ホントだ」


 笑いながら言うアドバンの一言で、ミャミュがいつものティアラに対する口調じゃなく、素の自分になっていることに気づく。


「きょ、今日くらいは素でいいわ。……だめかしら?」


「わかった!!」


「やった!」


 笑顔で、ティアラは喜ぶ。

 こんなに楽しいことがあるだなんて、思ってもみなかった。


「ほらティアラ、アイス」


「えぇ」


 言いながら、アミリスからアイスを受け取る。と、アイスを一口食べたミャミュが、


「んん! これおいしい!」


「おっ、マジだ!」


「うんうん、すごいおいしい。ほら、ティアラも食べてみて」


「う、うん」


 そう言って口を開けて、抹茶のアイスを口の中に招き入れる。

 とろりとした感触のアイスがティアラの舌に乗っかって、その瞬間にスッと溶けた。そして口の中になめらかな抹茶の味が広がっていく。


 ――その今という味を、ティアラは深く味わうのだった。

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