序編第三章55 『サプライズに間に合わせて』
等々100話目の投稿になりましたね!
こんなところでブックマークや評価をしていない人がいたら、やってもらえると執筆のエネルギーになります!
これからも頑張りますので、どうぞよろしく!
「……と、そろそろね」
放送塔にある魔法陣でできた時計を見やって、ティアラは小企画に行く時間が近づいていることを理解する。
ここまで四十分くらい見て回ったが、結構楽しめたのでティアラ的には満足している。あとは小企画に行って、そのあとサプライズをするとしよう。
「そろそろって?」
「わぁ! びっくりした」
隣にミャミュがしゃがみこんでいて、かけられた声にティアラはびっくりする。その驚きの声にアミリスが、「なになに? 何の話?」と反応して、
「ミファーたちが雇用された小企画があって、それに行ってほしいってミファーたちに言われてるのよ」
「どういう小企画だ?」
「球避けだったはずよ」
「球避けか、面白そうだな。っていうか、あれじゃねぇか?」
「ん?」
アドバンが指さした方向へと振り向くと、球避けの小企画の舞台付近に人だかりができているのがわかった。
ティアラは自分たちがいつの間にか学園付近まで来ていたことに遅れて気づく。
そして、いると思っていなかった人物が、目に入って――、
「ちょっと待って! なんでミファーたちがいるのよ!」
「ちょっとティアラちゃん!? 走ったら危ないよ!」
「まぁいいじゃねぇか、こんな時くらい」
「うぅんダメだよアドバン! ティアラちゃんが怪我したらせっかくの冬祭りが悲しくなっちゃう!」
そう言って、ミャミュがミファーたちのもとへ向かうティアラの背中を追うようにして走り出す。
その光景の矛盾にアドバンが苦笑するが、そんなながらもアミリスに頷きかけて、二人を追って駆け出すのだった。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「来たのかティアラっ!」
「マ、マレ、なんでミファーとリーファが働いてるのよ! それにミファーが実況してるし……」
「聞いていないのかっ! 二人は特別雇用者だから当然だぞっ!」
「――。――――。へっ?」
「マレディクトゥムの言う通りだよ、ティアラ」
「リ、リーファ」
近くでミファーを見守っていたリーファが、マレディクトゥムの隣に並び立って言う。
「じゃ、じゃあずっと隠してたってこと?」
「うん、ミファーがそうしようって」
「やっぱりミファーなのね……」
「ふぅ、やっと追いついた。ティアラちゃん速いよ」
「そ、そうかしら?」
「それでティアラ、これやるのか?」
と、息をあげずにやってきたアドバンが聞いてくる。その隣にアミリスも立っていた。同様に息が上がっていないからびっくりだ。
そしてアドバンの質問に対する答えだが、せっかく小企画に来たのだから、
「どうせならやってみたいわ」
「それならルールを説明するぞ!」
「頼むわマレ」
「その子もティアラのお友達?」
そこでアミリスが小首を傾げる。
その質問にティアラはちょっと恥ずかしそうにしながら、
「ま、まぁそうよ……」
「リーファ、ティアラの頬が赤いのはなぜだっ!」
「うるさいわね!」
マレディクトゥムの指摘を受けて肥大化する羞恥心を、ティアラは大きな声を出してどうにかかき消す。
せっかく友達という判定をしたというのにこんなことをされたら溜まったもんじゃない。
いやそれとも、あたしだけ思ってるのかしら……?
ちょっと不安になるが、冬祭りに悲しい妄想は似合わないとティアラはどうにか切り替えた。
「それじゃあマレ、ルール説明頼むわ!」
「球を避けるんだぞっ! 球に当たった回数がゼロで賞金をもらえるっ! 一回当たったら大企画の割引券、二で他の小企画への割引券、三以上で屋台の割引券がもらえるようになっているぞっ!」
「なるほど、面白い仕組みね、誰が考えたの?」
「リーファだっ!」
「なるほど、道理で」
「んぅ……」
マレディクトゥムの隣で俯くリーファ。たぶんあの顔を下から覗き込めで綺麗な桃色が目に入るだろうとティアラはちょっとニヤニヤする。
「それで、一回いくらなのよ」
「銅貨三枚だぞっ! ちなみに賞金は獲得されるごとに上昇するっ! これもリーファが考えたんだっ!」
「言わなくていい……」
恥ずかしそうに言うリーファをみて、ティアラのニヤニヤに拍車がかかる。
「それとだなっ! この小企画では剣が使えるぞっ!」
「えっ、あたし剣部屋にあるわ……」
「なくてもいいぞっ!」
「いや、それなら俺が取ってくる」
顔を俯かせたティアラをみて、アドバンがいち早く申し出る。
ティアラはその発言に思わず振り返って、
「いや、頑張れば魔法でここまで移動させられるかもしれないわ」
「……へ? ティアラ、それ本気で言ってる? お父さんに持ってきてもらったら? それかお母さんが生成しようか?」
「うぅん、どうせ使うならお母様からもらったあの剣がいいもの。それにあたし、出た時の部屋の状態丸暗記してるのよ。人がいるところを経由するならあたしにも無理だけど、窓から出して空を経由して移動させればいけるわ。お母様も、同じ条件ならできるでしょ?」
「そっか、人がいるところを通らせるなら人の動きも想像する必要があるけど、人がいない場所を通るならその場所の状態さえ暗記してればいけるもんね。けどそんな無茶苦茶なこと、記憶力が普通じゃないティアラにしかできないよ」
「ふふん」
アミリスに言われたことが嬉しくて、ティアラはつい胸を張った。
「けどそれ、窓開ける動作必要にならねぇかティアラ」
「完璧に暗記してるんだもの。窓も移動魔法で開けるわ」
「……ティアラってば恐ろしい子だ」
ティアラの発言にアミリスとアドバンがジト目になった。ちなみにミャミュはというと、ちんぷんかんぷんといった様子でティアラを見ていた。
リーファはいつの間にかミファーの補佐に向かっていて、マレディクトゥムは何も言わずティアラを見つめている。
「じゃあ、やるわね」
そう言ってティアラは目をつむる。
その瞬間、気になっていなかった周囲の騒がしい音がティアラの鼓膜を震わせて、想像の邪魔をしてくる。
だからティアラは二度深い深呼吸をして、集中力を高めた。
剣は魔法が効かない物質で作られているから、意図せず変形させたりすることはないから安心だが、落としてしまったら壊れてしまう。
移動魔法が剣じゃなく風に干渉する魔法で助かった。今から剣を歩いて取りに行ったりでもしたら、サプライズに間に合わない。
三度目の深呼吸。
――そして、ティアラは魔法を発動させた。




