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神救異世界転移魂 ~絶望に抗う意志がなければ目的を達することはできない~  作者: Riku
序編第三章 『想いを込めて贈って』
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序編第三章56 『納得の行かない形』


 ――想像を、開始する。 


 まず、窓を開けて……


 内心に呟きながら、ティアラは自室の窓のロックが開くように想像し、次いで今度は窓が開くように想像する。

 それから机に立てかけられている剣を宙に浮かせ、窓の外へ出して、


 浮かせたまま、窓を閉める……


 ロックを閉めるのは流石にリスクがあるから、あとで手動でやるとしよう。

 ティアラはそのまま剣を自分たちの方向へと加速させる。大通りの上を通り抜け、ティアラのところまで、


「来たわね」


 咄嗟に寮の方向へ振り向くと、そこにティアラの剣が見えた。

 ティアラはその剣を自分の方へと加速させて、向かってきたそれをキャッチする。


「ほ、ほんとにできちゃった……」


 アミリスがポカンと口を開けたまま動かなくなってしまった。

 ちなみにアドバンは苦笑いしていて、ミャミュはすごさがよくわかっていないのか「おぉ」と歓声を上げている。

 ティアラはふと会場の方を見やって、それから後ろへ振り向いて言う。


「じゃああたし、やってくるわ」


「頑張ってティアラちゃん」


「うんうん! 頑張ってティアラ」


「行ってこい!」


「えぇ!」


 ミャミュ、アミリス、アドバンの順に応援をもらえば、ティアラの元気はカンストどころか上限を突破する。

 その勢いでティアラは会場の方へと走り出す。近づくにつれて、ミファーの実況が耳に入った。


「わぁ! すごい! あっでも当たっちゃった! ゲーム終了! 三回当たったから屋台の割引券がもらえるよぉ!」


「実況なのかしらあれ……」


 実況というよりミファーのリアクション大会だ。

 想像通りミファーには上手い実況などできなかったようだ。だがそれでもその無邪気な様子が、一年生が頑張っているという健気さを感じさせたり、緊張感をほぐすのに役立っているように思う。


「ミファーならではの相乗効果ね。にしてもここ、なんか暖かいわね……なんでかしら?」


 そんなことを不思議がっていると、


「じゃあ次の挑戦者! だれだれぇ!」


 ティアラはチラリと先に並んでいる人がいないのを確認して、それから「あたしよ!」と声を上げた。

 その声に、ミファーがパァッと満面の笑みを浮かべて、


「ティアラ? ティアラティアラティアラだぁ!!」


「そんな連呼するんじゃないわよ!」


 そんなに喜ばれると、周りの目もあってかなり気恥ずかしいというものだ。ティアラは咄嗟に叫んでしまう。

 そしてしまったと思った。こんなことを言ったらミファーなら、


「ごめんなさい……」


 やっぱりだ。


「ぁ、いやそういうつもりじゃないわ。ほらミファー、実況してくれるんでしょ?」


「――! うん! するぅ!」


 ティアラがそう言うと、ミファーはまたパァッと綺麗な笑みを浮かべた。それからティアラに「それじゃあティアラぁ! 舞台に上がって!」と指示を出す。

 ティアラはその指示に従って、舞台に上がった。


「魔法陣を発動させたら始まるよぉ!」


「わかったわ」


 前にある魔法陣を見て、ティアラはゆっくりと歩き出す。

 正面までくると一度止まって、ティアラは剣を鞘から抜いて、


「ミファー、これ頼むわ」


「ん! わかった!」


 鞘を渡すとミファーが預かってくれる。

 それをみて頬を緩めつつ、ティアラは魔法陣の方へ向き直る。


「じゃあ、行くわ!」


 宣言と同時に、魔法陣にソースを集めた手をかざす。


「――――ッッ!」


「おぉ! ティアラ斬ったぁ!」


 正面、突然球体状の水が生成され、ティアラの顔面に向かって加速する。ティアラはそれをどうにか剣で受け止める。

 その瞬間、水が綺麗に姿を消す。正確には、大気中のソースに還元されるのを感じた。


「なるほど、切っちゃえばなくなるのね。っと」


 斜め右上から来た球を、ティアラは左にバックステップして避ける。と、その瞬間、頭上に球が出現し、落下する。


「危なッ! 真冬に水は洒落にならないわ!」


 もう一度避けると、床に落ちると同時にまた大気中のソースに還元される。さっき避けた球も還元されているのをみると、床に落ちる、斬る、舞台の外にはみ出すと還元されるのだろう。


「ティアラまた避けたぁ! すごい! ミファーこんなにティアラが避けられるって思ってなかったぁ!」


「はぁ!? このくらい避けられるわよ!」


「ティアラ後ろ!」


「わぁ!」


 今度は右にバックステップして交わす。


「あぁっ! 手助けしちゃったぁ!」


「それよりこれ、追跡してる?」


「うぅん、ティアラが全部引っかかってるだけ」


「あたしそんなに運悪いの!?」


 今知らされた衝撃の事実に、ティアラは思わず驚愕する。


「第一関門は十五発で一発ずつ出るよ! 第二関門は四十五発で三個同時! そして第三関門は七十五発五個同時だよぉ!」


「第二関門でも厳しいと思うんだけ、どッ!」


 さっきからティアラは引っかり続けている。

 今でだいたい八発くらいだ。少しずつペースが上がり始める。


「すごい! ティアラほぼ全部に引っかかってるけど全部避けてるぅ!」


「前半いらないわよ!」


 なんでこんなに引っかかるのよ!


「ちょっ、速い。速いわよぉ!」


「ティアラ! そろそろ第二関門! あと五……四……三……二……一」


「んんっ!?」


 同時に出る球の寮が一つから二つに増えた。

 ティアラは慌てて剣を構えるが、背後で水の音がした。

 ――二つじゃない。三つだ。


「――――ッッ!」


 咄嗟に前にバックステップすると頭上に球が生成され、左右からも球が向かってきている。

 ティアラは咄嗟に正面にスライディングして、前と左右から来る球を避ける。

 すると次の瞬間、頭上から球が降ってきて、右斜め上からもティアラを狙ってくている。もう一つはティアラとは無関係の方へ飛んでるからまだマシだ。


「――――ッッ!」


 手に集めるソース量を増やし、剣の魔法陣の効果を強力にしてティアラは軽くなった刃を頭上へ振り上げ球を斬ると、そのままの勢いで右斜め上からの球も斬りつける。

 ミファーが後ろで何か言ってるが、もうそれを聞いている余裕はなかった。

 引き続け両サイドから球がティアラに向かって来ているのがわかる。さらに後ろからちょっと低めに飛んで来ていた。

 ――このままじゃ、間に合わない。


 お母様……っ


 ちょうど正面にいるアミリスと目が合った。

 せっかくアミリスに良いところを見せる機会なのだ。このまま良い結果を出せずに終わるのは嫌だ。

 そう、思って――、


「ううぇ!!? なにそれぇ!?」


 ティアラは咄嗟にバク転を行った。

 できる確証など一切なかった。だけど、なぜか体は軽かった。

 後ろに体を反らし、そのままの勢いで片手で地面を蹴って一回転して着地する。


「わ、わぁ! ティアラすごい! なにそれ、なにそれぇ!」


『ティアラ今、バク転したの!?』


 バク転って何よ……


 ティアのよくわからないワードに引っかかりつつも、ティアラは引き続き右斜め上と左斜め下から飛んでくる球を剣で斬りつけ、最後に頭上に球が出た瞬間に剣先でついて壊す。


「ぁ、あたし、こんなに運動神経良かったかしら……?」


 ちょっとばかし違和感があった。

 ティアラはこんなに運動神経が良かった覚えはない。

 この前の剣術の授業でだって、学校で貸し出される木剣が重くて剣に振り回されていたくらいなのだ。

 それなのに今は、こんなことを考えながらも球を斬りつけ、アクロバティックな動きで躱し続けることができている。


「考えてみれば、あたしってあの二人の娘だものね」


 あの二人――アミリスとアドバンはかなり身体能力が高い。だとすれば、その娘のティアラが同じように身体能力が高いとしても必然ではある。

 違和感は、なぜそれが今になって発覚したかという点だが、


「……わからないわね」


 単に気づいてなかったという可能性もあるが、ティアラにはとてもそうだとは思えなくて、


「わぁ!」


「すごいすごいすごい! ティアラ今のも避けたぁ!」


 正面から猛スピードで飛んできた球を、ティアラは紙一重のところで避けたが、そのままの勢いで倒れそうになってしまう。ティアラはどうにか手をつくが、勢いが足りずバク転にならない。

 逆立ちになった瞬間、ティアラのスカートが重力に従おうとして、


「ひゃあ!」


 慌てて左手で掴んだ。

 ――そう、左手だ。右手には剣があって、


 ちょっと待ってこれ……


「わぁ!! へぐっ!」


「あぁ! ティアラ大丈夫ぅ!?」


「んんん!?」


 頭から落ちるのだけはどうにか避けられたが、ティアラは背中を地面に強打した。どうにか立ち直そうと顔を上げたら、正面から球が向かって来ていて、ティアラの顔面に直撃する。


 これ、温かいのね……


「ミファー、棄権! 棄権するわ、んんっ!?」


 連続で正面から追加で二つ飛んできて顔面に直撃する。

 絶対ここの弾道を考えたのはミファーだ。


「わ、わかった!」


 ミファーは慌てて会場に上がり、魔法陣に手をかざして発動させる。すると、球の生成が止まった。


「ティアラティアラ、大丈夫ぅ?」


「大丈夫じゃないわ……。痛い……」


 言いながらティアラは腰を押さえる。

 そんなティアラを見ていたミファーが「あっ」と声を上げた。


「ティアラ鼻血出てる」


「え?」


 そんなこんなで、ティアラの挑戦はそんな納得の行かない形で終焉を迎えるのだった。

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