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神救異世界転移魂 ~絶望に抗う意志がなければ目的を達することはできない~  作者: Riku
序編第三章 『想いを込めて贈って』
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序編第三章53 『謎に満ち満ちて』


 目の前に三人がいる。

 その事実に、ティアラの体は硬直した。

 あのわがままが原因で嫌いになられていたらという不安も、いつの間にかそうなっていることが確定しているかのように肥大化していた。

 ティアラは震えたままゆっくりと顔を上げて、


「ご、ごめんなさっ」


「かわいい!」


「……へ?」


「ねぇみてみて、ティアラ冬服だよ!」


「そうだな、似合ってる」


「そ、そうかしら?」


「うん!」


 ……何よこれ、全然大丈夫じゃない


 笑顔で笑っているアミリスとアドバンの姿が視界に映っている。全然、嫌われてなんかいなかった。

 ティアラは急に、今までの葛藤が馬鹿らしくなってくる。

 そうなのだ。わがままを聞いてもらったなら、ごめんなさいじゃないのだ。


「来てくれてありがと」


「ティアラのためだから当然だよ。ね、アドバン」


「そうだ」


「……それより、さっきからなんでお母様の後ろに隠れてるのよ」


「だってよ?」


「な、名前呼ばないで」


「何言ってるのよ……」


 アミリスの後ろで体を縮めるミャミュの様子に、ティアラはジト目になってしまう。そのまま軽く辺りを見渡そうとして、


 ――隣にミファーがいた。


「わぁ!」


「わぁ!」


 ティアラが驚きの声を上げると、ミファーがそれに驚く。

 驚かされたのはこっちだというのに驚かれるのは何とも納得がいかないが、ティアラはひとまず胸に手をあててバクバクする心臓を落ち着かせる。


「び、びっくりしたじゃないミファー……」


「ミファーの方がびっくりしたよぉ!」


「…………」


 反論というよりマウントに近いニュアンスだった。

 ティアラはそんなミファーの様子に半目になって、それから頬を緩める。


「……? なんでさっきからミャ……あたしの……メイドばっか見てるのよ」


 ミャミュの名前を呼ばないでという発言を思い出して、ティアラはどうにか言い留まり、言い換える。

 いつか自分の専属メイドがミャミュであることを言った気がしたから、そこも注意した。


「んん? んん……」


 ミファーが何も反応しないから、優しくチョップする。


「なぁ!」


「こっち見なさい」


「ふふっ、仲が良いんだね」


「うん! ミファーたち仲良いよぉ!」


 と、その時またコンコンコンとノック音が響き渡る。


「来たぁ!」


 その瞬間、ミファーが立ち上がる。それからダダダダダッと地面を蹴って扉へ向かい、ドアを開け放つと同時に向こうへ体を飛び込ませた。


「お母さん!」


「わぁわぁわぁ、びっくりしたぁ。ダメだよぉミファー、急に出てきたら驚くでしょぉ?」


「ごめんなさい、お母さんに会いたくて……」


「まぁまぁいいじゃねぇか。久しぶりの再会なんだから楽しもうぜ?」


「ミファーの、お母さんとお父さん?」


 飛び込んだミファーを、水色のシニヨンヘアの女性が受け止めた。女性の背丈はミャミュより二センチ低いくらいだろうか。年齢は三十代くらいに見える。

 そしてその隣に白っぽい紫色のオールバックを掻き上げる男の姿があった。身長は百八十くらいに思えた。こっちも外見は三十代くらいだ。

 ティアラの言葉に二人が反応して、女性の淡い水色の瞳と、男の透き通った紫色の瞳がこちらをみた。

 ティアラはそれを受けてちょっと体が固まってしまうが、


「おぉ、あなたが話に聞いてたティアラちゃんかなぁ? その二人があなたのお母さんとお父さん?」


「は、はい」


 そう言いながら、ティアラもアミリスたちの方を見やる。


 あれ? ミャミュどこいったのよ……


 アミリスの後ろに隠れていたはずのミャミュの姿がない。

 そんなことを考えているうちに、 アミリスとアドバンがミファーの両親と会話を始める。

 それを軽く一瞥すると、ティアラはミャミュを探しに自分の机のところまで行くと、


「そ、そんなところで何してるのよ……」


「ティ、ティアラちゃん、しーっ」


 と、小声で言いながら口の前に人差し指を立てるミャミュの様子に、ティアラは何をしているのだろうかと小首を傾げる。

 そんなミャミュは床に這いつくばる形で、ティアラのベッドの段差に体を隠していた。それはまるで悪いことをした子供が親から隠れるかのような絵面だ。

 ティアラは前にしゃがみ込んで、ミャミュに合わせて小声で応じる。


「何してるのよ」


「ちょっ、ちょっと今出るのは都合が悪いの……」


 その目は、悲しそうだった。

 罪悪感に満ちていることは、すぐに気づいた。だってティアラは、それを何度も味わっているから。

 ――わからない、わけがなかった。


「ミファーのお母さんたちに何かしたの?」


「そういう感じじゃ……いや、した、したんだけど……」


 言いづらそうね……


 言い淀むミャミュを前に、ティアラはちょっとばかし気を聞かせて、


「まぁいいわ。ミャミュのことは何も言わなければいいのよね? あとで合流するのよ?」


「うん、ありがとティアラちゃん。後ろから追いかけるから」


「えぇ」


 頷くと、ティアラは立ち上がる。

 それからアミリスたちのもとへ戻ると、アドバンがミファーの母と話していた。

 ティアラに気づいたアミリスが、軽くしゃがんで、


「ねぇティアラ、ミャミュどうしたって?」


「今出るのは都合が悪いらしいわ」


「ふ~ん、わかった」


 どうやら、アミリスも隠すつもりらしい。ニュアンス的にたぶんそうだ。


「お、リーファちゃんも元気にしてたか?」


 と、そこでアドバンとミファーの母が会話している隙に、ミファーの父がリーファに話しかける。

 やっぱり、ミファーとリーファは入学前からの仲なのだろう。ミファーの父が知っているとなるとかなりの仲だったと思えるが、


「よくやってるか? 何か困ったことがあったら言ってな?」


「ん?」


 その言葉は、自分の娘の友達に向けるようなものじゃなかった。

 だってそうだろう。普通、自分の娘の友達に『何か困ったことがあったら言ってな?』などとは言わないはずだ。

 困っていたら助ける、くらいはするかもしれないが、それを積極的に聞いて対処することも断言するのは少々不自然だ。


 そ、それともまさか姉妹だったり?


 それなら心配するのも納得できる。が、それだとミファーがその事実を今の今まで話していないことが矛盾する。

 ミファーの性格なら、そんな情報初対面で伝えているだろう。それにミファーはリーファのことを友達と言っていた気もする。いやそれともティアラの聞き間違いだったのだろうか。いやそれ以前に本当に言っていたのかもわからない。

 連続する謎がティアラの頭を悩まして、混乱を極めるのだった。

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