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神救異世界転移魂 ~絶望に抗う意志がなければ目的を達することはできない~  作者: Riku
序編第三章 『想いを込めて贈って』
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序編第三章51 『明日に期待を込めて』


 冬祭りまでの残りの三日間は驚くほどあっという間に過ぎていった。

 そして今、二十三日の夕方、ティアラはちょうど最後の予行演習を終え、寮に帰ってきた。


「ティアラぁ!!」


「わぁ! な、なによ」


 自室に入ると同時にミファーが胸に飛び込んできて、ティアラは目を見開いたまま質問する。


「ティアラティアラ! 明日冬祭りだよ! 冬祭りなんだよぉ!!」


「そ、それは知ってるわよ。リーファ、ミファーどうしたの?」


「冬祭りが明日だから気分が高揚してるの」


「あぁなるほど……ミファーね」


「同感。ミファーだよね」


「……今ミファーのこと悪くゆったぁ?」


「新しいのが出たわね……!」


 いつもは『今ミファーのこと悪くゆったぁ!?』なのが今は『今ミファーのこと悪くゆったぁ?』だった。

 新たなバリエーションが増えたことに、ティアラはちょっと嬉しそうにする。ミファーの反応は楽しみの一つだ。


「それにしても、明日冬祭りってだけでよくそこまで気分が上がるわね。雇用の仕事初日を思い出すわ」


「そう言えば、あの時の朝もミファーうるさかった」


「うるさかったのぉ!!?」


「うるさくはあったわ」


「なんでぇえ!?」


「ほら今のもうるさいもの」


「ううぇ!!?」


 けどまぁ、ミファーからうるささを取るのはかわいらしさ半減どころじゃないから、うるさいままでいいとティアラは思うが。


「でもそうよね、明日なんだものね」


 そう考えてみれば、ティアラも少々テンションが上がってくる。

 だがミファーに『明日冬祭りってだけでよくそこまで気分が上がるわね』などと言った手前バレるわけにはいかなくて、ティアラは必死に装う。


「リーファは楽しみ?」


「まぁ……」


 ちょっと照れたように言うリーファは、まさしくかわいい。

 だけどすぐにいつのも冷静さに満ちた表情に戻って、ティアラは残念とばかりに目を伏せる。


「ティアラ?」


 そのティアラの様子にリーファが眉を顰めた。が、それを遮るようにミファーが、


「ねぇねぇねぇティアラティアラティアラ!」


「はいはいはいなによなによなによ」


「真似されたぁ!」


「いいからはやく言いなさいよ」


「明日、ちゃんとミファーたちの小企画来てねぇ?」


「えぇ、ちゃんと予定してあるわよ。結構ギリギリになっちゃうけど……」


 ティアから提案されたサプライズの予定を、ティアラが肉付けした。

 その予定通りに行ったとしてもギリギリ間に合うと言えるか言えないかくらいなのだ。

 当日にアミリスに勘付かれないように立ち回らなければと、ティアラはちょっと早めの緊張感を味わう。


「それにしてもミファー何回も言うわね。そんなに来てほしい理由でもあるの?」


「ギクッ!」


 自分で擬音を出すやついるのね……


 ミファーの肩を震わせた声を聞いて、ティアラはジト目になって内心に呟く。

 このミファーの様子を見る限り、何かしらティアラに小企画に来てほしい理由があるというのはほぼ確定だが。

 そんなことを思いながらミファーを見つめていると、ミファーはどうしようとばかりに目をあちこちに彷徨わせる。


「まぁいいわ。明日行けばいいのよね?」


「――! うん!」


 ティアラが言及をやめた途端、ミファーがわかりやすくパァッと表情を明るくする。

 その瞬間、ティアラの疑念が確信に変わった。


「リーファとミファーは明日どうするの?」


「えっとねぇ! 一緒に回るよ! ミファーのお母さんとお父さんも来るし!」


 その言葉を聞いて、ティアラは瞬間的にリーファを見やった。なぜかリーファだけ、両親を呼んでいないのだ。

 思えば、リーファとミファーは最初から仲が良かった。だとしたら、入学前から交流があったことになるが。


 ミファーに聞いたら教えてくれるかしら?


 そんなことを内心に響かせるが、ミファーの性格なら話しそうだし話さなそうでもある。

 仮にティアラに話さないという選択を取るとしたら、リーファのプライバシーを守るという選択を取った時だ。だがそれはティアラにだけ内緒、つまり仲間外れということにもなりえる。

 だがその仲間外れを防ぐためにリーファのプライバシーを傷つけたら、それこそミファーの一番嫌がる展開、ティアラとリーファの間に亀裂が走ることになってしまう。

 仮に聞いたとしてミファーがどっちを取るか正確にはわからないが、ティアラの知るミファーならきっと、リーファのプライバシーを守る方に傾くのではないかと思う。

 何となく、謝りながら言えない、と言うミファーが頭に浮かんだ。


「ティアラ?」


「わぁ!」


 突然ミファーの顔が目の前にあって、ティアラは大きく仰け反って尻もちをつく。


「何するのよミファー!」


「ご、ごめんなさい……」


「……まぁいいわ。毎回だけど、あんたびっくりさせるの上手いわよね」


「ほんとぉ?」


「……ミファー、今のは皮肉だと思う」


 と、目をキラキラと輝かせたミファーにリーファが真実を打ち明ける。直後、「ううぇ!?」という声が自室に木霊した。


「それと、あたし今日はちょっと早く寝るわ」


「なんでぇ?」


「この前あたし倒れたでしょ? その時にメルティアさんにちゃんと寝るって約束したのよ。それと、もう一人にも……」


「もう一人?」


「な、何でもないわ! とにかくあたしは今日早く寝るの、いいわね!」


「うん!」


 疑っているのかいないのか、ティアラの割り切れとばかりの発言に、ミファーが見事に割り切って頷いた。

 そんなミファーをジト目で見ていると、リーファがこちらをじーっと見ていて、


「リーファ? どうかしたの?」


「ん、うぅん、何でもない」


「そう?」


 ティアラはよくわからないとばかりに小首を傾げて、


 まさか、ティアのことバレてたりとかしないわよね……


 内心で言いながらちょっと目を細めて、ティアラは若干身構える。

 ティアラの見る限り、リーファはミファーと比べるまでもなくかなり鋭い。だから、ティアの存在に勘づいていても不思議はないのだ。

 もちろん、仮にリーファやミファーがティアの存在を知ったとしても、二人がティアラのお願いを断ってアミリスやアドバンにその情報を伝えるとは思っていない。

 だがそれでもできる限り、情報漏洩を防ぐ姿勢は必要なのだ。万が一知れたら、ティアがどうなるのかわからないから。

 それに特にミファーだ。ミファーは無理だ。絶対無理だ。仮に今知ったとしたら、明日のアミリスとの開口一番で意図せず情報を漏らすだろう。しかも、隠そうと頑張った上でだ。

 そんなことを考えているとリーファと話していたミファーがティアラの方へ振り向いて、


「ねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇティアラティアラぁ!」


「ねぇが多いわね……なによ」


「明日楽しみぃ?」


「んっ……」


 まさか、自分も聞かれるとは思っていなかった。

 さっきミファーのテンションの上がりようを指摘したばかりだから、それを肯定するのはやや抵抗があるが、


「ティアラぁ?」


 このキラキラと輝く瞳と満面の笑みを見れば、そんな抵抗は一瞬で消え去った。


「えぇ、楽しみよ」


 そう言うと、「やったぁ!」というミファーの嬉しそうな声が、ティアラたちの部屋中に響き渡った。

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