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神救異世界転移魂 ~絶望に抗う意志がなければ目的を達することはできない~  作者: Riku
序編第三章 『想いを込めて贈って』
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序編第三章35 『さぷらいず』


「あっティアラぁ!」


「ミ、ミファーとリーファ、帰ってたのね……」


「なんかティアラ顔赤くない?」


「んっ!?」


 不思議そうな面持ちで小首を傾げたミファーが聞いてきて、ティアラはビクリと肩を震わせる。

 それから「そ、そんなことないわよ」と言って話を終わらせて、


「それより、飾り付け雇用の仕事が今日で終わったわ」


「わぁ! ティアラお疲れ様ぁ!」


「えぇ」


「給料日はいつ頃なの?」


 と、顔を上げたリーファから質問が飛んできて、ティアラはニヤリとした笑み浮かべる。


「明日よ」


「ううぇ!?」


「ミファーうるさい」


「ごめんなさい……」


「ふふっ」


 いつも通りのクダリを視界に収めながら、ティアラは視線を落としたミファーにそっと近づいて、頭を撫でてやる。


「あとはそうね、二十日に大企画の予行演習があるから、あたしはそれに向けて頑張ろうかしらね」


「予行演習!」


「そうよ、予行演習! よ!」


 言いながら立ち上がると、ティアラは自分の机まで歩いて、椅子を引いて腰を下ろす。

 引き出しを引いて、十枚ほどの紙を取り出す。――イラディスがティアラのために書いてくれた司会と実況の内容が書いている。

 大企画の詳しいルールは当日に明かされる予定だから、二人にはこの紙は見ないようにと言ってある。この情報が露呈したら大問題だ。

 だからティアラができる練習というのも口パクするくらいのものだ。


「――――」


「ねぇティアラ」


「ん、何よリーファ」


 口パクで練習していると、リーファから声がかかって、ティアラは後ろを振り向く。


「ティアラは冬祭りに誰か招待したりしないの?」


「招待?」


「あれぇ? ティアラ知らないのぉ? 生徒が招待した人に限って学園に呼べるんだよ」


「――――」


 思わぬ情報にティアラは口がポカンと開いたまま硬直する。

 それをみたミファーが、「ティアラ? わぁ! ねぇねぇリーファ、ティアラ動かなくなっちゃった」などと言うのが耳に届くが、ティアラは気にせずに情報の処理に全集中した。


「……それってつまり、お母様たちを冬祭りに呼べるってこと?」


「そおだよぉ!!」


「――――」


 再び、ティアラは口をポカンと開けたまま硬直する。

 それをみたミファーが、「わぁ! ねぇねぇねぇリーファリーファ、ティアラまた動かなくなったよぉ」などと言っているのが聞こえて、


「ど、どうやって招待するの?」


「えっとねぇ、どおやるんだっけリーファ」


「……自分の組の担当の先生から招待状をもらって、それを呼びたい人に渡す。基本的には手紙に同封する」


 説明をリーファに投げたミファーに呆れた目をしつつも、ティアラの方へ向き直ったリーファが説明してくれる。

 それを聞くと、ティアラはガタンと音を出しながら立ち上がって、


「ちょっと先生のところ行ってくるわ!」


「ううぇ!? 明日でよくなぁい?」


「よくないわ!」


 ティアラはミファーとリーファの間を走り抜け、バンと扉を開け放ち、閉めるのを忘れて先生のもとへと向かう。


「この時間なら教員室にいるはず」


『ティアラどうしたの? なんでそんなに』


「十二月二十四日はお母様の誕生日よ」


『あぁそういうこと!』


「……ずっと、冬祭りとかぶってるから、祝えないと思ってたのよ」


『――? かぶってなければ祝えるの?』


「ん、そうよ。冬休みみたいな長期休みの間は、手続きを踏めば自宅に帰れるもの」


『そうだったの!?』


「保護者の同意が必要だけどね。誕生日前日にでも帰って祝おうとも思ったんだけど……」


『そっか、冬祭り間際は忙しいもんね……』


 ティアラはただ、コクリと頷く。

 ティアの言う通り、冬祭りの直前はかなり忙しくなる。なにせ本番前なのだから。


「……けど、お母様を呼べるなら話が別よ! とっておきのプレゼントを贈るわ!」


 教員室の扉をバンと開け放って、


「先生!」


「わっ、ティアラちゃん!? もう! 扉は静かに開けないとダメ!」


「あっ、ご、ごめんなさい……」


 見れば、他の教員もティアラのことを見つめていた。

 それを受けて、ティアラは頬を赤くする。ドアを勢いよく開けて、あまつさえ大声で叫ぶなんて、考えてみれば非常識だ。

 ティアラは細かくチョコチョコと先生の前まで歩いて、


「その、冬祭りの招待状をもらいたくて」


「ん、お母さんでも呼ぶの?」


「ぅ、うん……」


 ちょっと照れつつ、ティアラは頷いた。


「その、何枚までもらえるんですか?」


「何枚までって決まりはないけど、何人呼びたいの?」


 その質問に、ティアラは視線を落とし、ちょっと考える。


 ……お母様とお父様と、ミャミュ……あとはミリティアさんとか? いや、ミリティアさんはメルティアさんが呼ぶかしら


 だったらと、ティアラは顔を上げて、


「三人!」


「わかった、えっとちょっと待ってね……」


 「えっと、たしかここだったかな」などと言いながら、引き出しを引く先生。


「あったあった、はいどうぞ」


 と、差し出された三枚の招待状をティアラは「ありがとうございます」と受け取る。それからペコっとお辞儀して、振り向いて駆け出す。


「危ないよー」


「はい……」


 ピタッと足を止めて、それからティアラは早歩きで教員室を出る。

 振り返らずにドアを閉めて、ティアラは手に持った三つの招待状を嬉しそうに見つめる。


『そう言えばティアラ、さっきプレゼントって言ってたけど、何か用意してるの?』


「……ゃ、そういうわけじゃないわ。ただ、明日給料日じゃない?」


『あぁ! ティアラ天才!』


「二十日まで仕事ないから、明日プレゼント探しするわよ。手伝いなさい!」


『じゃあわたしのプレゼントも買ってね!』


「何言ってんのよティア、あんたのは別で……っ」


『別?』


 その言葉に、精神世界でティアが目を丸くする。


「な、なんでもないわ」


 ちょっとばかし強引に話を切って、ティアラは足を動かして自室へ向かう。


『そうだティアラ、どうせならサプライズがいいんじゃない?』


「さ、さぷらいず? 何よそれ」


『相手が喜ぶことを内緒で計画して、びっくりさせるの』


「んっ、サプライズって言うのね」


『この世界にもあるの?』


「あるにはあるわ。けどそれを表す言葉がないのよ。……さぷらいず、サプライズね。いいわね、やろうかしら」


『だったらティアラ、こういうのはどう?』


 「ん?」と喉を鳴らして、ティアのアイデアにティアラは耳を傾けた。

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