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神救異世界転移魂 ~絶望に抗う意志がなければ目的を達することはできない~  作者: Riku
序編第三章 『想いを込めて贈って』
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序編第三章33 『ウロボロス』


 十二月十二日、ティアラはメルティアと一緒に球避けの会場に向かっていた。

 数日前にマレディクトゥムの依頼の件をメルティアに話したら、都合の合う日を聞いておくと言われ、そして今日と決まったのだ。

 つまりティアラとメルティアは、今から球避け小企画の飾り付けをすることになるわけだが、


「ずっと気になってたんだけど」


「ん?」


「入学祭の時は飾りとか屋台とか、一日でできてたじゃない? あれはなんでだったのかしら?」


「あぁあれかぁ……あれはね、入学祭の企画者が新入生たちを驚かせようって言ったからだね。もちろん賛成ではあったけど、あまりの重労働にあの時は疲れた」


「なるほど、その時々でかなり形式が変わるのね」


「それが大企画の面白いところだね」


 そんなことを話しているとマレディクトゥムの企画会場へと辿り着く。

 それと同時に、ティアラは目に入った二人の人物に驚いた。


「ミファーとリーファ!?」


「あっ! ティアラぁ!」


 と、ティアラの驚いた声で振り向いたミファーが、ティアラのもとへと全力ダッシュで駆け寄ってくる。

 キュキュキュと急ブレーキをかけながら眼前で止まって、


「ティアラおはよう!」


「ど、どうしてミファーがここにいるのよ。リーファも」


 遅れてやってきたリーファを見やって言うと「それは」とリーファが口を開いて――、


「それはだなっ! この二人がこの企画の一般雇用だからだっ! 特別雇用でんっ!」


「ダメダメダメダメ!」


「ミ、ミファー!?」


 さらに遅れてやってきたマレディクトゥムが説明してくれたと言うのに、次いで出そうになった言葉をミファーがなぜか口に両手をあてがって止める。


「とにかく、二人は球避け企画の雇用者なのね? なんで隠してたのよ……」


「それはミファーのせい」


「あぁやっぱりミファーなのね……」


 どうせティアラを驚かせたいなどというのが隠した理由なのだろう、とティアラは何となく察する。

 少なくともリーファの呆れた顔を見るに、それ相応な理由はないのだろう。


「それでマレディクトゥムさん、装飾するって言うのは」


「マレでいいぞっ! ついさっき二人に追加でれんがを持ってきてもらったから、自由に装飾するんだっ!」


「あれ? そう言えば他の一般雇用者が見えないけど……」


「今日は軽作業だったからなっ! 二人だけに来てもらったんだっ!」


「そういうことね。わかったわ、じゃあ装飾させてもらうわ。メルティアさん……あれ?」


 隣をみてもメルティアの姿がない。

 ティアラはちょっと焦りながら辺りを見回す。すると装飾する台の様子を見ているメルティアが見えた。

 ティアラは安堵に息をついて、それからメルティアのもとへと駆け足で向かう。


「メルティアさん、急にいなくなったからびっくりしたじゃない」


「ん、あっごめんごめん」


「この台の中はどうなってるのかしら」


「それはだなっ! 魔法陣が隠れているぞっ! 魔法陣が消えないように気を付けるんだっ!」


「ホント他人事ねあなた……」


「そうかっ!」


 と、そう言ってマレディクトゥムは口を閉じる。

 その表情は一切変化しないから、本当に何を考えているのかがわからない。

 ティアラはジト目でマレディクトゥムを見つめ、それから「はぁ……」とため息を零した。


「メルティアさん、一気に形を変えるわ」


「わかった」


 ティアラの意図を理解したのか、メルティアが後ろに一歩下がる。


「なにするのぉ?」


 隣からミファーの声が聞こえて、ティアラはチラリと一瞥する。


「変形魔法でこの台の形を変えるのよ」


 言いながら、ティアラは魔法陣を展開する。

 それから台の形をどうにか目を引くような形へと変形していく。


「こんな感じかしら?」


「思ったより大したことないんだなっ!」


「……は?」


 隣に立つマレディクトゥムがティアラの装飾した台を見ながらそう言った。

 そんな言葉を聞いたら、ティアラは思わず振り向く。

 マレディクトゥムの後ろにいるミファーが口を開けたまま硬直しているが、気にしない。ちなみにリーファは相変わらず冷静だった。


「ぁ、あんた……」


「ミファーから聞いていたよりすごくないぞっ! ん、どうしたんだっ!」


 そう言ってティアラを見つめるマレディクトゥムの表情は、相変わらず変化がなくて読めないが、恐らく悪気があって言っているわけではないのだろう。

 ティアラはミファーをチラリと見た。その表情はわかりやすく『どおしよぉ』と言っていた。

 たしかにミファーなら、ティアラのことを過剰に伝えたりしていそうではあるが――、


「追加のれんがはどこ?」


「あそこだぞっ!」


 マレディクトゥムの指した方向へ視線を向けると、そこには山積みにされたれんががあった。

 ティアラはそれを移動魔法で台の近くまで移動させると、次いで構築魔法で雑に台とくっつける。


「みてなさいマレ!」


「わかったぞっ!」


 あっと驚かせてやろうとティアラは本気で魔法を発動した。

 その瞬間、数十個の魔法陣が展開する。


「目立てばいいのよね?」


「そうだっ!」


「わかったわ……」


 あんなことを言われたらさすがにティアラも黙っていられない。

 それにティアラのことをすごいと言ってくれたミファーの言葉を、嘘になどしたくなかった。


 ――戦いは一時間に及んだ。

 大きく形を作って、細かいところを整えていく作業は作るものが作るものだったから、かなり大変だった。


「できたわ」


「これはなんだっ!」


「えっ!」


 隣を見るとマレディクトゥムの姿があって、ティアラはびっくりする。


「ま、まさかずっとみてたの?」


「なんだとっ! お前が見ろと言ったんじゃないかっ!」


「ぇ、えぇ、そうなんだけど……」


 見れば、ミファーとリーファはどこからか持ってきた将棋で遊んでいる。顔をみるに、リーファは恐らく付き合わされているが――、


「あれ? メルティアさんは?」


「そこだぞっ!」


 マレディクトゥムが指を指した方向へ顔を向けると、そこには地面をチョンチョンとつついているメルティアの姿があった。

 ティアラはゆっくりとそんなメルティアのもとへと近づいて、


「えっと、メルティアさん?」


「どうしたのティアラちゃん……」


「な、なにしてるの?」


「いいの、私いらない子だから……」


「えっ?」


「一時間、手伝ってとも言われなかった。一緒の組なのに……」


「あっ……」


 そこで気付いた。

 たしかにメルティアの言う通り、ティアラは一時間ずっと独りで作業していた。その間メルティアには何も言うことはなく、放置してしまっていたのだ。


「わ、忘れてた……。メルティアさんごめん……その、完成したから一緒に見てもらえないかしら?」


 そう言うと、メルティアが落としていた視線を上げて、チラリとティアラを見やった。


「うん、いいよ」


 と、そう言うと同時にメルティアはいつもの調子に戻る。

 それにティアラが安堵の息をつくと――、


「わぁ! 完成してるぅ! ねぇねぇリーファリーファ!!」


「うるさい」


「ごめんなさい……」


 いつのもミファーとリーファの漫才のような会話が聞こえてきて、ティアラはメルティアの手を引いて台の前へと駆け足した。


「あっティアラ! ねぇねぇティアラこれなんなのぉ!」


「んっ、これって……」


「メルティアさん知ってるのぉ?」


 言いながらミファーがメルティアの顔を下から覗き込むように顔を傾ける。


「うん。これは伝説の生物の一つ『ウロボロス』だね。ティアラちゃんこんなのどこで知ったの?」


『やっぱりウロボロス……』


「んっ……」


 ティアが反応したのを聞いてちょっと喉を鳴らしつつも、ティアラはメルティアの質問へ意識を戻して、


「偶然よ。あたし結構本を読む機会が多かったから、それで知ったわ」


「ねぇねぇ! うろぼろす? って現実にいるのぉ?」


「伝説の生物って今言ったじゃない……」


「いや、そうでもないよティアラちゃん!」


「え?」


「二百年くらい前にはなぜかウロボロスの噂が多かったらしいし、もしかしたら本当にいたのかもしれないの」


「ほんとぉ!?」


 と、目を輝かせたミファーがメルティアを見つめる。

 そんなミファーを前にメルティアの瞳がとろんとしたのをみて、ティアラは瞬時にミファーに危険を知らせようと口を開いて――、


「ねぇミファーちゃん、ギューってしていぃい?」


「えっ……」


 メルティアがミファーに対して、律儀に確認を取った。

 その様子を前に、ティアラは目を見開いて硬直する。

 ミファーもまた、驚いたようだが――、


「うん! いいよぉ!」


 とすぐに調子を戻して、メルティアの胸に飛び込んだ。

 そうして抱き合う二人を前に、ティアラはイラディスから聞いたメルティアの事情と変化を思い出して、頬を緩める。


「ホントに、変わってきてるのね」


「ん? ティアラちゃん何か言った?」


「うぅん、なんでもないわ」


 ここで褒めたりでもしたら、調子に乗りそうだ。

 だから、と、ティアラは心の中でメルティアを褒めるのだった。

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