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神救異世界転移魂 ~絶望に抗う意志がなければ目的を達することはできない~  作者: Riku
序編第三章 『想いを込めて贈って』
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序編第三章28 『不老不死の天才だっ!』


「ねぇメルティアさん」


「どうしたのティアラちゃん」


 十二月五日、ティアラは相変わらずメルティアと飾り付けの仕事をしていた。

 ふと気になったことがあって、ティアラはメルティアの方へ向きなおる。


「内装が終わったら次はどこなの?」


「えっとね、届いた装飾の依頼を一緒にやるよ」


「あれ? 大通りはやらないの?」


 たしか小企画雇用説明会を受けたリーファからの説明では、大通りなどを装飾すると言っていたはずだ。


「もともとはする予定だったんだけどね。イラの意向で、大企画とか小企画とか屋台とか、そっちの装飾に力を入れることになったの」


「そういうことね。それで、依頼ってどこから来るの?」


「口頭で依頼されるよ。そしたら一緒の組の人と依頼の装飾をするの。もう出始めてるらしいよ」


「ふ~ん」


 つまり、メルティアが依頼を受けてもティアラが依頼を受けても、結局のところまた一緒に仕事をするということになる。


「まぁ、飾り付けはいいとして、大企画の仕事はまだかしら……」


 イラディスからもう少ししたら声をかけると言われてから、五日も経っている。

 イラディスのことだからホントに声をかけてくれるとはわかっているものの、それでも不安は募っていた。


「あっ!」


「なっ!?」


「ティアラちゃんそうだよそれそれ!」


「ぇ、な、なによ」


「イラから伝言! 十二月八日は大企画の仕事だって!」


 パァッとティアラの表情が明るくなる。

 ようやく来た。待ちに待った大企画の仕事だ。


「ど、どこでやるのかしら?」


「――? 大企画と言ったら大会場でしょ?」


「大会場?」


「あれ? ティアラちゃん知らないの? あっそっか、J寮とL寮の間にあるからI寮からじゃ見えないもんね。学園からも見えるところはあるけど、そんな遠くに行く機会ない、か」


「な、何の話よ」


「えっと……あれ? でもそうなるとティアラちゃん、入学祭の大企画行ってないの?」


「ん? ……あぁ! あれのことね!」


「あっ、わかった?」


「えぇ、わかったわ」


 普段見ないから忘れていたが、J寮とL寮の間に大きな会場がある。

 たしかに入学祭の大企画で使われていた。ミファーたちと行ったのを思い出して、ティアラは場所を把握する。


「……ちょっと緊張するわね」


「がんばってティアラちゃん!」


「えぇ!」


 メルティアの応援に返事を返して、ティアラは決意を固める。

 イラディスの期待に応えるためにも頑張らなければ。

 ――いや、何よりティアラが頑張りたいから、頑張るのだ。


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 飾り付けの仕事が終わり、寮に帰ってきたティアラは自室へと向かっていた。


「三日後、三日後ね……」


 頑張ると決めたからと言って、緊張がなくなるわけではない。

 緊張で息が詰まって、ティアラはハッとして深呼吸を繰り出す。


「大丈夫よ! イラディスさんもいるんだから……きっとサポートしてくれるわ」


 そう、仮にティアラが失敗しても、イラディスが助けてくれるだろう。


「けど頼りすぎるのもダメよね……」


 まだ何もやることを知らないと言うのに、考えすぎかもしれないが。


「ティアラだなっ!」


 前方から大きな声で名前を呼ばれて、ティアラはビクッと体を震わせながら咄嗟に顔を上げて前を見る。

 するとティアラの部屋の前に、ティアラより十センチほど背丈の大きい少女が、薄茶色のハーフツインテールを揺らして真っ直ぐにこちらを見ていた。

 その可愛らしい顔立ちに合わない無感情な面持ちに、左目の眼帯と右腕の包帯を目にすれば、ティアラはゴクリと唾を飲み込んで、


「だ、だれ……」


「私の名はマレディクトゥム・フォーカルス! 不老不死の天才だっ!」


 その意味不明な自己紹介に、語尾を跳ねさせるという独特な喋り方が混ざれば、ティアラの頭は混乱を極めた。

 加えてその声に感情が乗っていなかったりもするのだから、そうなるのもあたりまえだった。


『この世界に不老不死っているの?』


「し、知らないわよ……」


 どちらにしろ、関わらない方がよさそうね……


 普通なら名前を知られていることに驚くところだが、アミリスとアドバンの娘であるティアラからしたら、そんなの驚くまでもない。

 どうせそこらへんの人たちが話しているのを聞いたのだろう。


「ど、退いてもらえるかしら?」


「ダメだぞっ!」


 マレディクトゥムの前までやってきて部屋に入ろうとするティアラに、残酷にも否定の言葉が降りかかる。


「な、なんでかしら……?」


「依頼をするからだっ!」


「依頼?」


 なんだそれは、と一瞬小首を傾げるも、すぐに頭の上に電球が立った。


「――! それって飾り付けの?」


「そうだっ!」


「それなら早く言いなさいよ……」


「そうかっ! なら早く言わせてもらうぞっ!」


 ちょっと会話がズレている気もするが、ティアラは指摘したいのを飲み込んで、マレディクトゥムの依頼内容に耳を傾けた。


「私の小企画の舞台の後ろに台があってな、そこに賞金を置くことになったんだっ! それでだなっ! その台の飾り付けを依頼するぞっ!」


「具体的にどういう飾りがいいのよ」


「目立てば何でもいいぞっ! おまかせだっ!」


 投げやりねこの子……


 ティアラはマレディクトゥムの言い分にジト目になる。


「お前がすごいのは聞いているからなっ! 私の発想よりお前に任せたの方がいいと思ったんだっ!」


「ん……まぁいいわ。やってやるわよ」


「そうかっ! なら頼んだぞっ!」


 マレディクトゥムの真意を聞かされて、ティアラは心なしか頬を赤らめつつやる気になる。

 その返事を聞いたマレディクトゥムが帰ろうとするから、ティアラは慌てて右腕を掴んだ。

 その瞬間、マレディクトゥムがピタリを足を止めて、勢いよく振り返る。


「手を離すんだっ!」


 ティアラの腕を左手で掴んで、引き剥がそうとするマレディクトゥム。

 それをみて、ティアラは右腕がかなりの大怪我なのだと察して慌てて手を離す。


「わ、悪かったわ、怪我触って……」


「不老不死の私にそんなものあるわけないぞっ!」


「……は?」


「この腕は見られるとその相手を殺そうとしてしまうからなっ! だから包帯が解けるとまずいんだっ!」


「ぇ……」


『中二病だ! この世界にもいるんだ……』


 ティアが言っている単語は理解できなくても、ティアラはその意味は理解できた。多分、今ティアラが思っていることと同じなのだろう。


「その眼帯は?」


「これかっ! これはこの目が見たものを呪ってしまうからつけているんだっ!」


 呆れた目になってしまう。

 最初の自己紹介の時点で、ティアラはだいぶマレディクトゥムを変人だと思ってはいた、いたのだが。

 ――想像以上だった。


「まぁいいわ。あんたの小企画の名前は?」


「球避けだっ!」


「わかったわ。しばらくしたら連絡するわ……」


「わかったぞっ!」


 そう言って後ろを向いて歩き出すマレディクトゥム。

 そんなマレディクトゥムの背中を、ティアラはどこか遠い目で見つめるのだった。

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