序編第三章27 『魔法陣を確かめて』
十二月二日の朝、リーファとミファーはマレディクトゥムから魔法陣が完成したとの報告があり、会場へと向かった。
「来たなっ!」
「マレぇ!」
閉鎖され、カーテンのような仕切りで囲まれた会場へ足を踏み入れると、マレディクトゥムがいた。
見つけた途端にミファーが抱き着きに行くが、マレディクトゥムは困惑する様子もなくリーファへと視線を向けて、
「おはようだっ!」
「うん」
「おはよう!!」
「それで魔法陣は、これ……?」
「そうだぞっ!」
見れば、大量の魔法陣が描かれているのがわかる。一体いくらかかったのだろうか。
「国王曰く発動の確認はしているらしいが、ちゃんと確かめておきたくてなっ! だからリーファ! 発動してみるんだっ!」
「私がやるのね……」
リーファは言われた通りに魔法陣を発動させるべく、起点となる魔法陣が描かれた縦に細長い台の前に来る。
「これ誰が作ったの……?」
リーファがこの台のことを提案したのは魔法陣の作成開始当日だったはずだ。
あの日は一般雇用はなかったはずだし、そもそもあったらリーファが知らないはずがない。だとすると――、
「どうせだからだなっ! 国王に頼んで作ってもらったぞっ!」
「――――」
開いた口が塞がらないとはまさにこのことだろう。
国王をパシったなんて一体誰に予想がつくというのだ。
リーファはため息を零して、それから魔法陣へ手をかざした。そしてその手にソースを集めて――、
「おぉ!」
ミファーの驚いた声が耳に届く。
――大量の魔法陣が一斉に、淡い桃色に光り出した。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「よし! 発動に問題はないみたいだな!」
「みてみてリーファ! ミファー髪濡れたぁ!」
「なんで喜んでるの……」
「時間経ったから冷えて寒い!」
ならなぜそんなに嬉しそうな顔をしているのだろうとはてなマークが浮かんだが、これもすべてミファーだからで片付いてしまうのが怖いところだ。
「病気になるぞっ! 早く乾かしてくるんだっ!」
「わかった!」
とそう言って隣の仕切りを潜り抜けるミファーを一瞥しつつ、リーファはマレディクトゥムを見つめた。
「なんだっ!」
「いや、この魔法陣見えすぎじゃない?」
その指摘にマレディクトゥムが足元を見やった。
「そうだなっ!」
魔法陣を隠すとしたら、れんがで隠すのが一番自然だ。それは舞台がれんがで作られていることからもわかるが、ただ隠すだけだと舞台の裏に何かあると違和感が出てしまう。
どうせなら活用したいが――、
「あっ」
「どうしたんだっ!」
聞いてくるマレディクトゥムに、リーファは真剣な面持ちになって言う。
「提案……」
「そうかっ!」
こっちは真剣に言っているというのに、こうも無表情な反応が返ってくると調子が狂ってしまう。
ジト目になりつつも、リーファは深呼吸をして、
「この魔法陣をれんがで囲んで上を蓋する。そして、その上に器を置いて――」
一泊を置いて、リーファは言う。
「その中に賞金を入れる」
「どういうことだっ!」
「大量のお金が目の前にあったら、興味持たない?」
マレディクトゥムはリーファの目を見つめたまま動きを止める。
そして一、二、三、四、五秒と時間が経って――、
「企画者に掛け合ってみるぞっ!」
「よし……」
とりあえず、第一段階は超えた。
これで企画者からも賛同と許可が出れば、ミファーとリーファの給料が白金貨二枚増える。
「よいしょ! ねぇねぇ! 今日はもうおしまい?」
仕切りをくぐって現れたミファーが、乾いたツインテールを揺らしながらマレディクトゥムへ質問を投げかける。
「そうだなっ! 今日はもう終わりだっ!」
「次は?」
「次は企画者次第だが、今のリーファの提案関連になると思うぞっ!」
「ううぇ!? リーファ提案したのぉ!?」
「あっそっか……」
提案が失敗したら給料が下がる。
それはリーファの給料だけじゃなくミファーの給料も同様だ。
「ごめんミファー……」
自分勝手なことをしたと自覚して、リーファは視線が自然と下がった。
「なんでぇえ? ミファーびっくりしただけだよぉ! リーファのことは信じてるもん!」
「そ、そう……」
自分の勘違いと、ミファーの何気ない一言にちょっと頬を赤くしつつ、リーファはミファーに悟られないように顔を逸らす。
「それとそろそろ飾り付けも依頼しないとだなっ!」
「飾り付け? マレマレ! それならね!」
ミファーが目をキラキラと輝かせて食らいつく。
それをみて、リーファはこの先の展開が読めた。
そして案の定、ミファーが「ティアラがいいよぉ!」と名前をあげるのだった。
今週は投稿時間を21時10分に固定します。




