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神救異世界転移魂 ~絶望に抗う意志がなければ目的を達することはできない~  作者: Riku
序編第三章 『想いを込めて贈って』
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序編第三章26 『背中を目で追って』


「あっティアラちゃん!」


「メルティアさん……」


 いつも通り飾り付けの集合場所の教室へと向かうと、教室に入った瞬間にメルティアがティアラをロックオンする。

 腕を広げて駆け寄ってくるメルティアをみて、ティアラは警戒態勢を取った。が――、


「あっ……えっと、おはようティアラちゃん」


「――? ぉ、おはよう」


 ティアラの眼前まで迫ったところで、メルティアがふと気づいたように動きを止めた。さらに歯切れの悪い挨拶を繰り出されれば、違和感はフルコンボだ。

 てっきりティアラは、抱き着かれると思ったのだが。


「今日はそろそろ学園の内装に取りかかるよ」


「今日もメルティアさんとやるのかしら?」


「…………嫌?」


「そ、そういうわけじゃないわよ」


 本気で悲しそうな顔をするものだから、ティアラは反射的に否定を口にした。

 実際、嫌というわけではない。むしろ、ティアラは初対面の人と仲良くなるのがうまいわけではないので、メルティアとの仕事の方がいいのだが、それを言ったら調子に乗りそうだ。


「ただ、初日の時に今日だけみたいな言い方だったから引っかかっただけよ」


「あの時はまだ予定が決まってなかったからね。あのあと、毎回組を変えるとめんどうだから、そのままの組で続けることになったの」


「あぁ、そういうことだったのね」


 喉に引っかかった小骨が抜けて、ティアラはちょっとスッキリする。


「えっと、その……ホントに嫌じゃない?」


「えぇ、嫌じゃないわ」


「そっか」


 メルティアの表情が、パァと明るくなる。

 何というか、今日のメルティアはどこか変な感じがした。

 そのあと仕事の時間になるまで、ティアラはメルティアと話していたのだが、やっぱり変だ。何が変かと言われれば、距離感と答えるのが正確だろう。

 突然抱き着いたりするくせに、ハッと気付いたように離れて、「ごめんティアラちゃん、嫌じゃなかった?」と聞いてくるのだ。

 ティアラとしても、今日のメルティアには調子が狂ってしまう。


「あっティアラちゃん、説明行ってくるね」


「えぇ」


 仕事の時間になると、いつも決まってメルティアが仕事の内容を説明するために教壇に立つのだ。それは今日も同じ。

 今日の仕事の内容は、メルティアがさっき行っていた通り学園の内装になるらしい。その他はいつも通りだ。


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


「ティアラちゃん!」


 仕事が始まって一時間くらいが経った頃、熱中にしているティアラにメルティアから声がかかる。

 ティアラは顔の向きを変えずに「なによ」と言って、


「これあげるね」


「ん?」


 反射的に振り向くと、視界に石の花束が映り込んだ。


「な、なによこれ……」


 綺麗に花一本一本が別々に生成されたもののように見える。包み込む紙すらもしっかり石で統一されていた。

 これをするのは地味に大変に思えるが、


「これまでいろいろ迷惑かけたでしょ? そのお詫び!」


「…………」


 迷惑というのは、察するにメルティアの距離感の近さが招いた事件などのことだろう。

 ジト目でメルティアを見つめながら、ティアラはちょっと考えて――、


「まぁいいわ」


「やったぁ!」


 受け取った瞬間、メルティアがちょっと後ずさってティアラを見る。


 やっぱりこれ持ってるの見たかっただけじゃない……


 ハァとため息を零して、ティアラはやや呆れた目になった。


「かわいい!」


「わぁ!」


 メルティアが勢いよく抱き着いてきて、ティアラは肩をビクッと震わせる。


 結局こうなるのね……


「おい!」


「いてっ!」


 ティアラの後ろから、メルティアの頭頂部を誰かかチョップする。

 その声に、ティアラは聞き覚えがあった。


「あっ、そうだった! ティアラちゃん、ごめんね?」


「別にいいわよもう……」


「うぅ……」


 呆れたティアラの返事に、メルティアが唸り声を上げる。

 そんなメルティアは無視して、


「イラディスさん!」


「おはようティアラちゃん」


「えぇ!」


 返ってきた挨拶に満面の笑みで応じる。

 そんな中、隣のメルティアが頭を押さえているのを見ると、イラディスが焦って駆け寄った。


「悪い、ちょっと強かったか?」


「うん、痛かった」


「ごめん……」


 イラディスが手を合わせて謝りながらメルティアを心配する。それをみて、ティアラは無意識に唇が尖った。


「イラディスさん、大企画の仕事ってまだかしら?」


「ん? あぁそうだな。もう少ししたら声をかけるから、待っててな?」


「わかったわ」


「そもそもイラはなんでここに来たの?」


「ただ行きずり、別に用があったわけじゃない。ただ一つ言うなら、どっかのバカが自分で作ったルールを守れてなかったからだな」


「うぅ……」


「ルール?」


 ふと聞こえた単語に小首を傾げるが、メルティアには「な、なんでもないよ!」とはぐらかされた。

 一体何なのだろう。メルティアに何かしらのルールがあるとは思えないが、


「じゃあ俺は行くな」


「あっうん」


「ティアラちゃん、またね」


「えぇ!」


 手を振ってくれたから振り返すと、イラディスが背を向けて歩いていく。

 ティアラは、見えなくなるまでその背中を目で追い続けた。

明々後日は21時10分に投稿します。

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