第一章56 『期待に胸が膨らんで』
「そう言えば、雇用の仕事の時って授業どうするのかしら?」
図書館にいる時にいつの間にか寝てしまっていたティアラだが、ティアが何とか凌いでくれたおかげで、助かった。
目が覚めた時に寮まで来ていたのは驚いたが、至って普通に夕食を取り、今は寝る時間が迫ってきていた。
「えっとねぇ、こおいう大企画の時は、学園は開催一ヶ月前から休みになるんだよぉ!」
「――! そうなのね」
ティアラの疑問に、ミファーがベッドに寝っ転がりながら答えた。
「それで? 冬祭りの開催はいつなのよ」
「十二月二十四と二十五!」
『クリスマスじゃん!』
「んっ!」
ティアの発言にティアラは視線を上にあげて反応する。
それからミファーの言った日にちの一ヶ月前が、もうすぐだと理解が追い付いた。
「って、それってもうすぐじゃない!」
「そおだよぉ!」
「ティアラは初日はいつなの?」
と、そこでリーファから質問が飛んでくる。
「あたしは二十四日よ。そうなると冬休み入ってすぐになるのね……」
「ううぇ!? ティアラ二十四日なの!? ミファーとリーファもだよぉ!」
言いながら体を起こして、ミファーは淡い水色の瞳をキラキラさせてこちらを見る。
「大企画と飾り付けのどっち?」
その質問を聞いて視線を移すと、机に突っ伏したリーファが顔を横にしてこっちを見ていた。
「飾り付けよ」
「何時?」
「わぁ!?」
気付くとミファーがティアラの隣に座っていて、びっくりして仰向けに倒れると、ベッドがギシッと音を立てながらティアラを受け止める。
そんなティアラを上から見下ろすようにしてミファーが、
「だ、大丈夫?」
「大丈夫じゃないわよバカ!」
「ご、ごめんなさい……」
シュンとするミファー。
その姿を見れば、ティアラはやはり罪悪感にかられた。毎回のことではあるものの、ミファーはやっぱりズルいとティアラは思う。
「別に怒ったわけじゃないわ」
「ほんとぉ?」
そう言って上目遣いで見てくるミファーの頭を撫でて、
「本当よ……」
「ティアラ大好きぃ!」
「わぁ!」
ミファーが抱き着いてきて、ティアラはまたベッドに倒れる。
けどそれを注意したらまた同じことの繰り返しだ。ティアラは仕方なく、ミファーを受け止める。
まぁ嫌なわけでもないし、嫌だったらミファーに言えばちゃんとやめてくれるから、別にいいかとティアラはそう思った。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
時間が流れるのは早いもので、あっという間に二十四日が訪れた。
期待を胸にティアラは早起きして、ミファーとリーファを起こした。
「ティアラティアラ! 今日は初めての雇用だよぉ!」
「そうね」
いつもより元気なミファーがぴょんぴょんとベッドの上で跳ねながら、ティアラに話しかける。
当のティアラも、いつもより格段に気持ちが上がっていた。そんな調子で手を広げて『ミファー』と呼んでみる。
「ティアラぁ!!」
「わぁ!?」
ベッドから直接飛んできたミファーを、ティアラは何とか抱きしめて、そのまま仰向けにベッドに押し倒される。
「ミファーあんた……っ!」
「ティアラ?」
危ないじゃない、と言おうとして、ティアラは反射的に言葉を引っ込めた。
もともとティアラは、ミファーがベッドから下りて抱き着いてくるのを予想していたし、もっともな内容ではあったが、せっかくのいい気分を台無しにするわけにはいかない。
「バ~カ」
「バカぁ!? ねぇねぇリーファリーファ! 今ティアラがミファーのことバカってゆったぁ!」
叱る、というよりはからかう感じでティアラが言うと、リーファの方へ体を捻じってミファーが言う。
「まぁ今日くらいはバカでいいと思う」
「同感ね」
「ううぇ!? ミファーバカじゃないよぉ!」
リーファも、ティアラと同じ気持ちのようだ。
心なしかリーファの表情も、いつもより心躍っているように見えた。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「ここ、かしら?」
リーファとミファーと一緒に寮を出たティアラだが、学園に着いたあとしばらくして道が分かれた。
そんなこんなで一人で来るように言われた教室の扉を、中を覗き込むようにちょっとだけ開けて――、
「ティアラちゃ~ん!」
――閉める。
ピンク色のツインテールの髪を揺らして、ハートマークの瞳の少女がこちらを向いた気がしたが、たぶん気のせいだ。
「ティアラちゃん」
「あぁ……」
そんなことを考えているとドアが開いて、陶然とした表情の少女の視線がティアラを捉えた。
――メルティアだ。




