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第一章54 『二百年前の謎』


 小企画雇用説明会が終わると、リーファとミファーはマレディクトゥムに雇用を受ける旨を伝え、ティアラがいるであろう図書館へと向かっていた。


「ねぇねぇリーファリーファ!」


「なに?」


「あの小企画さ、なんかもっとすごくできないかな?」


「――――」


 舌ったらずなミファーを前に、リーファはジト目になる。


「例えばぁ、球が途中から曲がるよおになるとかさ!」


 今はただ一直線に球を投げるだけだから、避けられる可能性は高いとは思うが、


「成功しないってわかったら誰も挑戦しなくなる。第一、球の動きは魔法陣で制御するって言ってたから、さらに動きを増やすってなるとお金がかかるんじゃない?」


「そっかぁ、じゃあダメかぁ……」


 しょんぼりとするミファーを見て、リーファはちょっと心が痛くなる。

 それからはぁっと息を吐いて、口を開く、


「やるなら、それ相応の利点が必要。……真剣の持ち込みをありにすれば、成功率もちょうどよくなるし、剣術が得意な人たちが集まるかもね」


「それだよリーファ! リーファ天才!」


 パァッと顔を明るくして、ミファーがリーファをおだてる。それもたぶん思惑などないのだろう。だからこそミファーは憎めない。


「初日の雇用の時に言いに行くなら付き合うけど……」


「やったぁ! リーファ大好き!」


 ちょっと照れくさそうにしながら、リーファは抱き着いてきたミファーを受け入れた。


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


「ぁ、かね、だよね……」


 視界に映る絵を信じられないと、ティアは瞳を震わせる。

 この前ティアラに聞いたが、この世界の本の表紙や挿絵は、生成魔法で作られているらしい。だから色もついているし、完成度も高いのだ。


「――――」


 目の色、髪の色、肌の色、顔立ち、背丈、ありとあらゆるものが、あかねにそっくりだった。――いや、あかねなのだ。


「この本はダメ、他の本!」


 この本はティアには読めない。

 だからティアは、それから必死に標準文字で書かれたあかね関連の本をかき集め、片っ端から目を通した。


「なるほど……」


 最初に得たのは、腑に落ちたという感覚だった。


 ゲーム開発者かぁ、道理でこの世界にわたしの知ってるゲームがあるわけだよ


 あかねは主に、ゲーム開発者の偉人として書かれていた。主なゲームはボードゲームやトランプだが、他にもあったりする。

 かなりの歴史の立役者と言っていいだろう。


 インクを作ったのも、料理を広げたのもあかねだったんだ……


「たしかに、あかね料理好きだったもんなぁ」


 思い出を呼び起こしながら、ティアはまた腑に落ちる。


「ゲーム関連の外来語があるのも、料理系の外来語があるのも、あかねが原因だったんだ。アルファベットも、トランプ作るなら必要だもんね」


 トランプで使うのはA、J、Q、K、だけだが、どうせなら全部、とアルファベットを広げた可能性は否めない。というか、ゲームを作るならアルファベットを広げておいた方がむしろやりやすいだろう。


「インクを作ったのはゲーム作りに必要だったからとかかな? ん、センチとメートルの単位を作ったのもあかねなんだ。これも同じ理由かな?」


 そう言えば、これって何年の本なんだろ


 そう思って本の作られた年を確認して――、


「ティアラ! 終わったよぉ!」


 誰か来た。

 まぁいい、今はそれより――、


「今って西暦何年なんだろ」


「ううぇ!? ティアラ知らないのぉ!? 六百六十四年だよぉ!」


「え?」


 その回答と、本に書いている西暦があまりにも違い過ぎて、ティアは驚きの声が漏れた。


「四百六十六年……二百年近く前?」


 二百年前に本を作れる技術があることも驚きだが、


 ちょっと待って、あかねはどうなったの?


 二百年前だって言うのなら、あかねはもう――。

 ティアは慌てて、あかねの出生が書いているページを探した。


「あった!」


 焦って読んでいたせいか、一ページ目を飛ばしていたみたいだ。


「本名、アルカネ・アルカロネ? 偽名、とかかな? 出生は……四百六十三年に突然現れた? あかねもわたしと同じように異世界転移したってこと? いや、わたしの場合はちょっと違うけど。それでえっと……四百六十六年に……失、踪?」


 衝撃的な文字を前に、ティアはまた言葉を失う。今回は目を見開くのもセットだ。


「ティアラ?」


「え?」


 誰かが顔を覗き込んできて、その顔が見えた。


「ってミファーじゃん!」


「うん! ミファーだよ!!」


 まずいまずいまずい! ティアラまだ起きてないのに!


 集中していたからか、ずっとミファーがいたのに気付かなかった。

 ティアは自分の発言を思い返すが、結構危ない発言をしていたように思う。恐る恐るミファーの顔をもう一度見て、


 ミファーだから大丈夫か


 と安心する。が、できるのはあくまでミファーのみだ。

 ミファーの隣に立つリーファを見やれば、こちらを目を細くしてみている。


「うっ……」


 ティアは思わず唾を飲み込む。

 ――その頬を、たらりと一滴の冷や汗が流れた。

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