第一章53 『小企画雇用説明会!』
「リーファリーファ! 小企画ってなんだろおね!」
「ミファーうるさい……」
「ご、ごめんなさい……」
小企画雇用説明会が行われる教室に来た二人は、隣り合わせに席に座っていた。
ミファーが期待に胸を膨らませて言うと、周囲の視線が集まってきてリーファが注意する。
「……そう言えば小企画って一つだけじゃないはずだよね」
「そおだよ!」
「なら説明会も二つ以上ないと不自然じゃない?」
「それならミファー見たよ! 他にも説明会あった!」
「――! そっか」
自分が受ける説明会に気を取られて、視野が狭まっていたのだろうか。それとも、ミファーが見たのはうるさい動きの最中に視界に入ったからか。恐らく後者だ。
「あっリーファ! 来たよ!」
「んっ……!」
見れば、教室の入口にリーファと同じ背丈の少女の姿が見えた。可愛らしい顔立ちだ。
その少女は堂々とした面持ちでやってきて、教壇に立つ。薄茶色のハーフツインテールを揺らし、透き通った薄茶色の右目で雇用者たちの方を見た。
もう片方の目に眼帯が付けられ、右腕は手から肘まで包帯が巻かれていて、リーファは目を細めた。
ついにはその少女は口を開いて――、
「私の名はマレディクトゥム・フォーカルス! 不老不死の天才だっ!」
「――――は?」
「おぉ!」
リーファは思わず、声が漏れた。
横の本気で信じてそうなミファーはおいておいて、リーファは全力で頭を回転させた――否、させるまでもない。
こいつはバカなのだと、一瞬で理解した。
「はいはい! どうして不老不死なの!!」
「それはだな! そういう呪いを受けているからだっ!」
「ミファー……?」
ちょっと引いた顔でミファーを見る。
信じるのは百歩譲ってミファーだからわかるが、質問をするのは流石に予想外だ。
「ち、違うよリーファ! さすがにミファーも信じてないよぉ! 雰囲気読んだだけだよぉ!!」
「なんだとっ! 信じていなかったのかっ! まぁそんなことはいい、早速私の考えた小企画の説明を始めようじゃないかっ!」
まさか自分の小企画主がこんなだとは思ってもいなかったと、リーファはジト目でマレディクトゥムを見つめた。
その独特な語尾の跳ねる口調は特徴的だが、声音にはあまり感情が乗っている感じがしない。
それ以前に、あんな意味不明な自己紹介をしておいて、面持ちはずっと無表情なのだ。
「私の小企画は球避けだっ! 被弾せずに最後まで避けきった者に賞金を与えるという形式だぞっ! お前たちには会場作りや物を運んだりするのをやってもらう! この小企画には特別雇用者はいない! 全て私から指示を出すぞっ! 以上だっ! そして日給は銀貨五枚だっ! 他に聞きたいことはあるか?」
シーンと、教室中が静まり返った。
それは、衝撃的な自己紹介によってできたマレディクトゥムへの印象が、ちゃんとした説明ができていることと食い違ったからだろう。
当のリーファも、言葉を失っていた。恐らく、この教室にいる雇用者の中で平常運転なのはミファーくらいのものだろう。
「なんだ? 質問がないのか? なら雇用初日に何をするかでも話すとするかっ!」
誰も何も言えずに、話が進もうとして、
「はいはいはいはい! 質問! まれでぃくとぅむ? ちゃんは何年生なの!」
「マレでいいぞっ! 私は一年生だっ!」
「一年生!?」
「そうだっ! だから天才なんだっ!」
「ミファー、それ雇用関係ない」
「だって、気になっちゃったから……。ごめんなさい……」
シュンとするミファーを前に、リーファはちょっと言い方が強かったかもと罪悪感にかられる。
「なんだお前たち、仲が悪いのか?」
「違うよぉ! ミファーとリーファは仲良しだよぉ! この前もリーファ、ティアラと喧嘩した日にミファーの布団に潜り込んで――っ!? んぐぅ!」
頬を赤く染めながら、リーファは慌ててミファーの口を手で塞いだ。
「ぃ、言っちゃダメ……」
恥ずかしいどころじゃなかった。
さすがのリーファもいつもの冷静な雰囲気と声音が崩れ、いっぱしの少女のようになってしまう。
リーファの圧のない切望の眼差しを受ければ、ミファーはコクコクと首を縦に振った。
「ぷはぁ! とにかく、リーファとミファーは仲良しなの!」
「そんなことより、雇用初日の内容を教えてください」
「敬語じゃなくてもいいぞっ!」
「仲いいって思われたくないので」
「なんだとっ! そうか、なら決めたぞっ! 私はお前と友達になる!」
「は!?」
とんでもないことを言い出すマレディクトゥムに、リーファは驚きの声が出た。
というか、今は一体何の時間なのだろう。まるでリーファとミファーとマレディクトゥムの三人だけの時間に見えるが、実際にはリーファとミファーたちの他の雇用者もいるのだ。
それに気づいて周りを見れば、視線が集まっているとわかっていたたまれなくなる。リーファはとりあえずマレディクトゥムの言葉は無視して、
「……とりあえず、雇用初日の内容を話してください」
「わかったぞっ!」
そう言ってマレディクトゥムは、話し始める。
意外にもその内容はわかりやすく、違和感が半端なかった。何とも言えない気持ちのまま聞いていれば、いつの間にか説明会は終わっていた。
明日は20時10分に投稿します。




