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第一章52 『手掛かり』


 次の日、ティアラたちが学園から寮へ帰る準備をしていると、


「ミファーちゃん、リーファちゃん」


「先生! どおしたのぉ!」


「なんですか?」


 何となく言うことを察して、ティアラは思わず微笑む。


「二人とも、小企画の雇用に選ばれたよ」


「ううぇ!? ほんとぉ!!?」


「――――」


 ミファーはあからさまに驚き、リーファは対照的に言葉を失っている。

 だがそんなリーファも時間差で嬉しそうに微笑んだ。


「このあと説明会があるから、二人で行ってきてね」


「わかりました」


「二人、で……」


 ミファーが、ティアラの方を見やった。

 その表情はどうしようと迷っている様子で、ティアラはその理由がすぐにわかった。――わかったから、やることは一つだ。


「じゃああたしはその間に図書館にでも行こうかしら。終わったら、図書館に来てくれると助かるわ」


「――っ! うん! ティアラ大好きぃ!」


「わぁ! や、やめなさいよこんなところで……っ!」


 ティアラの気遣いが伝わったのか、ミファーがパァッと笑みを浮かべてティアラに抱き着く。

 周りを見ればそんなティアラとミファーの様子を見る他の生徒がいて、


「離れなさい」


「いて……」


 恥ずかしくなって、ティアラはミファーの頭頂部へチョップした。


「ミファー、早く」


「ぁ、うん……」


 やはりちょっとティアラに申し訳なさが残っているのか、ミファーは離れづらそうにしながらリーファのもとへ走った。

 最後までティアラを気にして、一瞥する。

 そんなミファーたち二人を見送ったあと、ティアラは呟く。


「ホントに、気にしすぎよ」


 それは嬉しさのこもった、あまのじゃくな一言だった。


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 図書館にやってきたものの、実際はあまりやることがないと、ティアラが体を貸してくれた。

 正直、毎週金曜日に借りているから申し訳ないのだが、ティアラの気遣いを毎回一蹴するのも失礼だろう。


『どう? 何かいい手掛かりみつけた?』


「う~ん、あんまりって感じだよ」


『残念ね……』


 その声はどこか眠そうだ。寝不足なのだろうか。

 そう思ってティアは聞こうと口を開くも、誰かが来たのを見て、通り過ぎるまで待った。

 それからもう一度口を開いて、


「ティアラ、寝不足なの?」


『えぇ、昨日の夜ちょっとね……』


「寝れなかったんだ……」


『ぇ? ぁ、まぁそんなところよ』


 ちょっと歯切れが悪いのが気になったが、別に隠すこともないんだし気のせいだろう。

 ティアは引き続き、本探しの旅に出ようとして――、


「ん、なんだこれ? ティアラ、これなんて読むの?」


 本棚の少し高い位置に見えた本の名前が読めない。

 ティアラの教えでティアはもうだいぶ文字を読めるようになってきているのだが、それでも読めない文字だった。


『――――』


「ティアラ? 寝ちゃった?」


『――――』


 どうやら本当に寝ちゃったようだ。

 ティアはつま先立ちで、その本へ手を伸ばした。


「ぁ、取れた……」


 もうだいぶ慣れてはいるが、やはりこの体は小さい。

 そんなことをティアラの前で言おうものなら、怒られてしまうから絶対に言うつもりはないが。

 それよりも今は、


「これなんだろ」


 本のタイトルが見えるものの、読めない。

 こんな文字は今までみたことがなかった。だが何というか、標準文字に似ているようにも思えなくもない。


「ゲームの歴史……?」


 ちょっと無理やりな気もするが、表紙にトランプや将棋やらが描かれているのを見ると、そう読める気もする。

 ティアはとりあえずその本を開いて――――、


「は?」


 言葉を失った。

 それは衝撃的という言葉で表せる驚きじゃなかった。驚愕。いや、それ以上だ。


「な、なんで、なんであかねが本に載ってるの?」


 その本のティアが適当に開いたページに、あかねの絵が載っていた。

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