第一章51 『飾り付け雇用説明会!』
寮の入口にミファーが立っているのを見て、ティアラは目を丸くした。
「何してるのよミファー」
「あっティアラ! ご、ごめんねおいてっちゃって」
「――? 何のことよ?」
おいてかれた心当たりがティアラはなく、思わず小首を傾げた。
「ティアラのこと、学園の前で待とおって思ったんだけど……」
「待ち合わせしてないんだからできなくて当然よ。どうせリーファがいつ終わるかわかんないから先に帰ろって言い出したんでしょ?」
「ううぇ!?」
なんでわかるのと言わんばかりに、目を大きくしてミファーは驚く。
「わかるわよそのくらい」
「――――」
「そんな顔しなくてもリーファのこと嫌いになったりしないわよ」
「えっ?」
この前のリーファとの喧嘩の時にミファーが見せた泣き顔を、ティアラはしっかり覚えている。
ミファーがなぜリーファとティアラの仲をこれほど気にするのかはわからないが。
「リーファのことだから、あたしがわざわざ待ってもらったって感じないようにしたとかじゃないかしら? ほら、行くわよ」
「ぅ、うん!」
元気よく返事したミファーと一緒に、ティアラは自分たちの部屋へと足を運んだ。
ドアノブを捻って中へ入ると、ベッドにうつ伏せになるリーファの姿が目に入った。
「ど、どうしたのよリーファ」
「んぅ……」
ゆっくりと見せたリーファの表情は、かなりへこんでいると一瞬でわかるほど落ち込んでいた。
「ティアラ、飾り付け雇用説明会の話する……」
「ぇ、えぇ……」
リーファの落ち込み具合にティアラはちょっと意外を感じる。
落ち込み気味なリーファにミファーが飛びかかり、抱き着いて引っ張って起こす。それから満面の笑みでティアラを見つめた。
と、その直後、ミファーの視線がちょっと下がった。
「ねぇティアラ、ポケットーになに入ってるの?」
『ポケットー?』
「へ?」
ティアの声は一旦スルーした。
見ればミファーの言う通り、ポケットが膨らんでいる。
一瞬本かと思ったが、フィエリアの部屋に忘れた日以降、ティアラは本を持ち歩いていない。だとしたら、なにが入ってるのだろう。
そう思って引きずり出すと、
「あ……フィエリアのナーフだ」
「ううぇ!?」
「ミファーうるさい」
「ごめんなさい……」
いつも通り綺麗な指摘と謝罪が流れるが、ティアラはそれよりポケットから出てきたものに驚いていた。
「それティアラのハンカチー?」
『ハンカチー?』
「ぇ、えぇ……」
さっきからティアが何か引っかかっているのを聞いて、ティアラは異世界人との言葉の違いに面倒くささを感じる。
まぁあとで説明してあげるとしよう。
それよりもだ。ティアラのポケットから出てきたのは、ハンカチで包まれたフィエリアのナーフだった。
フィエリアが自殺しようとした日、危ないからと言って回収していたが、まさかずっとここにあったとは。忘れていた自分に驚くと同時に、呆れてしまう。
「あとで返しに……いや、もう少し預かっておこうかしら?」
「それよりティアラ、飾り付け雇用説明会の話だけど……」
「あっ待って、あたしちょっとお手洗い」
それだけ言って、ティアラは自分の机にナーフを置いてから部屋を出る。
お手洗いというのは言い訳で、本当の目的は――――、
「ティア、何か聞きたいことは?」
小声で、ティアラはティアに話しかける。
『ある! ポケットーとかハンカチーとか!』
「ポケットーは服についてる物を入れるところ、ハンカチーは手を拭くものよ」
『やっぱりそうなんだ』
「やっぱり?」
『わたしの世界だとポケットとハンカチって呼ぶからさ。似てたからもしかしてって』
「なるほどね、じゃ、もういいかしら?」
『うん、ありがとう』
その言葉を聞いて笑みを浮かべ、ティアラは自室のドアノブを捻った。
「お待たせ」
「ティアラ早くない!?」
「あっ……」
お手洗いって言ってたんだった……
ティアラの反応を見たリーファが目を細めたのを見ると、別のことをしていたことを見抜かれたのだろう。
「まぁそんなことはいいのよ! リーファ、話してちょうだい」
「わかった。話を聞いた限り、私は、飾り付けの雇用がティアラに合ってると思う。仕事の内容は大通りとかにつける飾りの制作から、飾り付け。あとは企画者や小企画主、屋台主から依頼された飾りを制作し、装飾すること。飾りの制作は生成魔法。日給は銀貨十二枚だって」
「銀貨十二枚!?」
思わぬ額にティアラは声を荒げる。
ティアラの大企画の雇用額に比べればという点はあるものの、冷静に考えれば普通に高額だ。
「生成魔法を高度に扱える人が少ないからだって」
「な、なるほど……」
ティアラはちょっと考える。
だが最初から、ティアラの気持ちは雇用される方に傾いていた。ティアラは魔法が好きだ。だからそれができて給料もあるのなら、むしろやらない方がティアラ的には損になる。
「なら、受けようかしら」
「そ、なら明日先生に言って……」
と、それだけ言ってリーファはまたふて寝してしまう。
「ぁ…………」
二人に雇用されることを言おうか迷ったが、それを言ってしまっては喜ばれないことにティアラは気づいた。気づいて咄嗟に声を引っ込めた。
「んぅ……」
「リーファ元気出してぇ……」
ふて寝するリーファと、その隣に寄り添って慰めるミファー。
そんな二人を前に、ティアラはふっと微笑んだ。
明日は20時に投稿します。




