第一章31 『勘』
「ゲーム開始!」
そのアドバンの合図と同時に、生徒たちは標的へと襲い掛かる。
もちろんティアラとリーファもアドバン向かって木剣を振り下ろすものの、たやすく躱される。
「もっとかかってこい! まだまだ余裕だぞ?」
「全然当たんない……っ!」
「剣術では相手の先を読んだ方がいい。あとは見せかけの攻撃をするとかも必要になってくる!」
言いながらあらゆる方向からくる刃を自身の木剣で防いだり受け流したり、アクロバティックな動きをして躱している。
「教えながら避けてる……」
「リーファ、加護使えないの?」
アドバンの人間離れした動きを見て引いたリーファに、ティアラはこのままだと勝てないと質問する。
「私の加護使ったら一瞬で終わるよ?」
「え? そ、それってどういう……」
「みればわかる」
そう言ってリーファが前に出る。そして木剣を振りあげる。
それをアドバンは防ごうとするが――――、
「えっ……」
その瞬間、アドバンの動きが完全に止まった。
そのままリーファはアドバンの腕に木剣を振り下ろした。直撃と同時に動きが再開し、アドバンはリーファの攻撃を防ぐ動作を遅れてする。
その直後、アドバンはようやく攻撃を受けたことを理解したのか、剣を下ろす。
「なんだ今の、見えなかったぞ……。すごいな君、名前は?」
「リーファ」
「そうかリーファちゃんな? 覚えておくよ」
そうしてゲーム終了となり、いつも通り落ち着いた様子でこちらへ歩いてきたリーファへティアラは問う。
「どういうこと?」
「言ったでしょ? 一瞬で終わるって……」
「いや、リーファ……」
「うん?」
「なんでも、ないわ……」
リーファの加護の詳細を知りたかったが、加護の情報を聞き出すのは野暮だなと思い、口を閉じた。
少ししてアミリスの方のゲームも終わった。どうやらミファーが一撃与えたようだ。
ゲームのあとは魔法の授業と同じような授業スタイルで進み、やがて昼食の時間になった。
昼食と言うことでティアラたち三人は学園の食堂にて食事を摂っていた。そんな時、ティアラの隣に誰かがやってくる。
「ティ~アラ……!」
「んっ!? ぉ、お母様!?」
「ティアラのお母さんだぁ!」
突然現れたアミリスに驚くティアラと、目を輝かせるミファー、相変わらず落ち着いた面持ちなリーファ。
その三人の様子にアミリスは微笑んだ。
「ティアラと仲良くしてくれてありがとうね。なんて言うの?」
「ミファーだよ!」
「ミファーちゃんね? じゃあそっちがティアちゃんかな」
「んむぅ~っ!!?」
残ったリーファの名前の予想に、ティアラは思わず含んでいた飲み物を吹き出しそうになる。
「ティアちゃんってだぁれ?」
「――? 違うの?」
「はい。私はリーファです」
「そうなのね。てっきり、ティアラが手紙で言ってた子なのかと思っちゃった、ごめんね」
「いえ、全然大丈夫です」
『ほらティアラ! だから手紙にわたしの名前は出さない方がいいって言ったんじゃん!』
「仕方ないでしょ! 書きたかったんだもん!」
「ティアラ?」
「な、なんでもないわお母様!」
「何か隠し事してるね?」
じーっと見つめてくるアミリスに、ティアラは目を泳がせる。
「まぁいいよ。隠し事については今更だしね」
「ぃ、今更?」
「学園に入学する一ヶ月前くらいから何か隠してるような気がしてたの。ミャミュもね……」
「ミャミュ!?」
「ど、どうしたのミファーちゃん?」
「ぃ、いやぁ、なんでもぉ、ない、よ?」
「そ、そうなの?」
あきらかに動揺した声と顔で応じるミファー。やはりミファーはミファーだ。
「まぁでも、ミャミュとティアラが隠し事共有してるみたいだったから、大丈夫かなぁと思ってたの。隠すのはいいけど、何かあったらちゃんとミャミュに相談してね?」
「は、はい……」
あまりにも図星を突かれすぎて、ティアラは正直に頷くしかなかった。
「そう言えばこのあとの授業は、加護持ちだけの授業だからね?」
「ううぇ!? そおなの!? じゃあ加護持ってない人は?」
「たしか下校だったと思うよ」
「ううぇ!?」
「ううぇううぇうるさいミファー」
「ごめんなさい……」
しょぼんとするミファー。
それをみて言い過ぎたと思ったのか、リーファが『その授業は特別なものってことですよね?』とアミリスに聞き返し、アミリスもアミリスで意図を読み、『うん、そういうこと』と答えた。
すると――、
「ならやったぁじゃん! やったぁ!!」
と、ミファーが騒がしく嬉しそうな声を上げた。




