第一章29 『突然』
「やっとよ! やっときたわ!」
「ティ、ティアラちょっと早い」
そう言って小走りで自室へと向かうティアラを追いかけるのは、ミファーとリーファだ。
だがティアラが足の速さを緩めることはなかった。
寮に入ったところにあるカウンターで、手紙を渡された。差出人の名はアミリス・ル・フォーカムだ。
――そう、ティアラが送った手紙に返事が来たのだ。
部屋に入ると、かばんをベッドの上へ放り投げ、自分の机の椅子に腰を下ろす。
満面の笑みで手紙を開封し、ティアラはさっそく読み始める。
ティアラへ、手紙を送るのが遅くなってごめんね。ようやく時間が取れたから、返事を書くね。この前ティアラから手紙が来た時、すっごく驚いた。学園からは不登校だって聞いてたし、ずっとティアラからの連絡は来なかったし、心配してた。だからティアラが魔法を発動できたって聞いて、お母さん嬉しかったの。もちろんアドバンもミャミュも同じ。ティアラを救ってくれたって言うティアって子にも、感謝しなきゃね。……それでその、ティアラがお母さんと勝負したいとか、アドバンに剣術を教わりたいって、言ってくれたでしょ? それでちょっと、お母さん張り切っちゃって、数日後に学園で授業することになったの
「えっ?」
「ううぇ!!?」
「わぁ!?」
まさかの文面にティアラが思わず声を出す。と、それに続き、隣でミファーが大きく驚きの声を上げ、ティアラはびっくりして椅子ごと後ろに倒れる。
「ティ、ティアラ大丈夫ぅ!?」
「大丈夫じゃないわよバカ! なに勝手に覗いてんのよ!」
「ご、ごめんなさい。ティアラが熱心に見つめるから、なに書いてるのかなって気になって……」
そう言って手を差し出してくるミファーの手を取り、起き上がる。
「まぁいいわ。それより、学園で授業するってなによ」
「ねぇねぇねぇティアラティアラ! ってことはさ! 先生がゆってた特別授業ってティアラのお母さんたちがするってこと!?」
「そう、なるわね……」
もう一度手紙を見るが、『だから、学園でまた会おうね』と続き、終わっている。
手紙には数日後に学園で授業することになったと書いている。この手紙を書いたのがいつかはわからないが、早くても一日前くらいだろう。
そうなると、数日どころか明日にでも特別授業がありそうなくらいだ。
「――――」
突然の展開にティアラは言葉を失うが、何もできることはなく、その日は静かに終わりを迎えるのだった。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「うぅ、眠い……」
次の日、学園に登校したはいいものの、ティアラは眠気に抗い続けていた。
というのも、昨日あんな手紙が届いたから、あまり眠れなかったのだ。
「ティアラ大丈夫ぅ?」
そう言って、机に伏せるティアラの顔を覗き込んでくるミファー。その顔は少々心配気味だ。
「大丈夫よ。それよりもミファー、今日の時間割は?」
「えっとねぇ、あれ? なんか全部特別授業になってる!」
「ホントだ」
「え?」
ミファーの言葉に続き、リーファの肯定が重なれば、ティアラは慌てて黒板に書かれた時間割を確認する。
「まさか……」
「はぁいみんな席についてぇ! 今日は特別に、あの有名な二人が授業してくれるよ」
続いて『お願いします』と先生が言い、教室のドアが開かれる。
一人は赤い髪を、もう一人は銀色の髪を揺らしながら、コツコツと足音を鳴らしながら教室の中へと入ってくる。
アミリスと、アドバンだ。
「ぁ……」
言葉が、見つからない。
ティアラはただポカンと口を開けたままになるしかない。
「こんにちわ! 私は魔法騎士団所属、魔法士団長アミリス・ル・フォーカム。そしてこっちが」
「騎士団長アドバン・ア・フォーカムだ。今日は特別に君たちの授業を受け持つことになった。基本は魔法や剣術の授業になるが、途中に遊びも挟もうと思ってるから楽しくやろうな」
直後、沈黙が生じた。
一、二、三秒と、静粛が訪れ、そして――――、
クラスメイトたちの驚きの声が、教室中に響き渡った。
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