序編第三章60 『雪合戦最強決定戦!』
「さぁ! 大企画のルール説明を始めるわよ!」
お母様、喜んでくれてるかしら?
司会を回しながら、ティアラは自分の贈り物への反応が見えずにちょっと気になっていた。
「今回の大企画は『雪合戦最強決定戦』よ! 六十人もいる選手の中から、最強を決める戦いになるわ!」
ティアラは一呼吸おいて、
「ルールは簡単よ! 選手は魔法陣を手前に出現させるメダルスを三つ所持してるわ! その魔法陣は当たると消えるようになってて、出現してる魔法陣がゼロになったら失格になるっていうルールよ!」
『メダルス? ねぇティアラ、メダルスってなに? メダル?』
流石に今は喋れないわよ……
ティアの質問にジト目になりつつ、ティアラはルール説明を続ける。
「加護とソースの使用は可能! 魔法は分解魔法と変形魔法が使っていいことになってるわ! 生成魔法も使っていいけど雪玉のみ! 雪玉以外の選手への攻撃は一発退場よ! それと客席への被害になるような行為は失格になるわ! まぁでも、万が一何かあったらお母様たちが守ってくれるわ! だから安心しなさい!」
ちょっとばかしティアラはアミリスたちに寄りかかった発言をする。
その無茶にアミリスが「ホントにティアラは、もう!」と泣きそうで嬉しそうな声を出したことはティアラには知る由もない。
「今日は午前に十二回、集まった六十人の中から五人ずつ戦って、準々決勝に出る一人を決めるわ! それで決まった十二人には今日の午後に三人ずつ戦って、準決勝に出る人を決めてもらうわ! そしたら明日、午前中に準決勝を行って、午後に特別ルールを追加して決勝戦を行うわよ! それと、なんで舞台に雪があるのか、気になった人がいると思うわ。残念なら雪が降らなかったから大企画側で用意させてもらったわ。それじゃあ、第一回戦を始めるわ! 入ってきて!」
ティアラがそういうと、第一回戦に出場する選手たちがぞろぞろと舞台に上がっていく。
「言ってなかったけど、最初の十秒だけ、即失格が出ないように魔法陣が展開されないわ」
そんなことを言っていると、ミファーが舞台に上がっているのが見えた。
こちらに手を振ってきている。
「今あたしに手を振ってる水色髪の子だけど、あたしに内緒で参加してるつもりみたいよ。全然バレバレだったんだけどね」
「ううぇ!? そうなのぉ!!?」
「えぇそうよ」
と、ティアラが真顔でそう言えば、客席の人たちが大きく笑う。
「こんなだけど、あたしを驚かすために内緒にしてたいい子ではあるわ」
「わ、わぁ! ありがとぉ」
「っと、みんな準備ができたみたいね! じゃあ早速行くわよ! 第一回戦! スタート!」
ティアラの開始の合図と同時に、舞台にいる五人の選手たちが一斉に変形魔法を使い、自分たちの前に雪の壁を作り上げる。
最初に十秒は魔法陣が表示されないから安心だが、それは十秒過ぎたら危ないということでもある。
だから障害物を作り、安心できる場所を作るという魂胆なのだろう。ここまでは、企画者であるイラディスも想定していた。
「みんな一斉に雪の壁を作ったわね! おっと! ここでアニムス選手が別の選手のところへ!」
まだ魔法陣は展開されていない。
それでもアニムスは別の選手が作り上げた障害物の前まで走る。走っている。
「そして雪の壁を、破壊……できなかったわね、失敗かしら? 大丈夫? 手、痛くない?」
「痛い!!!!!」
「痛いそうよ! そりゃそうよね痛いわよね! けどここで魔法陣展開!」
雪の壁の破壊を試みて殴りかかったアニムスが、見事に失敗して手を押さえる結果に終わった。
そのタイミングで魔法陣が展開されれば、障害物も何もない場所にいるアニムスは格好の的だ。
「全方向からアニムス選手に雪玉が! っとアニムス選手全方向に雪の壁を作って防いだわ! すごい!」
その時、ミファーが大きく空に跳び上がる。
――軽く五メートルは跳んでいる。
「な! なんか跳んだわ!」
「なんかじゃないミファー!」
「ミファーらしいわ!」
ちなみにだが、選手たちの声量も若干魔法陣で拡張されている。実況のティアラの声が掠れない程度の拡声だ。
跳び上がったミファーはアニムスに目掛けて上から三連続で雪玉を投げつける。
「ミファー選手がアニムス選手目掛けて雪玉を投げたぁ! けど防がれたわねミファー」
「なんでぇえ!?」
アニムスが壁に屋根をつければ、ミファーの雪玉はその屋根の上に衝突してアニムスの魔法陣には当たらない。
ミファーはそのままの勢いで落下し、着地の寸前に突然減速し、屋根の上に着地する。
「っと、ここで一人脱落よ! 今のミファー選手とアニムス選手の攻防の間にやったなんてすごいわ! けどその代わり魔法陣が一つ壊れちゃったみたいねプレティウム選手」
ティアラが気づかぬうちに一人の魔法陣がプレティウムによってすべて破壊された。
今更だが、ティアラはすべての選手の名前を覚えている。そして誰の魔法陣が壊れたかも常にわかるようになっているのだが、それがなかったらずっと気づかなかっただろう。
っと、ここでミファーがアニムスが隠れている隠れ家を分解魔法で崩した。
「おっとここでミファー選手がアニムス選手の隠れ家を崩したわ! アニムス選手逃げを選択! っとミファー選手すごい! すごいいっぱい投げてる! 数撃ちゃ当たる戦法じゃない! やっぱミファーね!」
「今ミファーのこと悪くゆったぁ!?」
「ミファー選手の戦法も相まってアニムス選手も残り魔法陣が一つになったわ。っとここでプレティウム選手がミファーに仕掛けたぁ! え? ええええ!?」
プレティウムがミファーに目掛けて雪玉を三つ投げた。しかも綺麗に魔法陣の場所を狙っていた。
――はずなのに、次の瞬間、プレティウムの魔法陣がすべて破壊された。
「ミファー選手とプレティウム選手の位置が一瞬で入れ替わった? どういうこと!?」
メダルスを入れられる場所などあまり多くない。だからミファーとプレティウムの魔法陣の位置は被っていた。
そのせいで、位置を入れ替えられたプレティウムの魔法陣が、自分の攻撃によってすべて壊れてしまったのだ。
「ふふん! すごいでしょティアラ!」
「なにそれ……ひどい」
「あぁ、えっと、えぇ、それに関しては同感だわ……」
完璧に投げた雪玉が自分の魔法陣を破壊するなんてことになるなど、普通にショックだろう。というか、ミファーの能力が出鱈目すぎる。
「残り三人! 段々と強者が絞られてきたわね! ってわぁ!」
その瞬間、舞台が綺麗に二つに別れた。雪壁によって二つに分断され、その片方にはアニムスの姿があり、
「アニムス選手によって戦場が二つに分断されたわ! 片方にはアニムス選手、もう片方にはミファー選手とィ、イラディスさん!? なんで!?」
「一人病気になっちゃった子がいたから代わりにね」
「まさかの企画者本人が出てきたわ! この戦いどうなるのかしら?」
ミファーとイラディスの一騎打ちだ。この状況はアニムスが意図したものだろう。果たしてどうなるのか。
――その時、イラディスが動いた。
雪玉を一つ生成し、それをミファーに向けて投げる。が、
「え? 届いてない、わね……」
「あぁダメだ。やっぱ俺力弱ぇや」
その時――、
「なっ! なによそれ!」
ミファーとイラディスの位置が入れ替わった。しかも、向き合っていたはずなのにイラディスはミファーに背中を向けている状態になっている。
すかさずミファーが雪玉を生成し、いっぱい投げまくる。
「っとまたミファーの数撃ちゃ当たる戦法よ! 二枚割ったわ! けどイラディス選手が雪の壁を作って防がれたわね! ってまた跳んだわ!」
ミファーが空高く跳び上がり、イラディスの頭上から無数の雪玉を落とす。生成魔法で一気に作って、投げるのは重力に任せて投げる動作を省いたからすごい量だ。
「あぁ! 割れちゃったわね……」
ミファーは見事イラディスの魔法陣をすべて割り、イラディスの隣に着地する。
「どんまいだよぉ!」
「ミファーそれ煽りよ」
「ううぇ!?」
と、驚いたその瞬間、ミファーの後ろにある雪の壁が一気に崩壊する。その中からアニムスが現れて、
――コケた。
「ぁ……コケ、ちゃったわね……」
「わぁ! 大丈夫ぅ?」
「大丈夫じゃない……」
言いながら、ミファーは背中側にある魔法陣を手に持っている雪玉を当てて壊す。
「ごめんね」
ミファーがそう言った次の瞬間、ミファーが指パッチンをしたかと思えば、アニムスがその位置に上向きになって転移し、そのまま落下して背中を打つ。
すかさずミファーが雪玉を二つの魔法陣に当てて割った。
「ミファーがアニムス選手の魔法陣を割ったわ! これで準準々決勝進出はミファーよ! アニムス選手は……きっと朝食食べてなかったのよ」
そういうことにでもしてあげないと、恥ずかしくて死んでしまうだろうと、ティアラはちょっと気を使う。少しして、触れないのが正解だと気づいたが、
「ということで第一回戦、終了よ!」




