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異世界クエスト  作者: 太郎
異世界クエスト中
72/95

第64話-おすしとあらしのせんたくし(下)

ここは、宿屋の大広間。

仲間たちの集まるテーブル。

注がれる期待の視線。



「本日のメニューはこれだ!」



俺は料理を食卓の中心に置いて、

かぱっと、フタを取った。


皿の中身は……



……刺身の盛り合わせ。



えっ? 普通?

いやいや、期待しすぎでしょ?



短時間で出来る魚の切り身を使った料理……

寿司ではないが、これも立派な和食の1つだ!


きっと喜んでくれるはず!

そうだろ!? なぁ! みんな!




「これは、俺の故郷の料理!

 サシミという伝統的な料理だ!!」


「……えっ?

 ……あっ……うん」


「あ、聞こえなかった?

 これは、サシミという料理なんだ!」


「うん……でもこれ…… 

 魚切っただけ……」


「いいや、これは完成された料理なんだ!」


「えっ…?

 でも……生……」


「……いや、料理なんだ」


「……さかな」


「……料理なんだ!」


「……切った……」


「……もう!!

 料理だって言ってるでしょ!!」




強引に押し切る俺。

見慣れぬ料理に戸惑う少女たち。


……もう俺は、半泣きである。


食卓に手を突っ伏して、涙を堪える男泣き。


せっかく……

せっかく、良いところを見せたかったのに……



「ま……まぁ!

 とても綺麗な盛り付けですね!

 さっ!皆さん!

 さっそく頂きましょうか!」


「……お、おう!

 そうじゃな!

 それで、エイジよ!

 これは どうたべるのじゃ?

 この場で やくのか?

 それとも にるのか?」



嗚咽を堪える俺を見かねて、マリーさんがフォローを入れ、

アインが食べ方を聞いてきた。



「どうって……

 このまま……

 このまま食うんだけど……?」



率直に答える俺。


刺身に食い方などは無い。

わさびと醤油で十分に美味いだろう。


しかし、俺の回答を聞いて、

ピキッっと、マリーさんとアインの顔がこわばる。


さらに困惑する少女たち。

長い沈黙……


そして、誰一人として、料理に手を伸ばそうとしない。

……なぜだ?



「その……

 言い辛いんだけどさぁ……」



目を逸らしながら、バレーが小声でつぶやく。



「あたいら、生で魚は食わないからさ……」



……へっ?

お前ら、刺身食わないの?


そう言えば、生食文化って、

日本以外じゃ珍しいって……


ドロップの【アカミ】を拾ったときも、

バレーは焼いて食うとか言ってたし……




「……なんか、

 ……ごめんな?」



バレーが優しい表情で語りかける。

……お前、そんな顔、今まで一度もしなかっただろ。


……やめろ! その目はやめろ!

憐みなんかいらねぇよ!



まさかの拒絶、鎮まり返る室内。



あれ?

……なんだこの空気。



……おい、作者……!!

普通、こう言うのってヒットするんじゃないの?

おいしー! おいしー! とかって、

黄色い歓声が上がるんじゃないの?


引っ張っといて、この結果?

そりゃあ、読者もがっかりだよ!


異世界に来てから、

何一つセオリー通りに進んでないよ!?

物語としてこれでいいの?

異世界和食、ウハウハ大作戦は!?



「あの……

 ごめんなさいっ!」



ショックのあまり、謎の相手にキレていると、

場の沈黙を打ち破って、

ライクちゃんが突然、声をあげた。



「エイジ君は、

 本当は別の料理を作るはずだったんですっ!

 でも、あたしが邪魔しちゃって……」



うつむいて、気まずそうに喋るライクちゃん。

どうやら俺を助けてくれている様だ。



「そっ、そうじゃったのか!

 まぁ、このていどのトラブルは

 いつもの通りじゃな!」


「えぇ!そうですね!

 大丈夫です!ライクさん!」



アインとマリーさんは慣れたもので、

笑ってその場を取り繕う。



「……あっ!そうだったんすか!

 いやー、あちしも驚いたっす!

 もーエイジっち!

 ドンマイ!ドンマイ!」



クロルも助け舟に便乗し、

空気を和ませようと、話を合わせる。



しかし、バレーは腕を組んで難しい顔をしている。

おい、空気読めよ。



「……あんたらさー

 いつもこうなのかい?」



必死で場を盛り上げようとする努力を無に帰すように、

バレーが、低い調子で呟いた。



「えっ、あぁ、まぁそうじゃのぅ……」



アインが、腫れものに触るように答える。

一気に雰囲気が悪くなる。



「お嬢ちゃん……

 ライクちゃんって言ったっけ。

 あんた属性は?」



まるで尋問の様なバレーの質問は続く。



「あたしは『闇』……です……けど……」



ライクちゃんは、

間違ったものでも飲み込んだ様子で、

おずおずと答えた。



「そうかい……

 アホ面、あんたは?」



なんだ、俺にも聞くのか?



「俺は『光』だけど……?」



「そうかい。

 そりゃー上手くいかないわけだ。

 あんたら相性、最悪じゃないか……」



バレーは、腕を頭の後ろに組み、

足で食卓を突っ張って、

椅子をロッキングチェアーの様に漕ぎだした。



「いつもってことは、あんたら2人が揃うと、

 アホ面は、面倒に巻き込まれるんじゃないか?」



……まぁ、それはそうだ。

騎士団に捕まったときも、今回の出来事も、

大体はライクちゃんのせいで、

トラブルに巻き込まれている。



「それに……」



今度は、アインとマリーさんに視線を移し、

バレーは退屈そうに話を続けた。



「アホ面の仲間だから、

 さぞかし猛者揃いかと思ってたんだけど、

 ふたを開ければ、マリーさん以外は、

 ほとんど、初心者レベルだし……」



「ちょ! バレーっち!?」



バレーの思わぬ発言に、クロルが驚き止めに入る。



「ひょっとして、あんたら……

 パーティーとして機能してないんじゃないの?」



クロルの制止を無視して、

バレーはスッパリと言いきった。



「おい!バレー!

 それは言い過ぎだ!」



俺は仲間を侮辱された怒りで、

つい大きい声を出してしまう。


しかし、そんな俺の怒りを気にも止めず、

バレーはその燃える様な真紅の瞳で、

真っ直ぐに俺を見据えた。



「あたいが、ここに来たのは、

 食事のためだけじゃない……」



引き込まれる様な眼差し。

バレーの言葉は続く。



「ずっと言おうと思ってたんだけど……」



バレーは言葉をためて言った。



「アホ面……

 あんた、あたいのモノにならないか?」



鎮まり返る部屋。

耳を突き刺すような静寂。


バレーが発した思わぬ選択肢、

これは……大嵐の予感だ。




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名前 ライク・ブルックリン 

   友好度   60 

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名前 アイン・アルバトロス 

   友好度   60  

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名前 マリーシア・スローウィン

   友好度   60 

■■■■■■■■■■■■■■■■■■


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名前 バレー・ゴルド―・スパイク

   友好度   60  

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■■■■■■■■■■■■■■■■■■

名前 クロル・スイム 

   友好度  70

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