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異世界クエスト  作者: 太郎
異世界クエスト中
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71/95

第63話-おすしとあらしのせんたくし(上)

賑わう街角、入り混じる様々な匂い。

手に荷物を持った、沢山の人。

ここは、グランポートの商店街。



「っあー、疲れたなぁ……」



俺は今、歩道に設置されたベンチに腰をおろし、

つかの間の休憩を取っていた。


俺の横には、買い物袋に入れらた大量の食材。


慣れない食材の買い物に、俺は困難を感じていた。



「もう、買い忘れは無いよな……?

 というか、そもそも何を買ったかも、

 分からないし……」



買った品が多すぎて、ではない。

そもそも最初から、

何を買ったか分からないのだ。




……そう。

買い物にあたって、俺が一番困ったのは、

言語の翻訳システムの落とし穴だった。




知っての通り、この世界の言葉は、

もとの世界の言葉とは違う。


確か、異世界に来て初めての頃、

俺は【グランアルプ】の町を小1時間ほど観察し、

その事実を発見したはずだ。


でもまぁ、何故か意味は伝わってくるし、

会話に不自由も無いので、

今までは、さほど気にしなかった。


だが、この翻訳システム……

固有名詞については、

翻訳が働かない場合があるのだ。



例えば……


キュウリは、こちらでは『キュリーの実』

トマトは、『トーマの実』

と、言う具合にだ。


まぁ、これくらいなら許容範囲だし、

『ハチミツ』や『サケ』など、

偶然同じ名前の食材もある。


だが、他方では、リンゴっぽい果実で、

名前が『コームの実』なんてのもある。


見た目がほとんど同じでも、

異世界にしかないものは、

当然、訳の分からない名前が付いている。



まぁ、何が言いたいかって言うと、



「……俺が買った魚……

 ……食えんのかな?」



……と言うことだ。



いやいや、一応、魚屋で買ったんだから、

食えないはずはない。

魔導機を使って、自分で【アナライズ】もしたしさ。


でも……


カシャ


■■■■■■■■■■■■■■■■■■

名前 カーッオ魚(別名イソノケチョウナン)

効果 寄生虫がいる場合があるが、

   食しても、人体に影響は無い。

■■■■■■■■■■■■■■■■■■



とか、出ちゃったらさ?

……食いづらくない?



「まぁ、いいか……

 大体買い物も済んだし。

 一度、戻って料理してから、

 バレーとクロルを呼びに行くかー」



ライクちゃん達には、部屋の準備と、

食器等を揃える係りを頼んである。


後は俺が料理を済ませ、

バレーとクロルを迎えに行けばいい。



……さっそく、俺は帰って準備を始めた。



「ただいまぁー」


「おー! おそかったのう!」


「まぁ……多少手間取ったからな。

 でも、結構、良さそうなものが

 買えたぞ?」



宿に着いた俺は、挨拶をすませると、

荷物を置き、厨房を借りて、料理を始めた。



とりあえず、鮮魚があるので、

寿司を作ろうと決めていたが、

実際にやってみると、

寿司を握るのは意外と難しかった。


酢と砂糖で酢飯を作ることにまでは成功したが、

握る技術がないため、かなり不格好になる。



具体的には、

べちゃべちゃの米の塊に、

魚の切り身を被せた様な、

謎の物体Ⅹが出来上がった。


……うん。

これはマズそうだ。



素人の俺に握り寿司は、不可能であると分かったので、

諦めて、手巻き寿司に変更する。


さすがに海苔の様な食材は探せなかったので、

レタスっぽい『レ―タの葉』で代用する。


手巻き寿司なら、好きな具材を選べるし、

楽しんで食べてもらえるだろう。



俺は、シャリはそのまま放置して、

次の味噌汁の準備にかかった。



日本食と言えば、味噌汁も有名だ。

それに、洋食で言うスープ的な意味でも、

汁物は用意しておいた方がいいだろう。



俺は、鍋に水を張り、

買って来たシイタケの様なものを入れ火にかけた。


鰹節とか煮干しとかあればよかったが、

とりあえずこれでもダシは取れるだろう。


ダシが取れたら、味噌を入れて、

さっとネギを浮かべよう。


多分、この『ダイーズ豆のペースト』と、

『ネーギの実』って奴で、代用できるはずだ。


後は、カッパ巻き用に、

『キュリーの実』を細長く切ったり、

卵を溶いて、厚焼き卵を作ったりする。



代用品が多いし、不格好な部分もあるが、

皿に並べるとそれなりに手巻き寿司のネタに見えた。



よし!

下準備もほぼ終わったし、

バレーとクロルを呼びに行くか。



「ライクちゃん、

 俺、バレーたちを呼びに行くから、

 料理を少し気にしててくれる?」


「うん! いいよエイジ君!

 いってらっしゃいっ!」



俺は、ライクちゃんに厨房の様子を

見ていて貰うことにする。

味噌汁の鍋も、火にかけたままだしな。





そして、数十分後……



……再び戻った俺は、

厨房の様子に、強い衝撃を受けていた。



……用意しておいた食材が、

消えている……だと!?



「あの……

 ライクちゃん……

 ここにあったご飯は?」


「えっ?あれ?

 酸っぱい匂いがしてたから捨てたよっ?」


「…………」



すすす……寿司なのに、シャリがぁ!

シャリが無くなってしまった!


……ちがうよー!

あれは腐っているんじゃなくて、

もともと、酸っぱくしてあるんだよー!



「えっ!? そうだったの!?」



ライクちゃんが、俺に謝罪する。

……まぁ、シャリぐらいならまだ間に合う。

大丈夫だ。

慌てる様な時間じゃない。



……しかし、気になるのは、

皿に並べてある謎のキノコだ……

これは、まさか……?



「あっ!それは大丈夫!

 茹でていたキノコを取り出して、

 ゆで汁は、ちゃんと捨てておいたよっ!」


「…………」



みみみ……味噌汁のダシがぁ!

ダシが無くなってしまった!


……ちがうよー!

あれは汁の方が必要なんだよー。

こんなダシが出きった、

カピカピのキノコに用は無ぇよー!


マ○オだって、こんなキノコ食わねェよー!



「えっ!? そうだったの!?

 でも、マ○オって誰!?」



ライクちゃんが、再び俺に謝罪する。

……まぁ、ダシぐらいならまだ間に合う。

大丈夫だ。

慌てる様な時間じゃない。



……そうだ、寿司ネタは、

せめて、寿司ネタだけは無事でいてくれ!



「あっ!

 並べてあった『キュリーの実』と

 『レ―タの葉』は、

 ちゃんとサラダにしといたよっ!」


「…………卵焼きは?」


「大丈夫、ちゃんと混ぜたよ?」



……ちがうよー!

あれは、あのままでいいんだよー!

食卓で具材を選んで、そのまま食べるんだよ!


っていうか、食材ほぼ全部消えてるよ!

もう駄目だ!

慌てる様な時間だよ!



「あの……

 皆さん、既に食卓でお待ちですが……」



料理が遅いので、

マリーさんが心配して、厨房まで現れた。


あぁ……もう魚の切り身しかない。


……これだけで、

これだけで何か和食を作らねば!!



「遅いぞー!

 いつまで待たせるんだよー!」



……数分後、料理を持って食卓に向かうと、

バレーが悪態をついてきた。


皆、食事の用意をして、席に付いている様だ。



「エイジの こきょうの 料理!

 たのしみじゃのー!」



アインが期待に満ちた表情をしている。


キラキラと輝く視線が刺さる。

あぁ、なんだか心が痛い……


……だが、しかし!

俺も限られた時間でベストは尽くした。

短時間で出来る魚の切り身を使った料理……


それは……


これだ!!


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