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異世界クエスト  作者: 太郎
異世界クエスト中
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73/95

第65話-ヒロイン選択の苦悩

「今日はなんか……

 すまなかったっす……」


「いいよ。気にするな。

 クロルが謝ることじゃないさ」



ここは、クロル・スイム人形屋。

俺は椅子に腰かけ、クロルはタライに入っている。


俺は、宿からクロルをここまで送り、

そのまま、少し休憩をさせて貰っていた。


外は、夕暮れ時を少し過ぎた。


日は落ち、夕焼けに染められた景色は去り、

辺りには、夜の帳が下りようとしていた。


あの後、バレーは先に帰ってしまったため、

俺がクロルを送ることになった。


食事会は、気まずい空気のまま、

なし崩し的に終わった。

クロルの謝罪は、そのことについてだった。



「しかし、本当にびっくりしたっす……

 まさかバレーっちが、

 あんなこと言いだすなんて……」


「あぁ、あれには……

 俺も色んな意味で驚いた」



唐突にされたバレーの、

「あたいのモノになれ」発言……

その真意は、自分のパーティへの勧誘だった。



あの後、俺たちが徐々に会話を掘り下げていくと、

バレーの言う「あたいのモノ」は、

不良漫画によくある番長の台詞……

「うちのモノが世話になったな」に言うところの

「うちのモノ」に近いニュアンスだった。



つまり、あたしのパーティに加わらないか?

という誘いである。



……まったく、ややこしい。

あの言い方では、プロポーズの様に聞こえる。



バレー曰く、冒険者たるもの、

パーティのバランスも考えなければならない。

しかし、俺はそれが出来ていない、と。



俺も、この異世界には個人ごとに属性があり、

また、その属性には弱点関係があることは知っていた。


異世界での曜日の逆順、つまり……


闇→土→金→木→水→火→光


以上の順で相性が悪い。



しかし、バレーが言うには、

この属性順には、もう一つの側面、

相性のいい補助関係もあるらしい。


それは、光と闇を抜いた5つを、

1つ飛ばしでたどる関係。

つまり……


金は水を生み、土は木を生じ、

木は火を生じ、火は土を生じる。


以上の関係だ。


金が水と言うのは、イメージしにくいが、

冷えた金属を放置すると理由が分かる。

そう結露だ。

日本の五行思想に近い考え方だろう。



そして、これらを基に、俺のパーティを分析すると……


俺は、ライクちゃんを傷つけ、

アインは、俺を傷つけ、

マリーさんがアインを助長する関係となる。


確かに、決して良い組み合わせでは無い。



あの言葉の後、バレーはこう続けていた。



「Sランクの冒険者ともなれば、

 危険なクエストだって沢山あるんだ。

 仲良しごっこをしている分には、

 良いかもしれない。

 だけど、少しのトラブルが、

 お互いの命を危険にさらすこともあるんだ」



お互いに足を引っ張り合う様な関係は危険だ、と。



「そんなの、俺が皆を護ってみせるさ!」



当然、俺はバレーに反論した。

仲間を馬鹿にされたようで、熱くなっていたし、

上から目線のバレーが気に食わなかったからだ。


しかし、バレーにあっけなく言い返されてしまった。



「……何かを護りながら戦うってのは、

 簡単なことじゃないんだよ。

 あんたの強さは認めるが……

 なんて言うか、あんたの強さには、

 そういう重みが無い……」



……確かに俺の強さは、全て爺さんのおかげ、

俺の努力で得たものではない。



「だけど、俺たちはそれぞれ良いところがある!

 バレーは知らないかもしれないけど、

 アインやマリーさんだって……」


「知ってるよ、アイン・アルバトロス。

 魔石商アルバトロス家の御令嬢だろ?

 で、貴重な【神鉄の巫女】だ。

 マリーシア・スローウィンは、高名な召喚士。

 だが、優秀な鍛冶師や召喚士ではあっても、

 優秀な冒険者では無い」



その通りだった。

バレーは先輩の冒険者として、

ことごとく正論を通す。



「あんた、今度の討伐戦にも参加するんだろ?

 悪いが、このままのパーティじゃ、

 命を捨てる様なもんだ」



異世界での冒険は、ゲームでは無い。

ここでの死は、本当に死なのだ。


あの時のバレーの険悪な態度は、

真剣に俺の生死を案じた結果。



「悪いことは言わない。

 あたいのパーティに入んな、か……」



俺は、バレーの会話を回想し終え、

深いため息をついた。



「エイジっち……」


「確かに、バレーの言うことは正しいが……」



正しいが、俺にも情と言うものがある。

今まで一緒に過ごした仲間を捨て、

ホイホイと別のパーティーに入るのは、

簡単にできることではない。



「エイジっち……

 バレーっちのこと、

 嫌いになったっすか……?」



クロルが心配そうな顔をする。



「いや、バレーも俺や仲間のことを、

 真剣に考えたからこそ、言ったんだろ。

 仲間が死ぬって、嫌だからな……」



大丈夫、嫌いになってないと、

俺はクロルに笑いかけた。



「よかったっす……

 バレーっちもあれで、有名っすから、

 結構、パーティ加入のお誘いもあるっす。

 でも、一時的に手を組むことはあっても、

 滅多な事じゃ、あちしとミットっち以外を

 パーティに入れようとはしないんす」



自分からパーティに誘うなんて、

初めてのことだ、とクロルが教えてくれた。



ここにきて、俺に提示された2つの選択肢。


1つは、今まで通り、

ライクちゃん、アイン、マリーさんと、

一緒に過ごすルート。


もう1つは、3人と別れ、

バレー、クロル、

そしてまだ見ぬミットという者と

一緒に過ごすルート。



普通なら、誠実にどちらか1つを

きちんと選択しなければならないだろう。



「あちしも……

 エイジっちが、

 ずっと一緒にいてくれるなら、嬉しいっす

 せっかく友達になれたっすから……」



クロルが、両手の指の先をツンツンと合わせながら、

上目づかいで俺を見た。


それは、俺も同感だ。

【グランアルプ】と【グランポート】は別の国にある。

帰れば、そうそう会えないだろう。



「困ったな……

 こんなことになるなんて、

 思ってなかったからさぁ」



俺一人では、処理しきれない問題。

……何か、参考になるものは無いだろうか。



「……そうだ!」



その時、俺にあるアイディアが浮かんだ。

うち爺さんのパーティを、

参考にすることはできないだろうか!?



「クロルの店にさ。

 バータさんの遺品とかないのか?」



うちの爺さんと仲間だった、

バータフライ・スイムさん。

彼の遺品の中に、

集合写真の様なものがあってもおかしくない。



「……まぁ、奥の倉庫部屋に行けば、

 あると思うっすけど……?」



……そういや、小さい頃も、

ゲームに行き詰まると、

よく爺さんに攻略法を聞いたっけ。



「頼むクロル!

 それを見せてくれないか?」



こうして俺は、バータさんの遺品を探すこととなった。




■■■■■■■■■■■■■■■■■■

名前 エイジ・ニューフィールド

職業 

   略

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