Chapter 41「あしたのいばしょ」
右肩から黄金の粒子が零れ落ちる。
アルティメット・ヴァルグレイブプライム。
初めて受けた損傷。
しかしソラナムは笑っていた。
「その程度か。」
操縦桿を強く握る。
機体が応えるように唸った。
『損傷率17%。』
『戦闘継続可能。』
「十分だ。」
その瞬間。
Ragnarokが姿を消した。
「っ!」
後ろ。
違う。
上でもない。
ソラナムの直感だけが叫ぶ。
「下だ!!」
反転。
大剣を横薙ぎに振る。
ギィィィィィン!!
火花。
赤と黄金の粒子が宇宙へ弾ける。
二機は鍔迫り合いを保ったまま停止した。
『なぜ。』
Ragnarokが問う。
『そこまでして生きようとする。』
ソラナムは静かに笑う。
「昔なら死んでもいいと思ってた。」
脳裏を過る終焉戦争。
フレアやミリア、守れなかった仲間達。
戦いが終わるたび、
自分だけが生き残った。
何度も思った。
(俺も死ねばよかった。)と
でも。
リゼに泣きながら告白された日。
『死なな。」
あの日初めて思えた。
(帰りたい。)
(帰る場所がある。)
「だからだ。」
ソラナムの剣が押し返す。
「俺は死ねない、約束したからな。」
Ragnarokの瞳がわずかに揺れる。
一方。
「邪魔だぁぁぁぁッ!!」
ノヴァスパーダは亡霊艦隊の中心へ飛び込んでいた。
右。
左。
後方。
三方向から迫るHX。
「まとめて来い!!」
脚部スラスター全開。
急制動。
敵三機が正面衝突。
その隙。
「そこ!」
粒子ライフル。
三連射。
敵HXの頭部を撃ち抜く。
さらに。
腰部ビットが旋回。
戦艦の砲台だけを正確に破壊する。
『戦艦火力低下。』
『撃沈率46%。』
「まだ足りない!」
カナタは叫ぶ。
目の前には。
まだ何百隻もの亡霊艦隊。
(こんなにいるのかよ……。)
一瞬。
心が折れそうになる。
だが。
通信が入る。
「カナタ!」
アカリだった。
『頑張れ!!絶対帰ってきなさい!!』
続いて。
『負けたら一生バカにするからね!』
レイナ。
カナタは思わず笑った。
「なんだよ、それ。負けたらバカにできないじゃん…」
肩の力が抜ける。
(帰る場所。)
(僕にもある。)
「だったら!!」
ノヴァスパーダがさらに加速する。
その頃。
ソラナムとRagnarokの戦いは、
常識を超えていた。
剣撃。
蹴り。
肘打ち。
体当たり。
近接戦だけで宇宙が震える。
Ragnarokの大剣が振り下ろされる。
だがソラナムは受けない。
あえて懐へ飛び込む。
肩で剣を逸らし。
腹部へ拳。
衝撃波。
Ragnarokが初めて苦しそうに後退する。
『戦闘データ更新。』
『理解不能。』
『合理性なし。』
「合理性?」
ソラナムは笑う。
「そんなもんで守れるなら。」
「誰も泣かねぇよ。」
加速。
アルティメット・ヴァルグレイブプライムの翼が黄金に燃える。
「これが!!」
「人間だぁぁぁぁぁぁッ!!」
超高速連撃。
一撃。
二撃。
三撃。
四撃。
五撃。
六撃。
七撃。
八撃。
九撃。
十撃。
Ragnarokが初めて大きく吹き飛んだ。
「ソラナムさん!!」
カナタが追いつく。
「今です!!」
二機が並ぶ。
師弟。
最後の共闘。
「少年…いや、カナタ!」
「はい!」
「合わせろ!」
短い言葉。
それだけで伝わる。
二人はもう、
呼吸すら合わせる必要がなかった。
ソラナムが左へ。
カナタが右へ。
同時加速。
Ragnarokは迎撃に移る。
右のカナタへ大剣。
だが。
それは囮。
「今だ!」
ソラナムが背後へ回る。
VALGRAVE最大出力。
黄金の粒子剣。
「終わりだぁぁぁぁッ!!」
振り下ろす。
しかし。
その瞬間。
Ragnarokの胸部が裂けた。
内部から現れる。
黒い光。
無数の終焉粒子が一点へ収束する。
『最終防衛機構。』
『──APOCALYPSEMODE。』
赤黒い粒子が機体全身を包む。
装甲が変形。
四枚だった翼は八枚へ。
頭部アンテナが角のように伸びる。
大剣は巨大な双刃剣へ変貌。
そして。
宇宙全体へ響くほどの圧力。
戦慄。
ソラナムの笑みが消えた。
「……まだ。」
「力を残してたのか。」
カナタも息を呑む。
「嘘だろ……。」
Ragnarokがゆっくり剣を構える。
『最終戦闘を開始する。』
その瞬間。
アルティメット・ヴァルグレイブプライムとノヴァスパーダ。
二機の警報が同時に鳴り響いた。
『危険。』
『勝率……』
『7%』
宇宙が静まり返る。
誰もが悟る。
本当の最終決戦は、
ここから始まるのだと。
続く。




