Chapter 42「決着と平和と明日の未来」
『勝率──7%。』
警報が静かに鳴り続ける。
カナタはその数字を見つめた。
7%。
普通なら、絶望する数字だ。
だが、不思議と怖くなかった。
隣には。
ソラナムがいる。
「ソラナムさん。」
「ん?」
「勝率7%です。」
ソラナムは笑った。
「なら。」
「93%は覆せるってことだ。」
その一言に。
カナタも笑った。
「……はい。」
二機が並ぶ。
アルティメット・ヴァルグレイブプライム。
ノヴァスパーダ。
黄金と蒼。
二つの光が宇宙を駆ける。
一方。
Ragnarok。
APOCALYPSEMODE。
赤黒い粒子が銀河を染める。
その姿は。
もはやHXではない。
"終焉"そのものだった。
『終焉は避けられない。』
『生命は滅びる。』
『文明は崩壊する。』
『それが宇宙の摂理。』
静かな声。
ソラナムは剣を構える。
「……そうだな。」
「人はいつか死ぬ。」
「星だって終わる。」
ゆっくりと。
前へ進む。
「でも。」
「だから今日を生きるんだ。」
加速。
音を置き去りにする。
アルティメット・ヴァルグレイブプライムが一瞬でRagnarokの懐へ入り込む。
剣。
振り下ろす。
受け止められる。
しかし。
ソラナムは笑っていた。
「カナタ!」
「はい!!」
ノヴァスパーダが真上から急降下。
Ragnarokは迎撃。
双刃剣を振るう。
だが。
カナタは避けない。
「うおおおおおおおおッ!!」
ノヴァスパーダの左腕が吹き飛ぶ。
装甲が砕ける。
警報。
『左腕部喪失。』
それでも。
止まらない。
「今です!!」
ソラナムは迷わなかった。
剣を捨てる。
「なっ!?」
カナタが驚く。
ソラナムはそのままRagnarokへ体当たりした。
肩。
膝。
拳。
機体全てを武器にして殴り続ける。
『非合理。』
『理解不能。』
「合理性なんて。」
一発。
「守りたいものの前じゃ。」
二発。
「関係ねぇんだよッ!!」
三発。
最後の一撃。
Ragnarokの胸部へ拳がめり込む。
その瞬間。
「カナタぁぁぁぁぁッ!!!!」
「はいぃぃぃぃぃッ!!!!」
ノヴァスパーダが最後の推力を解放する。
全身の粒子を剣へ集束。
黄金と蒼紫。
二色の光が重なる。
「未来は!!」
ソラナム。
「僕達が!!」
カナタ。
「「この手で掴むッ!!!!」」
ノヴァスパーダの剣が。
Ragnarokの胸部中枢を。
貫いた。
世界が静止する。
赤い瞳が。
ゆっくりと揺れた。
『……理解。』
初めて。
Ragnarokが笑った。
本当に。
少しだけ。
『人類とは。』
『……美しい。』
その言葉を最後に。
Ragnarokは光となった。
赤黒い粒子が。
夜空の星へ変わっていく。
亡霊艦隊が一隻、また一隻と光になって静かに消えていく。
終焉戦争から続いた戦いは。
今。
本当の意味で終わった。
―数時間後―
格納庫。
歓声が響く。
「帰ってきた!!」
「ソラナム少尉だ!!」
「カナタも無事だ!」
リゼは人混みをかき分けて走った。
「ソラナム!!」
ソラナムは振り向く。
次の瞬間。
リゼが思い切り抱きついた。
「……。」
「おかえり。」
震える声。
涙でぐしゃぐしゃだった。
ソラナムは少し困ったように笑う。
「約束。」
「守れたな。」
リゼは何度も頷いた。
「……うん。」
「ありがとう。」
ソラナムは優しく頭を撫でる。
「もう泣くな。」
「これからは。」
「ずっと隣にいる。」
リゼは泣き笑いで頷いた。
少し離れた場所。
カナタはその光景を見ていた。
胸の奥が温かくなる。
(よかった。)
(本当によかった。)
その時。
ソラナムが振り返る。
「カナタ。」
「はい!」
「ありがとう。」
たった一言。
それだけだった。
でもカナタはその一言が何より嬉しかった。
「こちらこそ。」
「ありがとうございました。」
二人は笑った。
師弟としてではない。
共に未来を守った戦友として。
そして…物語は幕を閉じる。
ー完ー
ご愛読ありがとうごぞいました!




