Chapter 38「終焉を超えて」
Ragnarok。
出力100%。
赤黒い粒子が宇宙を覆い尽くす。
学園コロニーの人工重力すら乱れ始めた。
『空間構造、崩壊を確認!』
『この宙域そのものが分解されています!』
『このままでは学園ごと消滅します!!』
オペレーター達の悲鳴が響く。
リゼはブリッジ中央でモニターを見つめていた。
その手は無意識に震えている。
(帰ってきて。)
ソラナムは通信越しにその姿を見た。
言葉は交わせない。
でも。
十分だった。
(約束した、必ず帰るって。)
その約束だけは、絶対に破らない。
「ANGEL PRIME。」
『はい。』
「始めよう。」
『了。』
純白の翼が大きく広がる。
次の瞬間。
ANGEL PRIMEの全身が粒子へと変換され始めた。
白い光。
無数の光の羽。
それらはヴァルグレイヴへ吸い込まれていく。
「変形開始。」
肩部装甲分離。
脚部圧縮。
胸部フレーム展開。
白翼が巨大な光輪状バックパックへと姿を変える。
そして。
ヴァルグレイヴの背中へ接続された。
ガァァァァン!!
宇宙全体へ衝撃波が広がる。
『ASCENSION LINK──100%。』
『同期開始。』
ソラナムは歯を食いしばる。
頭の中へ大量の情報が流れ込む。
星々と文明。
大量生産されたHX。
終焉戦争。
人類の歴史。
全てが一瞬で頭の中を駆け抜けた。
「ぐっ……!!頭に情報が直接流れ込んでくる…」
『耐えてください、あと十秒。』
「……分かってる。」
汗がにじむ。
視界が霞む。
それでも。
操縦桿だけは離さない。
『七秒。』
『五秒。』
『三秒。』
『一秒。』
閃光。
宇宙が白く染まる。
そして。
光が晴れた。
「……。」
誰も声を出せなかった。
そこにいたのは。
もうヴァルグレイヴではない。
白黒銀の装甲。
胸部へ刻まれた黄金の紋章。
純白のマントのような粒子翼。
金色の光輪。
漆黒の粒子剣。
終焉と希望。
相反する二つの力を宿した。
究極のHX。
『最終形態承認。』
『HX-01CX』
『アルティメット・ヴァルグレイブプライム』
静かに目が開く。
金色の瞳。
ソラナムは呟く。
「俺は。」
一度だけ宇宙を見上げる。
リゼ。
学園。
仲間。
帰る場所。
「ただ、いつもの場所へ帰るために戦うだけだ。」
その言葉を聞いたカナタは、
自然と笑みがこぼれた。
「帰りましょう、みんなで。」
ソラナムは小さく頷く。
「当然だ。」
その時。
Ragnarokがゆっくりと大剣を構えた。
『終焉プログラムを再開する。』
赤黒い粒子が収束する。
これまでとは比べ物にならない。
宇宙そのものが軋む。
『終末粒子砲。』
巨大な球体。
惑星すら消し飛ばせるほどのエネルギー。
カナタは息を呑む。
「こんなの……。」
ソラナムは静かだった。
「カナタ。」
「はい!」
「今から俺が道を開く。」
「お前は。」
ソラナムは真っ直ぐ前を見たまま言う。
「信じて飛び込め。」
カナタは少しだけ笑う。
昔なら怖かった。
でも今は違う。
「……はい。」
「ソラナムさんを信じます。」
二機が並ぶ。
アルティメット・ヴァルグレイブプライム。
ノヴァスパーダ。
そして…二機は同時に加速した。
光となってRagnarokへ突撃する。
次回予告
Chapter 39「約束」
亡霊艦隊編、最終決戦。
ソラナムとカナタ。
二人が選んだ未来。
そしてリゼが涙ながらに見届ける戦いの果てに、Ragnarokの中枢へ辿り着く。
次回、最終決着直前――
「約束」。




