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VALGRAVE - END OF GENESIS -  作者: 羽吹南瓜
第2部「継承編」
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Chapter 36「人類の翼」

ミラージュの粒子が宇宙へ溶けていく。

 静かだった。

 ほんの数秒前まで剣を交えていた相手は、もうどこにもいない。

 ソラナムはコックピットの中で目を閉じた。

「……ありがとう。」

 誰にも聞こえないほど小さく呟く。

 もう過去は振り返らない。

 もう後悔だけで戦わない。

 リゼと交わした約束。

『死なないで。』

 その一言が胸の中で何度も響く。

「必ず帰る。」

 ヴァルグレイヴのメインスラスターが点火した。


 一方――


 ノヴァスパーダはRagnarokと激突していた。


 蒼紫の剣と漆黒の大剣が何度も。

 何度もぶつかり合う。

しかし。

「ぐっ……!」

 押される。

 ノヴァスパーダの装甲に亀裂が走る。

『左肩部損傷。出力89%。』

「まだいける!」

『精神負荷上昇。』

 ノヴァリオンは冷静だ。

『焦るな。』

『勝とうとするな。』

「え?」

『時間を稼げ。』

 その意味を考える暇もなく、

Ragnarokが再び消える。

「来る!」


 右。


 左。


 上。


 違う。


「下だ!!」


 ノヴァスパーダが急上昇する。


 一瞬遅れて、巨大な斬撃が真下を通過した。

「危なっ……!」

 汗が頬を伝う。

 こんな相手、一人じゃ勝てない。

 その時だった。

「少年。」

 通信から聞き慣れた声が聞こえた。

「ソラナムさん!」

「待たせた。」

 黒と深紅の機体が戦場へ戻ってくる。

 ヴァルグレイヴ。

 その姿を見た瞬間。

 カナタは自然と笑っていた。

 安心した。

 一人じゃない。

 それだけで心が軽くなる。

「ソラナムさん!」

「今から作戦を変える。」

 ヴァルグレイヴがRagnarokへ斬りかかる。

 激突。

 火花。

 粒子爆発。

「お前は正面から行くな。」

「え?」

「真正面じゃ勝てない。」

 Ragnarokの剣を受け流しながら続ける。

「だったら役割を分ける。」

 カナタはハッとする。

 今までのソラナムなら。

 一人で倒そうとしていた。

 でも今は違う。

 仲間を頼っている。

 信じている。

「俺が前に出る。」

「少年。」

「お前は隙を作れ。」

 短い指示。


 …でも。

 それだけで十分だった。

「了解!」

 ノヴァスパーダが高速移動を開始する。

 Ragnarokの死角へ。

 牽制。

 ビット展開。

 粒子砲。

 撃つ。

 避けられる。

 (それでいい!注意を引けばいいんだ!)

 ソラナムが前へ出る。

「こっちだ。」

 Ragnarokの視線が向く。

 その瞬間。

 カナタが後方へ回り込む。

「今!!」

 巨大粒子剣。

 振り下ろす。

ガギィィィィン!!

 初めて。

 Ragnarokの装甲に傷が入った。

 ほんの数センチ。

 それでも。

 初めて。

『損傷確認。』

 Ragnarokが一歩下がる。

 カナタは息を呑んだ。

「通った……。」

 ソラナムも小さく笑う。

「いいぞ、そのまま崩す。」

 だが。

 Ragnarokは静かだった。

『学習完了。』

 赤い瞳が光る。

『戦術変更。』

 その瞬間。

 亡霊艦隊全艦が一斉に動き出した。

『全機、一斉砲撃。』

「なっ!?」

 数え切れない光。

 数千門の主砲。

 全てが学園へ向く。

「まずい!!」

 ソラナムが叫ぶ。

「防げない!!」

 あまりにも数が多い。

 ヴァルグレイヴでも。

 ノヴァスパーダでも。

 間に合わない。

 学園が。


 消える。


 その時だった、宇宙の彼方から白い光が降ってきた。


 眩しいほど純白の粒子。

 巨大な光輪。

 六枚の光翼。


 神々しい機体が、

静かに二人の前へ降り立つ。


「……。」


 ソラナムが目を見開く。


 カナタも言葉を失う。


 誰もが見上げる。


 純白のHX。


 その姿はまるで、


天使そのものだった。


『観測を終了する。』


 穏やかな声が響く。


『これより私は"観測者"ではない。』


 白い翼がゆっくりと広がる。


『人類の可能性を信じる、一機のHX《人類の守護者》として戦う。』


「ANGEL PRIME……。」


 ソラナムがその名を口にする。

 ANGEL PRIMEはゆっくりと頷いた。

『羽吹・K・ソラナム。』

『天城カナタ。』

『最後の戦いだ。』

 その直後。

 白い光輪が回転する。

 学園へ放たれようとしていた数千発の粒子砲。

 その全てが、

純白の光の壁に阻まれた。

 宇宙を埋め尽くすほどの爆発。


 それでも、光の壁は一瞬たりとも揺るがなかった。

戦場にいた全員が悟る。

 ついに。

 最後の切り札が動き出したのだと。

次回予告

Chapter 37「天使降臨」


ANGEL PRIME、ついに参戦。


Ragnarokと互角に渡り合う圧倒的な力。


そして明かされる真実。


なぜANGEL PRIMEは今まで戦わなかったのか。


なぜソラナムだけを見守り続けていたのか。


さらに、ヴァルグレイヴに隠された最後の機構が起動を始める。


「ソラナム。」


「君は、最後の鍵だ。」

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