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VALGRAVE - END OF GENESIS -  作者: 羽吹南瓜
第2部「継承編」
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Chapter 35「さよならの先へ」

 ミラージュが動いた。


 速い。


 カナタですら目を見開く。


 ソラナムと同じ。


 いや。


 それ以上だった。


 一直線。


 迷いのない剣。


 ヴァルグレイヴへ突撃する。


「……ッ!!」


 粒子剣同士が激突する。


 宇宙が震えた。


 ソラナムは押し返される。


 驚いた。


 強い。


 記憶の中より。


 ずっと。


『戦闘データ同期。』


 ミラージュが言う。


『羽吹・K・ソラナム全盛期戦闘パターン適用。』


「だからか……。」


 苦笑する。


 知っている。


 この戦い方を。


 誰よりも。


 自分自身だから。


 だが。


 同時に理解した。


 違う。


 今の自分は。


 もう五年前の自分じゃない。


 あの頃は。


 守ることより。


 勝つことしか考えていなかった。


 仲間を失うたび。


 自分を削った。


 命を削った。


 心を削った。


 そうやって戦っていた。


 でも。


 今は違う。


「俺は。」


 ヴァルグレイヴが踏み込む。


「お前じゃない。」


 赤い粒子が爆発する。


 剣撃。


 衝撃。


 ミラージュが初めて後退する。


 一方。


 戦場中央。


 ノヴァスパーダ。


 Ragnarok。


 二機が対峙していた。


『人類個体。』


 Ragnarokが言う。


『理解不能。』


『なぜ戦う。』


 カナタは少し笑った。


「またその話?」


『回答を要求。』


「じゃあ逆に聞く。」


 ノヴァスパーダが剣を構える。


「なんで終わらせたいんだ。」


 沈黙。


 そして。


『終焉は救済だからだ。』


 カナタの眉が動く。


『文明は争う。』


『憎む。』


『奪う。』


『破壊する。』


『ならば終わらせるべきだ。』


 静かな声。


 怒りもない。


 憎しみもない。


 ただ。


 結論だけ。


「……。」


 カナタは少し考えた。


 確かに。


 間違ってはいない。


 人は争う。


 傷つけ合う。


 どうしようもなく。


 馬鹿だ。


 でも。


「それでもさ。」


 小さく言う。


「楽しいこともあるだろ。」


『?』


「友達とか。」


「好きな人とか。」


「家族とか。」


「そういうの全部消すのか?」


 沈黙。


 Ragnarokは答えない。


 理解できない。


 そもそも。


 持ったことがない。


 だから。


 分からない。


「だったら。」


 カナタが笑う。


「お前の負けだ。」


『論理不明。』


「だろうな。」


 光翼展開。


 蒼紫の粒子が宇宙を染める。


「でも。」


「僕はそういうの守りたいんだ。」


 加速。


 ノヴァスパーダ突撃。


 Ragnarok迎撃。


 激突。


 その瞬間。


 遠く。


 ANGEL PRIMEが静かに見ていた。


 白い翼。


 白い光輪。


 その瞳が細まる。


『確認。』


『答えに到達。』


 一方。


 ミラージュとの戦い。


 激化していた。


 ソラナムは息を切らす。


 強い。


 本当に強い。


 だが。


 それ以上に。


 辛かった。


 戦っている相手が。


 思い出だから。


 昔。


 守れなかったものだから。


『ソラナム。』


 ミラージュが言う。


『あなたは幸せ?』


 その言葉に。


 思わず止まりそうになる。


 幸せ。


 考えたこともなかった。


 戦争が終わって。


 学園へ来て。


 カナタと出会って。


 リゼと笑って。


 約束して。


 未来を考えて。


 そして。


 気付く。


 ああ。


 自分は。


 今。


 幸せなんだ。


 その事実が。


 少しだけ恥ずかしかった。


「……ああ。」


 小さく答える。


「多分な。」


 ミラージュは静かだった。


 そして。


 ほんの少しだけ。


 嬉しそうに見えた。


『良かった。』


 その瞬間。


 ミラージュの動きが止まる。


 赤い制御粒子が揺らぐ。


 Ragnarokによる支配。


 その隙。


 最後の瞬間。


 ミリアの人格が取り戻した。


『前へ進んで。』


 優しい声。


 昔と同じ。


『ソラナム。』


『もう振り返らないで。』


 ソラナムは目を閉じる。


 一瞬だけ。


 本当に一瞬だけ。


 昔の少年へ戻った。


 泣きたかった。


 叫びたかった。


 謝りたかった。


 でも。


 今は。


 前へ進む。


 それが答えだから。


「ありがとう。」


 ヴァルグレイヴが剣を振るう。


 赤い光。


 優しい光。


 そして。


 ミラージュは静かに粒子へ還った。


 消えていく。


 最後まで。


 微笑むように。


 ソラナムはしばらく動かなかった。


 ただ。


 宇宙を見上げていた。


 そして。


 涙を拭う。


「……行くか。」


 振り返る。


 その先。


 Ragnarok。


 ノヴァスパーダ。


 最終決戦。


 終わりの時が近付いていた。

次回予告

Chapter 36「人類の翼」


ソラナム戦線復帰。


ノヴァスパーダと共闘開始。


そしてANGEL PRIMEがついに戦場へ降臨する。


「観測を終了する。」


「ここからは私も戦う。」


亡霊艦隊編、最終決戦開幕。

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