Chapter 6 「紫電突破」
警報が鳴り止まない。
赤色灯が点滅し続けるコロニー内部。
逃げ惑う民間人。
崩落する通路。
そして。
HX同士の激突。
轟音。
《ヴァルグレイヴ》と紫HXが再び衝突する。
黒い粒子。
紫電。
衝撃波が通路壁を吹き飛ばした。
「ぐッ……!」
ソラナムは操縦桿を握り締める。
コロニー内部。
通常戦闘とは勝手が違う。
火力を出しすぎれば民間区画が崩壊する。
だが。
敵は一切気にしていない。
『排除行動継続。』
紫HXが壁面を蹴る。
異常加速。
一瞬で視界から消える。
「またかよッ!」
ソラナムは反射的に機体を旋回。
次の瞬間。
背後から紫電刃が振り下ろされた。
激突。
レーザーソードで受け止める。
火花。
電撃。
機体フレームが悲鳴を上げる。
「重っ……!」
細身の機体に見える。
だが出力が異常。
単純なパワーなら《ヴァルグレイヴ》級。
『ソラナム!』
リゼの《セラフィム》が上空通路から飛来。
白い光翼展開。
高出力ビーム連射。
紫HXが高速回避する。
だが。
その一瞬で距離が空いた。
「助かった!」
『まだよ!』
リゼは険しい顔でモニターを見る。
『こいつ、変な動きしてる……!』
「変?」
『戦闘だけが目的じゃない。』
《セラフィム》の解析画面。
そこには。
紫HXの移動ルートが表示されていた。
そして。
全ての移動先が、ある一点へ向かっている。
《ヘリオス・ベース》地下区画。
「地下……?」
ソラナムが眉をひそめた瞬間。
紫HXが突然後退。
そして。
一直線に加速した。
「逃げた!?」
『違う!!』
リゼが叫ぶ。
『目的地へ向かった!!』
「クソッ!!」
《ヴァルグレイヴ》も急加速。
狭いコロニー通路を突き進む。
壁面スレスレ。
通常FWでは不可能な高機動。
その後方で、《セラフィム》も追従する。
地下区画へ続く大型隔壁。
そこへ到達した瞬間。
紫HXが腕を突き刺した。
紫電奔流。
隔壁爆発。
「ッ!?」
吹き飛ぶ装甲。
そして。
その奥にあった光景を見て、ソラナムは息を呑んだ。
巨大空間。
地下研究施設。
無数のカプセル。
眠る機械。
そして中央。
封印されるように鎖で固定された“巨大な何か”。
「なんだ……あれ……」
黒い装甲。
人型。
だが。
《ヴァルグレイヴ》より遥かに巨大。
まるで。
“神の死骸”。
その瞬間。
《ヴァルグレイヴ》内部で警告音が鳴り響いた。
WARNING
HIGH SYNCHRO RESPONSE
赤黒い粒子噴出。
SYNC RATE上昇。
“41% → 44%”
「ぐッ……!」
ソラナムの頭へノイズが流れ込む。
『同系統個体。』
『原初機体。』
『接触ヲ推奨。』
「やめろ……ッ!」
ソラナムは頭を押さえる。
だが。
《ヴァルグレイヴ》が震えている。
まるで。
あの巨大機体へ“近付きたがっている”。
『ソラナム!?』
リゼが通信を飛ばす。
『SYNC上がりすぎ!!』
「……平気、だ……!」
『全然平気じゃない!!』
その時。
紫HXが中央区画へ到達した。
そして。
巨大機体へ手を伸ばす。
『回収プロトコル開始。』
「待てぇぇぇぇぇ!!」
ソラナムは《ヴァルグレイヴ》を急加速。
黒い粒子を撒き散らしながら突撃する。
激突。
拳。
衝撃波。
紫HXが吹き飛ぶ。
だが。
次の瞬間。
紫HX背部ユニット展開。
無数の紫電リング形成。
「なっ――」
放電。
雷撃が地下空間を埋め尽くした。
爆発。
崩壊。
施設全体が揺れる。
『地下区画崩落します!!』
管制通信が悲鳴を上げる。
「最悪だろこれ……!」
ソラナムが舌打ちする。
だが。
崩れる瓦礫の中で。
巨大機体の“眼”が、ゆっくり点灯した。
深紅。
空気が変わる。
圧力。
重力。
存在感。
その場にいる全員が、本能的恐怖を感じた。
「……うそ。」
リゼの声が震える。
巨大機体が。
ゆっくりと。
動いた。
『……起動確認。』
低い声。
古い機械音。
そして。
その赤い眼が、《ヴァルグレイヴ》を見つめる。
『終焉因子。』
『適合個体。』
『発見。』
「ッ!?」
その瞬間。
《ヴァルグレイヴ》が共鳴した。
赤黒い粒子が爆発的に噴出する。
SYNC RATE:50%
「ぐああああああッ!!」
ソラナムが叫ぶ。
視界が赤く染まる。
頭の奥で、無数の声が響く。
『壊せ。』
『滅ぼせ。』
『世界を終わらせろ。』
『ソラナム!!』
リゼが叫ぶ。
だが。
《ヴァルグレイヴ》は止まらない。
黒い粒子が暴風のように吹き荒れる。
地下施設全体が軋む。
そして。
巨大機体が、静かに名乗った。
《HX-00》
《ANGEL PRIME》
その瞬間。
地下施設全体が、絶望的な静寂に包まれた。
Chapter 6 END
次回予告
地下深部で目覚めた、“原初のHX”。
《HX-00 ANGEL PRIME》
その存在は、
《ヴァルグレイヴ》ですら比較にならない圧倒的威圧感を放っていた。
そして暴走寸前となる《ヴァルグレイヴ》。
SYNC RATE50%。
限界を超え始めるソラナムの精神。
『滅ぼせ。』
『それがお前の存在理由。』
侵食される意識。
赤く染まる視界。
HXと人間の境界が、少しずつ崩れていく。
一方。
リゼは《ANGEL PRIME》を見た瞬間、
ある“禁忌記録”を思い出す。
古代文明崩壊。
星系消滅。
そして。
HX戦争。
さらに。
地下施設崩壊によって、
《ヘリオス・ベース》全体へ避難命令発令。
数十万人規模のパニックが始まる。
そんな中。
《ANGEL PRIME》は静かに告げる。
『終焉因子確認。』
『統合プロセスを開始する。』
次回。
Chapter 7
「原初の天使」
目覚めてはいけなかった。
それは、
“兵器”ではない。




