表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
VALGRAVE - END OF GENESIS -  作者: 羽吹南瓜
第1部「覚醒編」
5/27

Chapter 5 「紫電」

宇宙港コロニー《ヘリオス・ベース》。


 人類軍の重要補給拠点であり、多くの兵士と民間人が暮らす巨大コロニー。


 戦場から離れたその場所には、“日常”があった。


「おばちゃん! パン三つ!」


「はいよ、軍人割引でちょいオマケしとく!」


「やったぜ。」


 ソラナムは紙袋を受け取る。


 商業ブロックは今日も騒がしい。


 買い物帰りの一般市民。

 休暇中の兵士。

 子供たちの笑い声。


 ほんの数日前まで死線を潜っていたとは思えない光景だった。


「……平和だなぁ。」


「何その老人みたいな感想。」


 隣でリゼが呆れた顔をする。

今日は軍服ではなく、比較的ラフな私服姿。


 白いパーカーに黒ショートパンツ。


 戦場では見せない柔らかい雰囲気だった。


 ソラナムは少し目を逸らす。


「いや、お前そういう格好するんだなって。」


「どういう意味?」


「もっと四六時中パイロットスーツかと。」


「そんな人いるわけないでしょ。」


「ヴァルグレイヴは寝てても戦いそう。」


「それは分かる。」


 二人は少し笑う。

その時。


 モニター画面へニュース速報が流れた。


《ヘリオス・ベース》廃棄区画にて行方不明者発生


 周囲が少しざわつく。


「またか……」


「最近多いな。」


 兵士たちが嫌そうに話している。


 リゼが眉をひそめた。


「また失踪事件。」


「また?」


「ここ数日で十人以上消えてる。」

「物騒だな。」


「しかも。」


 リゼは声を落とす。


「監視カメラに“誰も映ってない”。」


「……ホラーかよ。」


 一方その頃。


 《ヘリオス・ベース》外縁。


 封鎖された旧居住ブロック。


 薄暗い通路。


 壊れた照明。


 無音。

その奥で。


 “何か”が動いた。


UNKNOWN SIGNAL DETECTED


 紫色の単眼。


 機械音。


 鋭い爪。


 そして。


 人型。

『対象未確認。』


『生体反応、捕捉。』


 暗闇の中。


 紫の光が不気味に揺れた。


 夕方。


 《アーク・ヴェイン》格納庫。


 ソラナムは《ヴァルグレイヴ》整備を眺めていた。


 大型アームが損傷装甲を交換していく。


 だが。


 普通のFW整備とは明らかに違う。

「なぁ主任。」


「ん?」


 整備主任――ガレスが振り返る。


 大柄な中年男。


 常に工具を持っているような人物だ。


「HXってどうやって作られてるんだ?」


 ガレスは少し黙った。


「……知らん。」


「主任でも?」


「分かってるのは、“普通の機械じゃない”ってことだけだ。」


 彼は《ヴァルグレイヴ》を見る。

「こいつ、内部構造が毎回変わる。」


「は?」


「昨日まで無かったパーツが増えてたりする。」


「怖ぇよ。」


「怖いさ。」


 ガレスは真顔だった。


「整備してる俺らが、一番怖い。」


 その時。


 格納庫へ警報が鳴り響く。


ALERT

INTERNAL AREA INCIDENT

「なっ……!?」


 オペレーターの声が響く。


『廃棄区画で武装反応!!』


『FW部隊が交戦中!!』


 ソラナムとリゼが顔を見合わせる。


「……まさか。」


『敵性存在確認!!』


『機体コード不明!!』


 その瞬間。


 艦全体が揺れた。


 遠方で爆発。


「クソ、コロニー内部で戦闘か!」


 ガレスが叫ぶ。

モニターへ映像が映る。


 そこにいたのは。


 紫色のHX。


 鋭い細身のシルエット。

 異様に長い腕部。

 背部から伸びる電撃ユニット。


 そして。


 紫色の単眼。


UNKNOWN HX

CODE:未確認


 FW部隊が次々吹き飛ばされる。


 紫電。


 高速移動。


 電撃。


「速っ……!」


 ソラナムが息を呑む。


 《ジェガード》一機がライフルを構える。


 だが。


 一瞬で背後へ回り込まれる。


 紫の刃。


 爆散。


『被害拡大中!!』


『民間区画へ侵入します!!』


「最悪だな……!」


 ソラナムは走り出す。

「ヴァルグレイヴ出す!」


『待って!』


 リゼが腕を掴む。


「コロニー内部よ!? HX同士が暴れたら被害が――」


「でも止めないともっと死ぬ!」


 ソラナムは真っ直ぐ彼女を見る。


「行く。」


 リゼは悔しそうに唇を噛む。


 そして。


「……私も行く。」


「お前なぁ。」


「一人で無茶する方が危ない。」


 ソラナムは少し笑った。


「頼もしい。」

同時刻。


 廃棄区画。


 紫HXはゆっくり歩いていた。


 周囲には破壊されたFW。


 火花。


 煙。


 逃げ遅れた民間人たち。


 その時。


 小さな子供が転ぶ。


「いや……!」


 母親が叫ぶ。


 だが。


 紫HXが腕を向ける。


 電撃収束。

その瞬間。


轟音。


 黒銀の機体が天井を突き破って降下した。


 衝撃波。


 瓦礫。


 そして。


 《ヴァルグレイヴ》。


 ソラナムが叫ぶ。


「一般人から離れろ、化け物ッ!!」


 紫HXの単眼が光る。


『確認。』


『HX-01Cヴァルグレイヴ。』

『優先排除対象。』


「ご丁寧にどうも!」


 ソラナムは即座に突撃。


 レーザーソード展開。


 紫HXも電撃刃を生成。


激突。


 火花。


 電撃。


 衝撃波。


 コロニー内部でHX同士がぶつかる。


 その瞬間。


 周囲空間が震えた。

『ソラナム!!』


 リゼの《セラフィム》が後方から飛来。


 白い翼が広がる。


「民間人避難急いで!!」


『了解!!』


 FW部隊も動き出す。

だが。


 紫HXは笑うように電撃を散らした。


『対象性能確認。』


『戦闘データ取得開始。』


「また学習型かよ……!」


 ソラナムが舌打ちする。


 その時だった。


 《ヴァルグレイヴ》内部で。


 再び、あの声が響く。


『排除しろ。』


『破壊しろ。』


 SYNC RATE上昇。

“39% → 41%”


「ッ……!」


 ソラナムの瞳に、赤い光が混じる。


 紫HXが電撃を纏いながら構える。


 《ヴァルグレイヴ》も黒い粒子を放出する。


 コロニー内部。


 逃げ遅れた人々。


 暴走寸前のHX。


 そして。


 戦いはさらに激化していく――。

次回予告


 宇宙港コロニー《ヘリオス・ベース》内部で始まった、HX同士の戦闘。


 紫電を纏う新型HX。


 その異常な機動力に、《アーク・ヴェイン》FW部隊は翻弄されていく。


 さらに。


 《ヴァルグレイヴ》内部では、再びSYNC RATEが上昇。


 ソラナムの精神へ、“終焉因子”が侵食を始める。


『破壊しろ。』


『それがお前の存在理由だ。』


 響き続ける謎の声。

そして。


 暴走寸前の《ヴァルグレイヴ》。


 一方。


 リゼは戦闘中、紫HXの動きに“違和感”を覚える。


 まるで。


 誰かを探しているような動き。


 何かを“回収”しようとしているような行動。


 そして明かされる。


 《ヘリオス・ベース》地下に隠された、極秘HX研究区画。


 そこに眠る、“人類が触れてはいけなかったもの”。

次回。


Chapter 6

「紫電突破」


 コロニー崩壊まで、残り時間僅か。


 黒き巨人は、

 守るために暴走する。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ