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VALGRAVE - END OF GENESIS -  作者: 羽吹南瓜
第2部「継承編」
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Chapter 33「蒼穹を裂く剣」

 宇宙へ飛び出した瞬間。


 カナタは思わず息を呑んだ。


「これ……。」


 景色が違う。


 今までのノヴァリオンとも。


 ジークスパーダとも。


 全く違う。


 機体が軽い。


 いや。


 違う。


 自分自身が機体の一部になったような感覚。


 視界が広い。


 敵の位置。


 味方の位置。


 粒子の流れ。


 全部見える。


『SYNC RATE 95%。』


「95!?」


『安定中。』


「安定なのかよ!?」


『問題ない。』


 問題ありそうだろ。


 思わずツッコミそうになる。


 だが。


 不思議と怖くなかった。


 ノヴァリオンと。


 ジークスパーダ。


 二つの意志がいる。


 だからだろうか。


 今までよりずっと安心感があった。


『敵接近。』


 視界に映る。


 亡霊HX部隊。


 数十機。


 普通なら大部隊。


 だが。


 今のカナタには。


 妙に近く見えた。


「行くぞ!!」


 光翼展開。


 轟音。


 ノヴァスパーダが消える。


 敵パイロットが反応する暇もない。


 次の瞬間。


 敵HXの中央へ。


 粒子剣抜刀。


 蒼紫の光が走る。


 斬る。


 斬る。


 斬る。


 敵機が次々と爆散する。


「速っ!?」


 カナタ本人が驚く。


『機体性能を把握しろ。』


『操縦者。』


「はい!」


 ジークスパーダの声だった。


 なんだか先生みたいだ。


 その時。


 戦場の別方向。


 ソラナムは息を吐いていた。


 モニター越しに。


 カナタの戦いを見ている。


「……やるじゃねぇか。」


 少しだけ笑う。


 昔なら。


 認めなかったかもしれない。


 自分が全部背負おうとした。


 自分しか戦えないと思っていた。


 でも。


 違った。


 カナタはカナタだ。


 もう。


 守られるだけの少年じゃない。


『出力上昇。』


 Ragnarok。


 赤い瞳が光る。


『新規脅威確認。』


『優先排除対象変更。』


 巨大な視線。


 カナタへ向く。


 ゾクリとした。


 背筋が冷える。


 今までの敵とは違う。


 まるで。


 宇宙そのものに見られているような感覚。


『人類個体。』


 Ragnarokが言う。


『なぜ抗う。』


「は?」


『敗北は確定している。』


『文明は必ず終わる。』


『終焉は不可避だ。』


 静かな声。


 怒りもない。


 憎しみもない。


 ただ事実を語るように。


『ならば受け入れろ。』


 その言葉を聞いた時。


 カナタは少し考えた。


 確かに。


 怖い。


 負けるかもしれない。


 死ぬかもしれない。


 全部失うかもしれない。


 でも。


 だからって。


 諦められるわけじゃない。


 脳裏に浮かぶ。


 学園祭。


 アカリの笑顔。


 レイナのからかう声。


 教室。


 友達。


 ソラナム。


 リゼ。


 守りたいもの。


「終わるからって。」


 カナタが言う。


「全部投げ出していい理由にはならないだろ。」


 静寂。


『理解不能。』


 Ragnarokが答える。


「だろうな。」


 カナタは笑った。


「だってお前機械だし。」


『……。』


『侮辱と判断。』


「そういうつもりじゃねぇよ!」


 戦場なのに。


 一瞬だけ。


 空気が緩んだ。


 その瞬間。


 Ragnarokが動く。


 消える。


「っ!!」


 速い。


 ソラナムの時と同じ。


 空間短距離転移。


 だが。


 今のカナタは見えた。


「右ッ!!」


 ノヴァスパーダ反転。


 粒子剣。


 衝突。


 轟音。


 宇宙が震える。


 初めて。


 Ragnarokの攻撃を受け止めた。


『……。』


 赤い瞳が細まる。


『評価修正。』


『脅威度上昇。』


 カナタの手が震える。


 重い。


 とてつもなく重い。


 腕が軋む。


 でも。


 押し返す。


「うおおおおおおおおおッ!!」


 蒼紫の粒子が爆発する。


 Ragnarokが初めて後退した。


 戦場全体が静まり返る。


 誰も信じられなかった。


 あのRagnarokを。


 押し返した。


 一人の学生が。


 その時。


 遠く。


 ANGEL PRIMEの光輪が回転する。


『観測完了。』


『適格者確認。』


『最終段階へ移行する。』


 白い翼が広がる。


 その姿は。


 まるで天使だった。


 そして。


 誰にも聞こえない声で呟く。


『羽吹・K・ソラナム。』


『最後の試練が来る。』


 その瞬間。


 Ragnarokの胸部装甲が開いた。


 中から現れる。


 黒い光。


 見覚えのある形。


 ソラナムが目を見開く。


「……まさか。」


 そこにいたのは。


 五年前に失われたはずの存在だった。

次回予告

Chapter 34「亡霊の名」


Ragnarok内部から現れる謎の機体。


それはソラナムの過去そのものだった。


「ありえない……。」


「お前は死んだはずだ。」


そして明かされる、


亡霊艦隊の真の目的。


ソラナム最大の後悔。


フレアの死。


ミリアとの約束。


全てが最終決戦へ繋がっていく。

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