Chapter 32「双翼」
格納庫が揺れていた。
遠くで爆発音。
警報。
赤い照明。
亡霊艦隊の攻撃は続いている。
だが今。
この格納庫だけは奇妙な静けさがあった。
カナタはジークスパーダを見上げていた。
巨大だった。
紫電の装甲。
鋭いシルエット。
無骨な大型粒子刀。
ノヴァリオンと似ている。
でも全然違う。
威圧感。
殺気。
まるで。
戦うためだけに生まれた剣。
「……。」
カナタは黙っていた。
怖かった。
統合。
聞こえは良い。
でも実際は違う。
失敗したらどうなるか分からない。
精神崩壊。
SYNC暴走。
最悪死亡。
可能性はいくらでもある。
正直。
逃げたかった。
今ならまだ逃げられる。
誰も責めない。
ソラナムだって。
多分止める。
だけど。
モニターへ目を向ける。
宇宙。
戦っている仲間達。
防衛艦隊。
学園。
アカリ。
レイナ。
そして。
ボロボロになりながら戦うソラナム。
胸が痛んだ。
何も出来ない自分が嫌だった。
『迷っているな。』
ノヴァリオンが言う。
「当然だろ。」
『正常反応だ。』
「お前さ。」
カナタは少し笑う。
「最近そういう言い方増えたよな。」
『学習している。』
少し沈黙。
『だが。』
『私はお前を強制しない。』
カナタは顔を上げる。
『選べ。』
『それがお前だ。』
その言葉が妙に響いた。
ソラナムなら。
迷わない。
でも。
自分はソラナムじゃない。
だから。
自分で決める。
震える拳を握る。
「……やる。」
『確認。』
格納庫全体へ光が走る。
ジークスパーダ起動。
ノヴァリオン起動。
二機の瞳が同時に灯る。
青。
紫。
光が交差する。
『統合システム起動。』
『成功率18%。』
「低いなぁ……。」
『過去最高値だ。』
「余計怖いんだけど。」
思わず笑う。
不思議だった。
怖いはずなのに。
少しだけ落ち着いている。
多分。
信じているから。
ノヴァリオンを。
「頼むぞ。」
『当然だ。』
光が広がる。
世界が白く染まる。
その瞬間。
カナタの意識は引き込まれた。
真っ白な空間。
何もない。
その中心。
二つの影。
ノヴァリオン。
ジークスパーダ。
向かい合っている。
『久しぶりだな。』
ノヴァリオンが言う。
『ああ。』
ジークスパーダが答えた。
低い声。
驚くほど落ち着いていた。
「喋った!?」
『驚くな。』
ジークスパーダが言う。
『我々は元々一つだ。』
『ただ進む道が違った。』
ノヴァリオンが続ける。
『私は未来を選んだ。』
『私は力を選んだ。』
ジークスパーダ。
ノヴァリオン。
二つの可能性。
二つの答え。
そして。
二機が同時にカナタを見る。
『選べ。』
『天城カナタ。』
『お前はどちらを望む。』
カナタは少し考えた。
そして。
笑った。
「両方だ。」
沈黙。
「守る力も。」
「未来へ進む翼も。」
「どっちも欲しい。」
「欲張りで悪いか?」
数秒。
静寂。
そして。
ノヴァリオンが笑った。
『実にお前らしい。』
ジークスパーダも頷く。
『承認。』
白い空間が崩れる。
光。
粒子。
翼。
剣。
二機が融合する。
青。
紫。
金。
白。
全てが一つになる。
格納庫。
整備員達が息を呑む。
「成功した……。」
巨大な光柱。
その中心から現れる。
新たなHX。
金白を主体に。
紫電のライン。
大型光翼。
背部粒子マント。
腰部ビットユニット。
そして。
巨大粒子剣。
『統合完了。』
『新機体名称承認。』
カナタが顔を上げる。
『HX-07Ω』
光翼が展開する。
『ノヴァスパーダ。』
その瞬間。
格納庫の天井が開く。
宇宙が見える。
遠く。
Ragnarok。
亡霊艦隊。
終末。
だが。
カナタはもう俯いていなかった。
「行こう。」
『了解。』
新たな翼が広がる。
そして。
次世代の主人公が。
初めて本当の意味で飛び立った。
次回予告
Chapter 33「蒼穹を裂く剣」
新機体HX-07Ω ノヴァスパーダ出撃。
亡霊艦隊へ単機突入。
一方ソラナムはヴァルグレイヴの隠された最終モードへ到達する。
そしてRagnarokが語る。
「人類はなぜ滅びるべきなのか」
最終決戦へのカウントダウンが始まる。




