Chapter 21「白き観測者」
終焉天使は崩壊していた。
黒紫の粒子が宇宙へ散っていく。
HX装甲が砕け。
フレームが崩れ。
五年前から続いていた憎悪が、
静かに終わっていく。
『……ミリア。』
その言葉を最後に。
終焉天使の光は完全に消えた。
「……。」
ソラナムは動けなかった。
通信も切れている。
粒子反応もない。
フレアは、
本当に死んだ。
『ソラナムさん……。』
カナタが恐る恐る通信を開く。
返事はない。
バスティオン・カスタムは、
ただ宇宙空間に静止していた。
片腕損壊。
各部装甲破損。
だが。
一番壊れていたのは、
多分中身だった。
一方。
輸送艦内部。
WARNING
SYNC REACTION RISING
WARNING
UNKNOWN SIGNAL DETECTED
封印フレームが振動する。
拘束粒子鎖。
重力固定装置。
その全てが軋み始めていた。
《HX-01C ヴァルグレイヴ》
赤い片目が、
完全に点灯する。
「なっ……。」
クロエ監査官が目を見開く。
『封印値突破!!』
『SYNC反応急上昇!!』
『制御不能!!』
その瞬間だった。
宇宙空間が、
割れた。
白い光。
幾何学模様。
リング状粒子。
まるで空間そのものが開くように。
全員が息を呑む。
『……。』
ノヴァリオンが珍しく沈黙する。
そして。
そこから現れた。
白銀装甲。
巨大光輪。
六枚の光翼。
神々しいほど静かな存在感。
《ANGEL PRIME》
「……嘘だろ。」
カナタが呟く。
学園側部隊が完全に停止する。
HX群ですら動かない。
まるで、
存在そのものへ圧倒されていた。
ANGEL PRIMEはゆっくりと前進する。
その視線が向いた先。
ソラナム。
『観測対象、
羽吹・K・ソラナム。』
機械音声。
だが。
どこか感情がある。
『精神状態低下を確認。』
『終焉因子侵食安定。』
『生存を優先する。』
クロエが叫ぶ。
「全艦警戒!!」
「攻撃許可を――」
『推奨しない。』
一瞬だった。
ANGEL PRIMEの光輪が僅かに回転する。
次の瞬間。
全艦武装が停止。
「なっ!?」
『兵装制御、
乗っ取られました!!』
圧倒的。
次元が違う。
その時。
ソラナムが静かに顔を上げた。
『……また来たのか。』
ANGEL PRIMEは少しだけ沈黙する。
『お前の観測を継続する。』
『断る。』
『拒否を確認。』
『だが継続する。』
「会話してる……。」
カナタが呆然と呟く。
『ソラナム。』
ANGEL PRIMEが続ける。
『お前は変化した。』
『……。』
『以前のお前は、
死を前提として戦っていた。』
『だが今は違う。』
ソラナムが少しだけ目を細める。
『……何が言いたい。』
ANGEL PRIMEの光翼が広がる。
『お前は、
終焉を越え始めている。』
その瞬間。
ヴァルグレイヴの粒子反応が沈静化した。
『SYNC安定化!?』
『ありえません!!』
クロエが息を呑む。
ANGEL PRIMEは、
ただソラナムを見ていた。
『次の戦いが来る。』
『亡霊艦隊が動き始めている。』
空気が変わる。
『旧GENESIS管理艦隊。』
『文明終末機構。』
『彼らは再び、
世界を終わらせようとしている。』
カナタが青ざめる。
「亡霊……艦隊……?」
『その時。』
ANGEL PRIMEは静かに告げた。
『ヴァルグレイヴは、
再び必要となる。』
白い光が広がる。
そして。
ANGEL PRIMEは空間の裂け目へ消えていった。
静寂。
誰も、
すぐには動けなかった。
ソラナムだけが、
静かに宇宙を見ていた。
次回予告
フレアとの決着から数日。
ソラナムは医務室へ搬送される。
しかし。
「どこ行く気?」
「訓練。」
「戻れ。」
負傷しても働こうとするソラナムに、
リゼの怒りが爆発。
一方、
カナタ達は久々の平和を満喫していた。
『つまり今が青春イベントか。』
「お前最近ノリ軽くなった?」
Chapter 22「ソラナムとリゼ①」




