Chapter 20「黒と紫」
宇宙が震えていた。
黒鉄と黒紫。
二機の衝突が、
周囲空間そのものを歪ませている。
ドォォォン!!
《バスティオン・カスタム》の拳。
終焉天使が受け流す。
粒子ブレード反撃。
ソラナムが機体を捻る。
ギリギリ回避。
『相変わらず、
無茶苦茶な動きしやがるな。』
フレアの声。
少し笑っていた。
『お前もな。』
ソラナムが返す。
次の瞬間。
終焉天使が急加速。
空間短距離転移。
黒紫の残光。
「ッ!」
ソラナムが即座に反応。
背後。
ガギィィィン!!
粒子ブレードとパイルバンカーが激突。
火花。
衝撃。
『まだ反応できるかよ!!』
『お前の癖は覚えてる。』
だが。
終焉天使の出力は、
五年前より明らかに上がっていた。
黒紫粒子が噴き出す。
推進器過負荷。
異常加速。
ドォォォォン!!
バスティオン・カスタムが吹き飛ぶ。
「ソラナムさん!!」
カナタが叫ぶ。
一方。
ノヴァリオンはHX群を迎撃していた。
光翼展開。
ビット兵器射出。
『散れ。』
蒼白い光線。
HX二機撃破。
さらに空間転移。
高速射撃。
「うおっ!?」
カナタ自身が驚く。
「ノヴァリオン、
こんな動きできんの!?」
『今更か。』
だが。
その時だった。
『カナタ。』
「え?」
ノヴァリオンの声が低くなる。
『見ろ。』
視線の先。
ソラナムとフレア。
終焉天使が、
バスティオン・カスタムを圧倒していた。
粒子ブレード。
高速転移。
黒紫粒子砲。
HXとしての性能差が大きすぎる。
それでも。
ソラナムはまだ立っている。
『どうしたソラナム!!』
フレアが叫ぶ。
『ヴァルグレイヴはどうした!!』
終焉天使が蹴りを叩き込む。
バスティオン機体外装が砕ける。
『その程度の鉄クズで!!』
ソラナムは静かだった。
ただ。
その目だけは、
フレアを見ていた。
『……お前。』
『あ?』
『まだ苦しいか。』
一瞬。
終焉天使の動きが止まる。
『……ッ。』
『ミリアのこと、
まだ引きずってるんだろ。』
空気が変わる。
『黙れ。』
低い声。
『お前はいつまでもそうだ。』
ソラナムが続ける。
『怒りに縋って。』
『憎しみに逃げて。』
『前に進めなくなってる。』
終焉天使の粒子出力が急上昇する。
『黙れェェェェェ!!』
黒紫粒子爆発。
終焉天使突撃。
超高速連撃。
バスティオン・カスタムが押される。
装甲が削れる。
左腕損壊。
警報。
WARNING
LEFT ARM LOST
それでも。
ソラナムは退かない。
『お前は。』
静かな声。
『いつまでも過去に取り残されたままの、
弱い人間だ。』
一瞬。
フレアの動きが止まる。
『だから勝てなかった。』
沈黙。
その言葉。
それだけで。
フレアの中の何かが、
崩れた。
『……うるさい。』
終焉天使の粒子が乱れる。
『うるさい……!!』
その瞬間。
ソラナムが踏み込む。
ドォォォォン!!
バスティオン・カスタム最大加速。
右腕パイルバンカー展開。
『ッ!!』
終焉天使が反応する。
だが遅い。
ゼロ距離。
『終わりだ、
フレア。』
轟音。
パイルバンカー直撃。
終焉天使胸部を貫通。
宇宙が静まる。
『……あ。』
フレアの声。
どこか、
昔みたいな声だった。
黒紫粒子が崩れていく。
HX装甲が剥がれる。
『……ソラナム。』
静かな声。
怒りはもう無かった。
『俺……。』
少しだけ笑う。
『疲れた。』
ソラナムは何も言えなかった。
終焉天使の光が消えていく。
『……ミリア。』
その言葉を最後に。
黒紫HXは静かに崩壊を始めた。
「フレアァァァァ!!」
ソラナムの叫びが、
宇宙へ響いた。
一方。
輸送艦内部。
封印されていたヴァルグレイヴ。
その赤い片目が。
再び、
ゆっくり点灯した。
次回予告
フレア、最期。
五年前から続いた憎悪は、
静かに終わりを迎える。
しかし。
ヴァルグレイヴが再び起動。
そして現れる、
白き超高位HX――
《ANGEL PRIME》
『観測対象、
羽吹・K・ソラナム。』
『再接触を開始する。』
黒き巨人。
白き天使。
そして。
新世代適合者カナタ。
物語は、
再び“終焉”へ近付いていく。
Chapter 21
「白き観測者」




