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VALGRAVE - END OF GENESIS -  作者: 羽吹南瓜
第2部「継承編」
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Chapter 17 「新星」

翌日の学園は、

 妙な熱気に包まれていた。


「見た?」

「昨日の黒いバスティオン。」

「ソラナム少佐の動きヤバすぎた……。」

「重装甲機の動きじゃなかっただろアレ。」


 食堂でも。


 廊下でも。


 話題は完全に昨日の実技訓練だった。


「……やっぱ、有名人だなぁ。」


 カナタがパンをかじりながら呟く。


 向かいでは、

 アカリがタブレットを見ていた。


「今さら?」


「いや僕…あの人なんでこんなに人気なんだろと思って…。」


「まぁ怖いけど。」


「だろ?」


 すると。


 アカリがニヤッと笑う。


「でもさ。」


「?」


「昨日ちょっと楽しそうだった、」


「誰が?」


「ソラナム少佐。」


 カナタが目を丸くする。


「えぇ?」


「最後、ちょっと笑ってたじゃん。」


「……わからないけど…言われてみれば。」


「何の話してるの?」

 

「えっ」

突如現れた人物。制服からしておそらく特殊部隊養成専門学科略して〈特科〉の生徒。それもかなりの美少女。

「聞いてる?」


「あ、あぁ、ごめん。君は?」


「先に質問に答えて。」


「えーと、、、」

返答に困っていると

「ソラナム少佐の話よ。さぁ話したでしょ。貴方は誰なの?」


「…私は、」


その時だった。


 校内放送が鳴る。


『全学生へ通達。』


『本日、

 EVA管理局本部監査官が来訪します。』


 教室がざわつく。


「監査官?」

「本部の?」

「なんで学園に?」


 一方。


 学園上層ブロック。


 専用格納区画。


 巨大な封鎖シャッターの前で、

 ソラナムは無言で立っていた。


 その奥。


 幾重もの拘束フレーム。


 封印粒子鎖。


 特殊隔壁。


 そして。


《HX-01C ヴァルグレイヴ》


 五年前。


 GENESIS戦争を終わらせた黒いHX。


 今は完全停止状態で封印されていた。


『ヴァルブレイブを回収するなんて…また亡霊艦隊が復活し始めているのに…』


 後ろからリゼが来る。


 ソラナムは振り返らない。


「なぜこんなタイミングで…」


 リゼが少し眉を寄せる。


「フレアの件?」


「多分な。」


 その時。


 格納区画の自動扉が開いた。


 数人の武装警備兵。


 黒い本部制服。


 そして。


 中央に立つ、

 一人の男。


 銀髪。


 細い眼鏡。


 冷たい目。


「久しぶりですね、

 羽吹・K・ソラナム少佐。」


 事務的な声。


 ソラナムの目が細くなる。


「……クロエ監査官。」


クロエ・ヴェルナー


 EVA管理局本部監査局所属。


 対HX危険管理部門責任者。


「本日は正式命令により来ました。」


 レオンが端末を開く。


『HX-01C ヴァルグレイヴを、

 本部管理区域へ移送する。』


 空気が変わる。


 リゼが即座に前へ出た。


「待って。」


「何か問題でも?」


「問題しかないわ。」


 クロエは淡々としている。


「現在、

 未確認HXが活動再開している。」


「把握しています。」


「ならヴァルグレイヴは必要戦力よ。」


「危険戦力でもある。」


 静かな声だった。


「SYNC RATE暴走事例。」

「終焉因子汚染。」

「ANGEL PRIME接触。」

「GENESIS直結個体。」


 クロエはヴァルグレイヴを見る。


「これを学園に置く方が異常です。」


 沈黙。


 リゼが歯を食いしばる。


 一方。


 ソラナムは静かだった。


 何も言わない。


「ソラナム。」


 リゼが振り返る。


「何か言いなさいよ。」


 数秒の沈黙。


 そして。


「……仕方ないか…」


「は?」


「元々、

 封印機体だ。」


「でも!」


「今の俺には、

 バスティオンがある。」


 リゼが言葉を失う。


 クロエが少しだけ目を細めた。


「理解が早くて助かります。」


 だが。


 その瞬間だった。


『あのー。』


 場違いな声。


 全員が振り返る。


 入口に、

 カナタが立っていた。


「……何してんだ少年。」


「いや、

 整備棟行こうとしたらなんかピリピリしてて。」


 そして。


 カナタの視線が、

 ヴァルグレイヴへ向く。


「……これが。」

戦場では見たが間近で見ると違う。

 静かな巨人。

 ノヴァリオンとは違う。

 もっと重く、恐ろしい。

 そんな感じがした。


『……。』


 その瞬間。


 ノヴァリオン端末が珍しく黙る。


「ノヴァリオン?」


『近付きたくない。』


「え。」


『あれは、

 “深すぎる”。』


 一方。


 クロエはカナタを見る。


「君が例の適合者か。」


「えっと……。」


「天城カナタ。」


 冷たい視線。


「君のHXも、

 本来なら危険指定対象だ。」


 空気が少し凍る。


 その時。


 ソラナムが前へ出た。


「少年は関係ない。」


「ですがHX適合者です。」


「だから何だ。」


 低い声。


 一瞬で空気が重くなる。


 クロエは少し黙ったあと、

 小さく息を吐く。


「……やはり、

 貴方は変わっていない。」


 その瞬間。


WARNING

UNKNOWN PARTICLE REACTION DETECTED


 警報。


 格納庫全体が赤く染まる。


『ヴァルグレイヴ内部粒子、

 異常活性化!!』


『なっ!?』


 全員が振り返る。


 停止していたはずのヴァルグレイヴ。


 その赤い片目が。


 ゆっくり点灯した。

次回予告


 移送のため厳重に封印されていた《ヴァルグレイヴ》が、

 突如として再起動反応を示す。


『ありえない……。』


 一方、

 ソラナムは黒紫HX――フレアとの関連を疑い始めていた。


Chapter 18

「遠き残響」

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