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VALGRAVE - END OF GENESIS -  作者: 羽吹南瓜
第2部「継承編」
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Chapter 16「鋼鉄の基礎訓練」

「重ッッッッッ!!?」


 訓練用シミュレーター内に、

 カナタの悲鳴が響いた。


『姿勢制御が甘い。』


「いや無理だってこれ!!」


『推力配分32%偏差。』


「分かるかそんなの!!」


 学園地下演習区画。


 巨大な訓練ドーム内部では、

 複数のFWが演習を行っていた。


 実弾は使わない。


 だが、

 衝撃フィードバックは本物同然。


 つまり普通に痛い。


 カナタが搭乗しているのは、

 灰色の重装甲FW。


《FW-G3 バスティオン》


 ノヴァリオンとは正反対の機体だった。


 重い。


 硬い。


 鈍い。


 そして何より。


「動かねぇぇぇぇ!!」


 バスティオンがぎこちなく旋回する。


 次の瞬間。


 足をもつれさせた。


「うわぁぁぁ!!」


 ドゴォン!!


 巨大な機体が盛大に転倒。


 演習場へ土煙が舞う。


 観覧モニター側では、

 他の学生達が苦笑していた。


「派手に転んだな……。」

「HX乗ってた奴でもああなるのか。」

「むしろHXとの差がヤバいんじゃない?」


 一方。


 教官席で腕を組むソラナムは、

 無表情だった。


 隣のリゼが呆れたように言う。


「ちょっと厳しすぎない?」


「HX慣れした奴は、

 最初に矯正しないと危険だ。」


「まぁ分かるけど。」


 演習場。


 カナタは何とか機体を立たせる。


「くっそ……。」


 汗が額を流れる。


 ノヴァリオンなら、

 思っただけで動く。


 だがバスティオンは違う。


 脚部推力。


 重心制御。


 反動計算。


 全部自分でやらなければならない。


『カナタ。』


「なに!?」


『君、完全に私任せだな。』


「今それ言う!?」


『私の偉大さが分かったか。』


「腹立つなお前!!」


 その時。


 ソラナムの声が通信へ入る。


『少年。』


「はい!」


『考えすぎるな。』


「え?」


『機体を“動かそう”とするな。』


「……?」


『自分の身体を動かす感覚でやれ。』


 カナタは少し黙る。


 そして深呼吸。


 操縦桿を握り直した。


「……身体。」


 ゆっくり踏み込む。


 脚部出力調整。


 推進微制御。


 重心移動。


 バスティオンが、

 先程より滑らかに歩いた。


『お。』


 ノヴァリオンが感心した声を出す。


 カナタはそのまま加速。


 今度は転ばない。


 重い。


 でも。


 少しだけ感覚が分かってきた。


「うおおおおっ!!」


 バスティオンが大型ライフルを構える。


 射撃。


 反動。


 だが踏ん張る。


 観覧席の学生達がざわつく。


「急に良くなった?」

「適応早……。」

「さすがって感じする。」


 アカリは腕を組みながら、

 少しだけ笑った。


「……やればできるじゃん。」


 その時。


 演習用ターゲットが高速機動へ移行する。


WARNING

HIGH SPEED MODE


「うわっ!?」


 ターゲットドローンが急加速。


 バスティオンでは追い切れない。


『ここからが本番だ。』


 ソラナムの声。


『重装甲機は、

 “追う”んじゃない。』


「え?」


『進路を読む。』


 カナタが目を見開く。


 ドローンを見る。


 動きを観察。


 推進方向。


 回避癖。


 旋回タイミング。


「……そこ!!」


 先読み射撃。


 ドォン!!


 電磁弾が直撃。


 ドローンが爆散した。


『命中確認。』


 観覧席がざわつく。


「当てた!?」

「今の読み撃ちかよ!?」


 カナタ自身が一番驚いていた。


「え、当たった……。」


『ふむ。』


 ソラナムが僅かに目を細める。


『実戦勘は悪くない。』


 それ、

 かなり珍しい褒め言葉だった。


「やったじゃん。」


 アカリが笑う。


「いやもう腕パンパンなんだけど……。」


「情けな。」


「お前乗ってみろよこれ!」


 その時。


 演習場奥の大型シャッターが開く。


 重い駆動音。


 ゆっくり姿を現したのは、

 もう一機のバスティオンだった。


 だが。


 色が違う。


 黒。


 全身黒鉄色。


 追加装甲。


 大型近接ユニット。


 肩部ミサイルポッド。


 明らかに通常仕様じゃない。


「……あれ。」


 カナタが呟く。


 ソラナムが静かに言う。


「教官用カスタム。」


《FW-G3C バスティオン・カスタム》


「えっ、

 ソラナムさん乗るんですか。」


「あぁ。」


 次の瞬間。


 黒いバスティオンが起動する。


 重低音。


 粒子排気。


 カメラアイ点灯。


 そして。


 あり得ない速度で加速した。


「は!?」


 ドォォォン!!


 重装甲機とは思えない突進。


 一瞬で演習用ターゲットへ接近。


 巨大パイルバンカー展開。


 轟音。


 一撃。


 ターゲットが消し飛ぶ。


 静寂。


 学生達が呆然としていた。


「……嘘だろ。」


 カナタが呟く。


 重い機体だった。


 鈍い機体だった。


 なのに。


 今のバスティオンは、

 まるで獣だった。


『機体性能だけじゃない。』


 ソラナムの声が響く。


『FWは、

 操縦者次第で牙になる。』


 黒いバスティオンが振り返る。


 その姿に。


 カナタは少しだけ、

 胸が熱くなるのを感じていた。


 ノヴァリオンが小さく呟く。


『……なるほど。』


「ん?」


『HX任せではないということか。』


「…」


 その頃。


 遠く離れた宇宙宙域。


 黒紫のHXが静かに漂っていた。


 赤い片目。


 歪な粒子。


『……ソラナム。』


 低い声。


 そして。


 黒紫HXの周囲に、

 無数の機影が現れ始める。


 HX。


 それも。


 旧GENESIS戦争時代の機体群だった。

次回予告


 FW基礎訓練、

 続行。


 しかしカナタは、

 想像以上に“普通の機体”に苦戦していた。


「ノヴァリオンが便利すぎるんだよ!!」


 一方、

 学園では新たな編入生の噂が流れ始める。


『かなり強いらしいよ。』


 そして。


 黒紫HX――フレアは、

 静かに軍勢を集め始めていた。


Chapter 17


「新星」

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