Chapter 11 「共鳴」
白い粒子が宇宙へ広がっていく。
ノヴァリオンの光翼。
ヴァルグレイヴの黒翼。
二つの粒子が接触した瞬間、
カナタの意識が強引に引きずり込まれた。
「ッ……!?」
景色が変わる。
炎。
爆発。
崩壊した艦隊。
泣き叫ぶ通信。
その中心で、
黒い機体が戦っていた。
《ヴァルグレイヴ》
黒い粒子を撒き散らしながら、
無数のHXを破壊していく。
だが、
どこかおかしかった。
戦っているというより、
壊れている。
そんな感じだった。
『ソラナム!!』
女性の叫び。
振り返る。
白と青のFW。
その向こう。
炎に包まれた赤い機体が見えた。
「……ッ。」
カナタが息を呑む。
赤い機体。
ボロボロの装甲。
砕けた右腕。
それでも前へ出ようとしていた。
『やめろォォォ!!』
ソラナムの叫び。
今まで聞いたどの声よりも、
苦しそうだった。
その瞬間。
映像が砕ける。
「はぁッ!?」
カナタは現実へ引き戻された。
荒い呼吸。
汗。
心臓がうるさい。
『……見えたか。』
ノヴァリオンの声。
「今の……。」
『彼の記憶の一部だ。』
「……。」
カナタは言葉を失う。
あんな顔。
さっきまで戦ってたソラナムから、
想像もできなかった。
その時、
ヴァルグレイヴが僅かに動いた。
『……少年。』
低い声。
カナタが顔を上げる。
『今、
何を見た。』
「え……。」
『答えろ。』
赤い片目がこちらを見ていた。
ぞくりとする圧力。
だけど。
カナタは目を逸らさなかった。
「……苦しそうでした。」
『……。』
「ソラナムさん、
ずっと一人で戦ってきたんですね。」
沈黙。
ヴァルグレイヴの黒粒子が、
一瞬だけ揺らいだ。
『……余計なものを見るな。』
「でも。」
『忘れろ。』
「無理ですよ。」
思わず言い返していた。
「見ちゃったのに。」
数秒の沈黙。
そして。
ソラナムが小さく息を吐く。
『……生意気な少年だ。』
「えぇ……。」
『普通はもっと怯える。』
「いやめちゃくちゃ怖いですけど。」
すると。
ノヴァリオンが割り込む。
『実際かなりビビっていた。』
「言うなよ!!」
その瞬間。
ヴァルグレイヴの赤い片目が、
ゆっくり元の色へ戻っていく。
WARNING
SYNC RATE STABILIZING
84%
82%
リゼが息を呑む。
『戻った……?』
『完全ではない。』
AURELIONが静かに言う。
『だが暴走段階からは離脱した。』
「……良かった。」
カナタが力を抜く。
その時。
学園側から通信が飛んだ。
『天城カナタァァァァ!!』
「うわっ!?」
鼓膜が震える。
モニターへ、
赤茶髪の少女が映った。
『アンタ何やってんの!?!?』
「アカリ!?」
『入学初日で宙間戦争に参加するバカがある!?』
「いや僕だって好きで乗ったわけじゃ――」
『あとで詳しく聞くから!!』
「怖っ。」
アカリは額に煤をつけたまま怒鳴っていた。
『無事なんでしょうね!?』
「……まぁ、一応。」
『一応って何!?』
「なんか色々あって……。」
『色々で済ませるな!!』
そのやり取りを、
ソラナムが黙って見ていた。
『知り合いか。』
「幼馴染です。」
『なるほど。』
少しだけ。
ほんの少しだけ。
ソラナムの声から険しさが抜けた。
『……少年。』
「はい?」
『無茶はするな。』
「え。」
『HXは、
人生を狂わせる。』
その言葉だけ妙に重かった。
カナタは少し迷ってから、
ゆっくり口を開く。
「……でも。」
『?』
「ソラナムさんは、
それでも戦ってるじゃないですか。」
沈黙。
宇宙が静かになる。
そして。
ソラナムは小さく笑った。
本当に僅かに。
『……困った少年だな。』
その瞬間。
学園宙域へ、
無数の艦影が現れた。
『EVA管理局本隊です!!』
『増援艦隊、
宙域到達!!』
戦いは終わった。
だが。
カナタには分かっていた。
自分はもう、
“普通の学生”には戻れない。
次回予告
学園戦闘編、
完全終結。
しかし。
ノヴァリオンの存在は、
学園全体を大きく揺るがしていた。
『HXを学生が操縦した……?』
『ありえない。』
一方、
カナタは整備区画でアカリから説教を受けることになる。
「死んだらどうすんの!!」
「いや僕も必死だったんだけど!?」
そして。
ソラナムは、
ノヴァリオンに隠された“ある違和感”へ気付き始めていた。
Chapter 12
「白き機体」




